交錯編-ようやく帰ってきた
時系列で言うと、第一話の続きです。
執務室でレイとやり取りした日の夜と思って下さい。
久しぶりの自宅、ではなくルカの部屋に泊まりに来ている私。ふかふかのソファに身を沈めた。
「疲れた…」
「半年間、一度もこっちに来なかったしな」
ルカが淹れたてのコーヒーを持ってきてくれたので、「ありがと」と礼を言いながら私は受け取った。
「ルカの手料理も久しぶりだなー、何を食べさせてくれるのかなー」
と、わざとらしく言う私に、ルカは溜息をつく。
「相変わらず、食意地ばかり張ってるな」
「幸せを感じる数少ない時間なんだから、仕方ないだろう」
少し拗ねた口調の私に、ルカは困った表情を浮かべ、隣に腰を下ろした。
「幸せの時間は、食べてる時だけなのか?」
「…腰に手を回すな」
小動物を怒る様に私は睨む。腰に回された腕を掴み外そうとするが、ルカの方が力が強い。後ろから抱き締めるような形で、ルカは体をくっ付けてきた。
「…酔ってる?」
「ここでやるのは久しぶりだろ」
解答になっていない。私は溜息を吐くと、カップを置いた。
次の瞬間押し倒され、ルカが覆い被さってくる。
「ナギ…」
っと、熱っぽい声で呼ばれ、ルカが首筋に顔を埋めた。くすぐったくて私は少し声を出してしまう。
ルカは調子に乗って首筋に唇を這わせてきたので、私は窘める様に言った。
「ソファが汚れるぞ」
「構わない」
おかしいな、一週間前にやった筈だけど。ルカは少し恨めしそうに私を見下ろした。
「酷い奴だな」
「疲れたって言ってるのに、やろうって言ってくる奴よりはマシだよ」
「…ずっと我慢してたんだ」
たった7日間だろう。呆れながらもルカを愛おしくも思い、私は諦めてルカの背に手を回した。
ルカは嬉しそうに目を細める。
「ようやく帰ってきた」
そう言うと、ルカは私に唇を重ねたのだった。
翌日、私はフルメンの執務室にいた。フルメンは神妙な顔つきで、私に問う。
「考えをーーー計画を改めるつもりはないのか?」
「無理だ。それに大地の国はもう同盟を反故するつもりだしな」
フルメンは更に顔を顰めた。
「眉間の皺が取れなくなるぞ」
「誰のせいだ…」
「私一人のせいじゃない」
今度は額を押さえるフルメン。
「…風の国が黙ってないぞ」
「それを黙らせるのが、フルメンの腕の見せ所だろう?」
「……」
フルメンは「コイツ…」と恨めしそうに私を見る。何か言おうと口を開くが、何を言っても無駄と思ったのか諦めて口を閉じた。
険しい表情を浮かべ、再度私に問う。
「アレは劇薬だぞ?」
「毒は毒を持って制するのは、正攻法だろう?」
私は艶笑を浮かべたのだった。
すみません、明日は更新をお休みします…m(__)m
師走って、本当に由来通りですよね…。
次回更新:12/4 19時