過去編-あぁ…早いな
と、そこでルカが「日向は?」と聞く。
「日向?アイツが何か知っていると?」
「火炎にも関係する内容なら、アルカナ本部にも届いているだろ。鵠沼総帥は情報を教えてくれない可能性が高いがーー」
日向も一応幹部だし、何か情報を掴んでいたら教えてくれる筈だ。ルカの意図を理解し、私はすぐさま電話をかけた。そして
『…悪い、何も言えない』
「はぁ!?」
素っ頓狂な声を出す私。電話の向こうの人物は『うるせーな』と煩わしそうに呟いた。
頭にきたのか苛立ちを表現するかの様に、指で机をトットッと叩いている音が聴こえる。
『勝負って言うのは、常に先手必勝ーー後手に回った時点で負けなんだよ』
苦々しく日向はそう呟くと、こちらの声も聞かずにブチッと電話を切った。
日向の伝えてきた事に唖然とする私。そんな私に、ルカが心配そうな眼差しを向けてきたのだった。
会議から戻ってきたフルメン中将は、見るからにげっそりとしていた。その様子は、ナギの無茶に振り回された時と似ている。
「中将、先程ナギから連絡が…」
「あぁ…早いな」
フルメン中将は意味深な言葉を呟きながら、受話器を持った。おそらくナギにかけ直すのだろう。
と思ったら、フルメン中将は別の名を口にした。
「ゲフリーレン、お前はどちらの味方なんだ?」
疾風の国に居ては、埒が開かない。私は佐倉に事情を話し、火炎の国に戻ろうとした。
そう「した」のだ。
「ナギ様、逃げてくださいっ!」
「!!」
建物内で、背後から襲われる。私の頭を狙って跳んできた人物は先程の子供達だった。
「ナギッ!」
と、反応が遅れた私の代わりにルカが、振り上げられた子供の腕を掴んだ。そのまま斜め下へ引っ張り、相手の腹に膝蹴りを食らわす。
「おいっ!どう言うことだ!」
「それが起きるなりいきなり!」
救護室にいたのは二名。たとえ子供だろうと、多勢に無勢。更に怪我をさせては、と言う意識も働いたのか、支部にいたミネルバ派は次々と倒れた。
「氷雪の事が気になるが、まずはこっちをなんとかしないとっ!」
このまま火炎の国に帰ってしまえば、佐倉達が潰される。もどかしい思いを抱きながら、私は別方向から襲ってきた子供を押さえ付け、無効化する。が、
「!!」
背後から衝撃がきた。振り返るが、誰もいない。代わりに、パラっと背中にかかっていた髪が束になって床へと落ちた。
目を見開き、咄嗟に手を緩めてしまう。子供は隙ありと言わんばかりに、私の顎に頭突きを喰らわしてきた。




