過去編-…そりゃどうも
「よくそこまで行き着いたな」
私の説明にゲフリーレンがようやく口を開いた。
「お前の言う通りだ。まだ大地の国から宣戦布告はないが、いつ攻めて来てもおかしくない」
アルカナ派の狙いは、3カ国ではなく4カ国ーーー火炎、氷雪、疾風そして大地の国に亀裂を入れる事だった。
「魔薬を兵器として用いる事は反対だった。氷雪の大臣としては何とも言えないが、お前が魔薬を処分した事については賛成だ」
「…そりゃどうも」
しかし、とゲフリーレン達は鋭い眼差しを向けて来た。
「現状、魔力を用いらない兵器は限られている。敵側のみ魔法が使えるのは、相当なハンデだ」
「……」
押し黙る私に、フルメンは何とも言えない表情を向けて来た。そんなフルメンを咎める様に、ヒュエトスは咳払いをする。
「…分かっている」
フルメンは目を伏せ、そして顔を上げた。そこには中将としての威厳があった。私に真剣な眼差しを向ける。
「今回の責任について、ナギ。お前を火炎の国の監視下に置く事が決まった」
フルメンの宣言に、私は唖然とする。一拍あけて次の瞬間、叫ぶ様に抗議した。
「つまりアルカナを抜けろって事か?何故私が!!」
「大地の国を除いた3カ国の総意だ。覆る事はない」
「何故私が責任を負う!監視される理由を答えろ!!」
私の問いに、三人はそれぞれ異なった表情を浮かべた。
フルメンは哀しみを、ゲフリーレンは怒りを、そしてヒュエトスはーーー艶笑を浮かべる。
口火を切ったのは、フルメンだった。
「…鵠沼からの報告では今回の首謀者は村崎と言う事だが、それは本当か?」
「らしいな」
「らしい、と言う事はお前が鵠沼に進言した事ではないのか」
フルメンが何を言いたいのか、要領を得なくて私は苛立ちを覚える。
「私はアルカナ派の建物にあった書類を渡しただけだ」
鵠沼の言葉に私は無関係、と暗に言う為にわざと能力を使う。
それがまずかった。
「…ナギ、"アルカナ派の建物"とは、先日突如崩壊した元烹鮮支部の事ではあるまいな」
「……」
とても嫌な予感がして、私は押し黙ってしまった。