過去編-別の所からの介入?
俺は拳を握りしめる。鵠沼は言葉を続けた。
「今回アルカナ派が行った4カ国同盟の亀裂だが、私の預かり知らぬ所での動きが大きい」
急に話が変わり、俺は眉を顰めた。
「…どう言うことだ?」
「資金や被験体確保の為に4カ国間に争いの火種を生むなど、採算が合わない。別の理由がある筈だ」
鵠沼の言葉でハッした。確かにそうだ。アルカナの本来の目的は、人権の確保である。
話し合いで進めたいミネルバ派への嫌がらせとしては、今回の件はあまりにも度が過ぎていた。
「別の所からの介入?」
「おそらく。しかもロシェク大陸以外からの介入と考えるべきだろう」
「……」
俺は非難の目を向けた。そりゃそうだろう。トップが組織内の事を把握していないなんて。
鵠沼は「分かっている」と目を伏せた。
「火炎、氷雪、疾風の3か国には話をつけてある。大地の国も1対3の状況で、すぐには動きはすまい」
一度言葉を切ると、鵠沼は真剣な面持ちで顔を上げた。真っ直ぐに俺を見る。
「私の方で動く」
疲れた顔で、私は館を後にした。
「大丈夫か」
「ルカ…」
外ではルカが待っていた。手にはコーンスープの缶を持っており、
「お前はこっちの方がいいだろう」
と言って、ルカはコートのポケットからココアを取り出す。受け取ると生温かった。
「…ありがとう」
長く外で待っていたのだろう。私は声が震えない様に気を付けながらお礼を言う。
そう、この震えは寒さのせいだ。きっとそうだ。ルカが心配そうな顔を向けてくる。
「…ミネルバの梟だが、俺が指揮する事になった」
「そうか…」
唇を噛み締める。今の表情で本部には戻れない。
自分でも分かるくらい、手が震えていた。
ルカは「少し歩くか」と提案してくれて、私は頷く。
「…火炎の軍にいく事になったらしいな」
「あぁ…ドジを踏んでしまった」
ルカの顔が見れなくて、私は俯きながら答えた。
今、ルカの顔を見てしまったら感情が抑えられなくなる気がする。
ココアの生温い熱が、冷えた指先に伝わる。
震える指では開けられない。けど、震えている事を隠したい私は、ココアを包む様に握った。




