過去編-あぁ、離さない
2ページの内容を1ページにしたので、今回長いです。申し訳ございません(ノД`)
二人の身長差が5cmくらいを想像して書いています。
後書きも長いです…。
微かにナギの体は震えていて、俺は心配になる。
「…そろそろ戻るか」
「……」
ナギはチラッと俺の顔を見て、すぐにまた俯いた。まだ帰りたくないと言いたげで、俺は困った様にナギをみる。
その姿はまるで弱った野良猫だ。
優しく頭を撫でると、少しビクッとして上目遣いで顔を上げる。
「ル、カ…」
堪らず俺はナギを抱きしめた。ナギは驚く声を上げるが、俺を拒まない。
寧ろそのまま縋りつく様に、俺の背中に腕を回す。
「気が済むまで泣いていい…側にいてやる」
ナギの全身を包み込む様に抱き締めた。滑らかな髪に顔を近づけ、愛おしげに指に絡ませる。
ナギは「バカ…」と呟くと、ポロポロと涙が溢れてきた。嗚咽を押し殺そうと、俺に抱き着く。
「ルカ…何処にも行かないで」
ナギの甘い言葉に、俺はより力を込めた。
「あぁ、離さない」
ずっと。
俺の言葉に、ナギは回していた腕を緩める。少し離れ、俺を見上げた。
涙で濡れた瞳が、不謹慎ながら綺麗だと思ってしまう。
「ナギ…」
そっと頬に手を添えた。
弱っている所に付け込むのは、卑怯だろうか。
一瞬そう思ったが、そんな思考は追い払って俺はナギと唇を重ねる。ーーーナギは抵抗しない。
以前の様に味わいたいと思うが、そんな事をしていい場面ではないと分かっている。名残惜しく思いながら、唇を離した。
「ナギ、好きだ…」
俺は想いを告げる。
ナギは驚き、あたふたとふためく。顔が赤くなっているのは、寒さのせいではない筈だ。
「うぅ」とか「えっと、」とか、何と言おうか迷っているのか、視線が定まらない。
その様子が可愛くて、俺はナギを抱き寄せた。
「落ち着いてからでいい」
そう呟くと、ナギは耳まで真っ赤にして小さく「ありがとう」と呟いたのだった。
そんな二人の様子を、遠くで鑑賞している人物がいた。
「偶然にも、今回の本質を突いたのは日向だったわね」
アテナは艶笑を浮かべる。
『勝負って言うのは、常に先手必勝ーー後手に回った時点で負けなんだよ』
電話で日向がナギに言った言葉だ。
日向からしたら、後手に回っていると伝えたかっただけだろうが、偶然にもそれは今回の本質であった。
そう、ナギの落ち度は隠しカメラを見逃した事ではない。
「アレは霰が作った魔道具の一つ。ルカの腕輪でしか見つからない様になっている」
そして霰がルカに渡した腕輪は、ルカにしか使えない。
ナギがあの腕輪を持っていても意味はなかったのである。つまりあの場でオリジナルを使った時点で、こうなる事は決まっていたのだ。
「けど、貴女に"オリジナルを使わない"と言う選択肢はなかった」
風見やルカが口酸っぱく言っている様に、ナギは戦闘向きではない。
さらに、当時支部にいたミネルバ派も魔薬のせいで多くの者が体調を崩していた。また追い討ちをかけるように人工能力者の子供達に襲撃された事もあり、充分な戦力ではなかったのである。
故にナギは、オリジナルで殲滅するしかなかった。
「貴女は己が出来る最善手を打っていたわ」
故に何を失敗とするのならば、それは事件を防げなかった事。
アテナはふふふっと笑う。
「あぁ、これからどうなるのかしら?」
鵠沼が珍しく動いているが、流石の鵠沼も暫く真相は分からないだろう。
おそらく3年後くらいに、ナギが異世界へ行く筈だ。
「さぁ、まだまだ私を楽しませてね」
アテナは無邪気な笑みを浮かべたのだった。
今回の話は、今まで同盟編で謎だった
・ナギが軍属の理由
・風見が記憶を失くした理由
・日向がアルカナ派なのにナギ達と親しい理由
・ミネルバの梟のトップがルカになった理由
と、盛り沢山に詰め込んだのですごく長くなってしまいました。
伏線の日向の言葉→「過去編-あぁ…早いな」
ルカにしか魔道具が使えない事→「風見も、これで捕まったのかも」
にちょっと書いてあります。良かったらご覧下さい。
実はおよそ一ヶ月も続いています。いつもは10日前後で完結するようにしているのに…。
次回の本編から、時間軸は同盟編後に戻ります。
ですが、明日は小噺です。
暫く小噺が続きます。
まだまだお付き合い頂けると幸いです。