表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

173/324

小噺②

下世話な話になります…。

 おそらくバレているだろうな、と思いつつルカは飲みを誘ってきた相手ーーー日向を盗み見た。

取り敢えずお互いに頼んだビールが来ると、ようやく日向は口を開いた。


「おめでとう」


「…ありがとう」


その意地の悪そうな笑みが、何を指しているのか分かり、ルカは礼を述べる。

グイッと飲むと、日向はプハッと息を吐いた。


「よく頑張ったよ、お前。誰も落とせなかったのに」


バンバンッと背中を強めに叩く日向。ルカは苦笑いを浮かべた。


「で、どうだった?具合は?」


「言うか、馬鹿」


ノリが悪いなぁ、と日向は笑った。しかしそれよりも、ルカは先程の言葉を聞き逃さなかった。


「誰も落とせなかったって本当か?」


「あぁ、少なくとも俺は知らないぜ」


「……」


ルカは神妙な面持ちで黙り込む。その様子に日向も若干心配になった。


「…他の奴の名前でも言ったのか?」


ルカは首を横に振る。


「いや…男じゃない」


「…風見か」


日向は超絶微妙な表情を浮かべた。事の最中に他の男の名を呼ばれるのは当然嫌だが、親友の名を言われるのも何とも言い難い。


「あいつらって、そう言う関係だったっけ…?」


「違うと思うぞ。『風見を取られた、悲しい』って泣きじゃくってたからな」


別にルカを風見と呼んだ訳ではない。

日向は「なら気にすんなよ」と鼻で笑った。しかしルカの表情は晴れず、まだ何かあるのかと、日向は首を傾げた。ルカは重々しく口を開く。


「あいつ、初めてじゃなかったんだよ」


「…あぁ、なるほど」


ルカの言葉に、日向は理解する。そしてルカが誤解している事も。


「幹部候補生は18〜20歳の間に性教育を受けるからな」


「もしかして、実習あり?」


「実習あり」


日向は平然な顔で言い、ルカは「まぁ、そうだよな」と目を逸らした。


「俺も父さんの知り合いに卒業させてもらったし」


サルトゥスはいずれルカが街で暮らし、人と関係を作る事を望んでいた。その為に必要だと思う一般教養は叩き込まれている。

いや、それこそ「どんな場所でも生きていけるように」と必要以上に知識を詰め込まれている可能性が高い。任務をこなしていて、時たま風見達よりも知識があると思う事があり、なんとかナギに付いていけてるのも、父のお陰かも、と言う気がしなくもない。


日向はゴクっと喉を鳴らして、ビールを一口飲んだ。


「アルカナでは大体、一回り上の相手とするな」


「…ちなみに、あいつの相手が誰だったか知ってるか?」


ルカの問いに、日向はジト目を向ける。


「聞いて後悔しないか?」


「…あぁ」


一拍開けて、ルカは決心した面持ちで頷く。日向は溜息を吐いて答えた。


「常盤」


「常盤ぁ!?」


ルカは驚愕し、後ろに退けぞった。「店の中なんだから、静かにしろ」と日向は注意する。

ルカはショックを隠せずに項垂れた。


「確かに一回り以上だけど…他にいただろ」


「ちなみに風見は、総帥になる前の鵠沼総帥だぜ」


「うわっ、マジかよ」


そう言えば、鵠沼も常盤達(あの辺)と同世代か。確か3〜4歳、若いって聞いたな。

ナギは常盤と、風見は鵠沼と…自分で聞いて何だが、知らなければ良かったと少し後悔してしまったルカ。


そんなルカの様子に「言わんこっちゃない」と日向は呆れた表情を向けたのだった。

続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ