小噺③-2
ミラは「私に盾突くなんて、いい度胸してるわね?」と低い声で言った。
ナギは微笑を浮かべる。そしてミラの背後ーー先ほどの講義内容がかかれた画面を示したのだった。
「むしろ褒めていただきたい。先ほど学んだ事を、私は実践したのですから」
そこに書かれていたのは『枉尺直尋』。
風見含めその場にいた生徒達は全員、意味が分からず首を傾げた。
しかしミラは理解したのか、目を見開く。
「なるほど、これは一本取られた」
そしてニヤリと笑う。
「弟子の頑張りを無碍にするほど、私も酷くはないよ」
そしてテストは結局金曜日に実施された。しかしナギを嫌っていた者達の何人かは、震えながらも立ち向かったナギの勇姿に、感銘を受けたのっだった。
「結局、テストは実施したのか」
俺は胡瓜の浅漬けを食べながら言った。ナギは「まぁね」と笑う。
「テストの実施を阻止する事ではなく、体調を崩した風見の勉強時間の確保が目的だったからな。」
ミラもそれを分かっていたから、最後の言葉を笑って許したのだろう。
「それより、ミラさんは何を理解したんだ?」
俺の疑問にナギは苦笑いを浮かべる。
「枉尺直尋って意味は知ってる?」
「大きな利益を得るためには、多少の犠牲は仕方ないと言うこと、だよな」
「そうそう」とナギは頷く。ナギは卵焼きに箸を伸ばしながら言った。
「皮肉も皮肉さ。あの時、私は師匠に喧嘩を売ったんだよ。それを笑って許したのは、あの人の度量の大きさ故だな」
「お願いだから、解説してくれ」
「『どんなに貴女が怖くとも、風見から信頼を得る方が私にはずっと価値がある』」
体が震えるぐらい怖いのに、風見の為に戦う。その姿から、風見はナギに感激し、よりナギを大切に思うだろう。その利益を得る為ならミラを敵に回すは仕方ない。と、ナギは本人に向かって言ったのだ。
「…それ、本当にやったのか?」
「うん」
「ミラさんて、出来た人だったんだな...」
普通なら、ボコボコにされてる所だぞ。俺はしみじみと言ったのだった。
明日、一応更新はします。
ただ、新章の宣伝に近いです。