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小噺①-3

 陽もだいぶ落ちてきた頃、俺たちは設置されていたテントの中にいた。多くの人が利用出来るように椅子はなく、立ち飲み用の丸テーブルが置かれている。

夕飯代わりに、俺たちは大量に買った食べ物を広げた。


「焼きソーセージは定番だよなぁ」


「ライプクーヘンも美味しいっ」


林檎のムースがお気に召したのか、たっぷりと付けるナギ。俺は「ビールにすれば良かった」と呟く。ちなみに今飲んでいるのはミードだ。


「あ、聖歌隊が出てきた」


ナギはこんがり焼けたマッシュルームを食べながら、先ほどまで暗かった野外ステージを示した。このマーケットのイベントの一つだ。イベントスケジュールは確認していないが、ある一定間隔で演奏しているようだ。

コーラスが聞こえる。


「昼間は鉄琴で赤鼻のトナカイが流れていたよな」


「そうだなーーー今はなんの曲か知ってる?」


ナギはプンシュを飲みながら、聖歌隊に目を向ける。

ナギの問いに、俺は「マザーグースだろう?」と答えた。


「クリスマスの12日、だっけ」


「正解ーーーなら、ここで問題だ」


ナギの目がキラリと光る。


「12日間で一番多く贈られたものってなんだ?」


「…ちょっと待て」


俺はまず、歌詞を思い出そうとする。つまり12日間の各合計を出せって事だろう?


「えっと…まず出てくるのがヤマウズラ、キジバト、雌鶏(めんどり)ーーー俺、全部は知らないんだけど…」


「ならヒントとして12日目に貰う順番は

太鼓叩き、笛吹き、伯爵、貴婦人、乳搾り、白鳥、ガチョウ、金の輪、クロウタドリ、雌鶏、キジバトそしてヤマウズラだ」


ナギは「勘で答えるなよ?」と意地悪そうに笑う。

俺はミードを置くと顎に手を当てて呟いた。


「マザーグースは積み歌や数え歌だからな…歌詞が一つずつ増えていくのが特徴だろ」


1日目と2日目は知っている。ヤマウズラとキジバトだ。ヤマウズラは1羽ずつ、キジバトは2羽ずつ増えていく。

つまり12日目に出てくるのが太鼓叩きの12人。

11日目に増える歌詞は『11人の笛吹き』だ。

よって太鼓叩きの合計は12人、笛吹きは22人(11人×2日)となる。その要領で計算していけばいい。

と、すると


太鼓叩きが12人

笛吹きが11人

伯爵が10人

貴婦人が9人

乳搾りが8人

白鳥が7羽

ガチョウが6羽

金の輪が5つ

クロウタドリが4羽

雌鶏が3羽

キジバトが2羽そしてヤマウズラが1羽ずつ増えていく事になる。となると…


太鼓叩きが12人×1

笛吹きが11人×2

伯爵が10人×3

貴婦人が9人×4

乳搾りが8人×5

白鳥が7羽×6

ガチョウが6羽×7

金の輪が5つ×8

クロウタドリが4羽×9

雌鶏が3羽×10

キジバトが2羽×11

ヤマウズラが1羽×12


上記を全て計算する必要はない。

何故なら『かける数』と『かけられる数』の組み合わせは「1、12」「2、11」「3、10」「4、9」「5、8」そして「6、7」の6つだけだ。

つまり


「42羽のガチョウと白鳥か」


「正解」


ナギはポメスを食べていた。いつも間にか、半分以上食べられている。まさかーーー

「思ったより、計算に時間がかかったな」


と、悪戯にナギは笑ったのだった。



明日は更新お休みします(>人<;)


次回も小噺の予定です。

次回更新→11/26 19時

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