✴︎今の言葉に、嘘・偽りはない?
翌日、私は何故か警察署の取調室にいた。宿を出た所を、ゾロゾロと警察官に囲まれてしまい、渋々同行したのだった。
「昨夜、何処にいた」
「昨夜って具体的に何時だよ!?」
噛み付く私に、刑事は舌打ちをする。
おい、これでも私は火炎の国の少佐だぞ。国際問題ならぬ、異世界問題に発展させるぞ。
「21時以降だ」
「その時間はーー…」
昨夜の事を思い出して、目が泳ぐ。その様子に、刑事はバンッと机を叩いた。
「何を隠している!!」
「あんた達に関係ある事ではないよ」と、言ってやりたいが、火に油を注ぐだけだ。まず、事情だけでも教えて欲しいんですけど。
やましい事はしていないのだが、本国に知られるとちょっと面倒臭くなるのだ。ーー日向と一緒にいたとなると。
取り敢えず、こんな目に遭っているという事は、何かしら事件が起こったのだろう。が、その内容が分からなければ"関わっていない"と宣言出来ない。
風が吹けば桶屋が儲かるが如く、もしかしたら知らず知らずのうちに犯罪に加担している場合だってあるのだ。
それは避けなければならない。絶対に。
何故ならこの能力は、自分が信じている・信じていない関わらず、事実である事しか宣言出来ないのだ。
更に厄介な事に、能力が発動したら事実、出来なかったら間違っている、なんて応用も不可能。
ーーもし事実と間違った宣言をしたら、その瞬間に喉を潰される様な苦しみを味わう事になるからだ。
一度味わった事があるが、あれは辛かった。根拠がない事は決して言わないと決めた出来事である。
さてどうしたものか、と溜息をついたのと同時に、扉が空いた。そして入ってきた人物によって、ラチが空かなかったこの状況は一変する。
「姉様を殺したのは、この方ではありません。
ーーナギ様、私達をお助けください」
それは昨日のシスターだった。
シスター・スイランによる鶴の一声で、簡単に釈放される私。
取り敢えず事情を教えて欲しいと言うと、人に聞かれるのは困ると言う事で、私が泊まっている一室へと向かった。
事前に盗聴・盗撮器の類がないかは、確認済みである。
「姉が殺されたって言っていたけど、もしかして昨日の…?」
「はい、正しくは従姉妹なのですが」
託宣のシスターの名はスイレンと言い、昨日の夕方に宣託を受けたと言う。
それは自分が今夜死ぬ事、そして妹に昼間に会った火炎の国の軍人ナギに助けを求めるよう言うようにと受けたと言う。
そして朝、寝室で窒息して亡くなっている姿が発見されただった。
司法解剖の結果、亡くなったのは21時から23時の間らしい。
「…今の言葉に、嘘・偽りはない?」
私は真剣な眼差しを向けた。
スイランは目を閉じると意を決したように「ありません」と言い切る。
その様子に私は「分かった」と頷くと、情報を整理し始めたのだった。
ナギの能力に関する補足説明
「ナギが事実だと思っているだけで、実は違うかもしれない」と言う事を、封殺します。
ちなみに「真理が保証する」=「事実の異なる事を宣言出来ない」と言う事を相手に理解させるオプション付きです。