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小噺③

俺は「けど」と疑問を口にした。


「お前にトラウマを受け付けられた奴ら全員がアルカナ派にいった訳ではないよな?」


「そうだなぁ、私へ嫌がらせをしてきた連中が元々少なかったって言う事もあるが、おそらくあの事件が理由かなぁ」


「事件?」


俺は首を傾げる。ナギは味噌汁を一口飲んで「事件って言う程ではないか」と呟いた。


「合宿みたいなのがあって、1ヶ月程集団生活及び講義があったんだよ」


ナギは当時の事を思い出したのか、少し顔を青くした。


「私の代ではミラ師匠が担当したんだが...」


金曜日の最終講義にて、ミラは高らかに言い放った。


「来週のどこかで抜き打ちテストを行う!」


その言葉に「えー!」っと騒ぐ生徒達。ミラはギロッと睨みつけると、皆一斉に口を閉じた。

ただし、


「くしゅんっ」


「風見...」


ナギの隣に座っていた風見が、青白い顔でくしゃみや咳をした。ナギは心配そうに背中を摩っている。

ナギは恐る恐る手を挙げる。


「師匠、せめて月曜日はやめてください。体調不良者が可哀相です」


「駄目だ。体調管理も試験の一つだ」


ピシャリと言うミラに、風見は睨んだ。熱のせいで涙目になっている。しかしミラは無情にも宣告した。


「抜き打ちテストを行う日は、当日にならなければ分からない。事前に知らせる事はしない」


その言葉に、生徒達全員が歯を食いしばった。この場のルールはミラだ。それを覆す事は不可能である。

そう思った時、


「師匠、二言はありませんね?」


と、ナギが声を上げた。風見は「ナギ!?」と驚き、周囲も一斉にナギに振り返った。

ミラは眉を潜める。


「何が言いたい?」


「師匠はよく私に()()()()()()()()()()()ので」


ゆえに、とナギは席から立ち上がった。つまり臨戦体勢に入ったと言う事だ。

ナギが先手を取る。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。なら、仮に金曜日に行おうとしている場合、木曜日に『木曜日にテストを行わなかった。つまり金曜日行う』と分かってしまいます。

それでは『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()します」


ナギの言葉に、ミラはハッとした。ナギの狙いが分かったのだ。急いで口を開くが、ナギの方が先に言葉を紡ぐ。


「つまり金曜日にはテストは実施されない。けどこれは水曜日と木曜日、月曜日と火曜日にも当て嵌まります」


「なら、月曜日にテストを実施すればいい」


「それでは抜き打ちテストになりませんよ?」


ナギは微笑を浮かべる。


「能力が『宣誓』でなくてよかったですね。なにせ私にとって()()()()()()()()ですから」


「...」


ミラはナギを睨みつける。それに対してナギは微笑を浮かべた。ーーーが、隣に座っていた風見のみならず全員がナギの脚が震えている事に気付いていた。

ナギは声が震えないように声量を上げる。


「唯一矛盾しないのは『実施しないこと』ですよ、師匠」


ナギの言葉に、ミラは苦々しく言う。


「屁理屈だ」


「屁理屈も理屈の内です」


ナギは内心の焦りを悟られぬように拳を握り締めた。

分かっている、ミラが屁理屈の土俵に立っているからこそ通る理屈だ。いつでも「先ほどの言葉を撤回する」と言われてしまえば、終わりの事。

それをミラがしないのは『この程度の事を弟子に言い負かされるのが気に食わない』からだ。

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