表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

168/325

過去編-寧ろ温情か

思い出されるのは、先程のフルメン達とのやり取りだ。


「ナギ、自己流詠唱が使えないと宣誓してみろ」


その言葉に、私は固まった。体温が一気に奪われる。手が震え出したので抑える為に、血が出るのではと思うぐらいに握りしめた。


「何故、それを」


「…常盤の置き土産だ」


そう言って、フルメンは近くにあったタブレットを操作する。私に手渡すと、動画が再生された。


()()()()、生きているんだな』


「!」


映し出されたのは、風の檻での事だった。アングルから考えると佐倉の背後に設置されていた様だ。


『あぁ、そうだーーールカは違うからな?』


「!!」


詠唱の様子が嫌味なくらい、はっきりと映っていた。

その後の殺戮映像が流れる中、私は崩れ落ちる。


「常盤が言っていた事は、これか」


私は青い顔で呟く。

オリジナルを使う時は、周囲を念入りに確認している。それでも見つからなかったと言う事は、恐ろしいほど巧妙に隠されていたのだろう。それにあの場所自体、風が吹き荒れていて視界が悪い。

常盤の言葉が脳裏に蘇る。


『それは本来、探索用の魔道具だ』

『あの時、お前が持っていればルカは助からなかっただろうが』

『それよりずっと重要な事を握られずに済んだだろうに』


あの魔道具は超音波を発生させ、探傷する。

超音波の反射によって、傷の位置、大きさなどを推測することができるのだ。これはお腹の中の赤子を見るエコーにも使われている原理である。

霰はこれと共振を用いて探索用の魔道具に仕上げたのだった。

叫びたい衝動を抑えながら、私は震える声で問う。


「火炎による監視は、寧ろ温情か」


「あぁ、此方としてはお前の存在は好ましくないからな」


ヒュエトスが嫌味たらしく答えた。フルメンとゲフリーレンは哀れみの表情を浮かべる。


「本来なら秘密裏に処分する所だが、お前は神の眷属だ。それにーーー」


フルメンの言葉をゲフリーレンが引き継ぐ。


「お前の頭の良さは、各国共に買っている。殺すよりも生かした方がいいと判断した」


そう言うが、二人の様子からおそらく相当擁護してくれたのだろう。

アルカナにーーー鵠沼に知られれば、すぐに私は発表される。渇望して止まない、喉から手が出るほど望んでいた成功例がいるのだ。これでアルカナの悲願は達成される。


それは心底困るのだ。アルカナ派のやり方で悲願が叶うと言う事は、私の願いが絶たれるのと同義なのだから。


「軍属として監視する事になっている。地位は少佐だーーーすまない」


フルメンの搾り出す様な声に、私は力なく笑う。


「充分過ぎるよ、私の年齢で佐官なんて」


レイより上かぁ、なんて強がってみるが、より惨めに見えるだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ