過去編-正しくは論旨解雇だ
さて、私は全て話したのだ。
「私が何故監視されなければならないのか、理由はあるんだろう?」
私の問いに、フルメンは頷く。
「思い当たる事があるのではないか?」
「…限度を超える様な真似はしてない筈だけど」
後ろめたい事が多過ぎて、私は視線を明後日の方向へと向けた。監視対象になる程の事はしていない…つもりだ。
私の様子に、フルメンは白い目を向けてくる。その目は「いつも後始末しているのは誰だと思ってる」と言っていた。
苦笑いを浮かべる私にフルメンは溜息を吐くと
「…お前にしては、致命的なミスをしたな」
と言って、今度は真剣な眼差しを向けてきた。そして次の言葉に、私は目を見開いたのである。
「ナギ、自己流詠唱が使えないと宣誓してみろ」
鵠沼総帥に呼び出された俺は、下された命令に驚愕した。
「ナギが懲戒解雇だと!?それに火炎の軍へだなんてっ!」
「正しくは論旨解雇だ」
一般人ならそうだろうが、あいつの場合殆ど同じ意味だろっ!俺はギロリと鵠沼を睨んだ。
「そもそも、ナギが懲戒処分を受けるのがおかしい」
「火炎、氷雪、疾風からの要求だ。無視は出来ん。それに今回の件の元を辿れば、あいつが招いた事だ」
鵠沼の言葉に、俺は言葉が詰まった。先程、鵠沼の口から真相が語られ、常盤の動機を知ったのである。
「…ナギが裏で何かしているのは知っていた」
その内容がおそらく碌でもない事だと、そして風見達にすら話していないと言う事も。
「ナギは何故、復讐を望むんだ…?」
ミランダと会った事はない。しかし皆んなの口振りから、師弟仲は良かったのだと窺える。
「ナギは何故、アテナと契約してまでーーー」
「復讐があいつの願いではないぞ」
「!!」
俺の言葉を遮る様に、鵠沼は言った。その言葉に、俺は目を見開く。
そんな俺に、鵠沼は静かに言葉を続けた。
「あいつが何を願ったのかは知らない。ただ、全てに復讐する事が願いを叶えて貰う条件だと聞いている」
「……」
ルカ、と鵠沼は少し悲しそうな眼差しを向けてきた。
「あいつは、復讐など愚かな事だと知っている」
「……」
それでも、叶えたい何かがナギにはあるのだ。