小噺①
ブックマークありがとうございます(≧∇≦)
更新頑張ります!!
日常系の小噺が続きます。
目を覚ますと、腕の中にはずっと欲しかったものがいた。
それは規則正しく寝息を立てていて、意識はまだ夢の中のようだ。
「ナギ…」
俺は優しく頭を撫でる。しかし眠りが浅かったのか、瞼が僅かに動きそしてゆっくりと開かれた。
「ルカ…」
寝惚け眼で俺を見る。体勢を変えたいのか、俺の腕の中にいるのにモゾモゾと動いた。
俺は少し意地悪したくて、ナギを抱き締める。
「……」
まだ頭が覚醒していないのか、ナギは無抵抗だ。伝わってくる体温に安心感を覚える。
俺は昨夜の事を思い出し、幸せを噛み締めた。
ナギの声や表情が頭の中で再生される。
「あ…ヤバい」
先程まで寝ていたものが立ち上がる気配がして、俺は焦る。ナギにあたる…。
そして徐々に何がどうなっているのか、ナギも理解したようでーーー
「元気だな」
と言われたのだった。
俺は朝食兼昼ご飯を作っていた。ナギは未だにベッドの中にいる。
「お腹空いた…」
と言って、ぐぅぅと腹を鳴らすナギ。ナギは俺の物を一瞥すると、上目遣いで
「腹が減っては戦は出来ない」
と、食べ物を要求してきたのである。
そんな事を言うのなら、後でたっぷり楽しませて貰おう。そんな意気込みで、俺は冷蔵庫の中を睨んだ。
「まず、あいつはどっち派だ…?」
パンか米か。どちらを好むだろうか。
「…今から炊くのもなぁ」
空の炊飯器を覗きながら呟いた。ベーコンや卵はある。目玉焼きやだし巻き玉子なら作れるし、簡単にベーコンエッグにしてもいいだろう。だが、あまり時間がかかってしまうとナギが待てない可能性がある。
「けど、トーストじゃなぁ」
バターやチーズ、あとジャムの類だって買ってある。朝から甘い物を食べる習慣はないが、ナギはどうだろう…。
「…よし」
俺は覚悟を決めると、材料を取り出して調理を開始した。
「クロックムッシュだっ!」
と、ナギは喜びの声を上げる。俺はコーヒーを淹れつつ、内心でガッツポーズを取った。
テーブルには、三角形に切られたクロックムッシュが白い平皿に載せてあった。溶けたチェダーチーズが切り口から垂れかけていて、彩りにサニーレタスとプチトマトが添えられている。
そして淹れたてのコーヒーの側には、ブルーベリージャムがかけられたヨーグルトも用意した。
自分で言うのもなんだが、とても上手に出来た。
「カフェのモーニングみたい!」
と、喜ぶナギの顔を見て、俺の頬も緩む。が、急いで当初の目的を思い出した。
「ナギーーー」
釘を刺そうと、俺はナギの肩に触れた。そのまま抱き締めようとしたのだがーーー
「ね、ルカ」
上目遣いに、ナギが屈託ない笑みを浮かべて言ったのだった。
「今日はデートしよう」
デート、と言う響きに俺は二つ返事で同意してしまった。つまり
「あと半日もないから、さっさと準備しようか」
ね?と笑顔を向けられて、ようやく気付く。嵌められた…。
「近くでクリスマスマーケットがやってるらしい!そこ行こうっ」
と、すでに行き先も決めるナギ。
昨日とはうって変わった表情に、俺は嵌められた事への悲しみより安堵を抱いた。
良かった、引きずっていないようだ。
幸せそうなナギが見られただけで、やっぱり充分満足してしまった俺だった。
実はまだ続きます。
お付き合いいただけると嬉しいです。