過去編-人工天然
ナギと任務地に向かう。と言っても、まずは首都、風音にある支部に顔を出していた。
「お久しぶりです、ナギ様」
「様付けはいいって、佐倉」
佐倉と呼ばれた少女は、人懐こい笑みを浮かべナギに抱き付いた。そして後ろにいた俺に気付くと「あぁ、この人が」と興味深そうな眼差しを向けてくる。
「風見様が『ウザったい奴』って言っていたルカさんですか?」
「う、うざったい…」
風見の奴…まさか俺の悪評を各支部に広めている訳ではあるまいな。俺はこめかみに小さな怒りマークを浮かべつつ、佐倉に自己紹介した。
「風見がそう評価した人物かどうかは分からないが、俺がルカだ。能力は空間転移」
わざわざ能力を教えたのは、一種の牽制と自慢である。
空間転移能力は稀少だ。俺は一目置かれるに足りる存在なのだと、暗に言う為。
その意図が分かったのか、ナギは「大人気ないなぁ」と呟いた。
が、
「やっぱり!風見様が『稀少能力者ってだけで鼻にかけてる奴』って言ってたので!稀少能力って転移だったんですね!」
グサッとダメージを負う。どうしよう、牽制が通じない…。ナギを見やると、口を押さえて笑いを堪えていた。
「天然て怖いだろう?」
「あぁ…全能者よりもな」
目の端に涙を浮かべるナギに、俺は白旗を振ったのだった。
ナギは「簡単に喧嘩は売らない様にした方がいいぞ」と言いつつ涙を拭くと、佐倉の肩に軽く手を置いて俺に紹介する。
「佐倉はこんな見た目だが、私達の一つ下で教員免許及び保育士資格を持っている。実務経験も積んでいて、先月まで公立の保育園に勤めていた」
「へぇ、つまり教育のエキスパートか」
先程のダメージから回復しつつ、俺は感心の目を向ける。そして「ん?」と疑問が浮き上がった。
「勤めていたって、呼び戻したって事か?」
「あぁ、新たな教育部を作ろうと思ってね」
新たにだって?寝耳に水の情報に、俺は目を見開く。佐倉を見ると「ご存じなかったんですか?」と悪意ない眼差しを向けて来たので、更にダメージを受けた。
佐倉には教えていて、俺に内緒だったと?俺はナギにを恨めしく思い、キッと睨む。
ナギはナギで「佐倉…もうやめてあげたら?」とため息を吐いた。え?何を?
何も分かっていない俺に、佐倉は「だって風見様が」と膨れた。
「ルカ…天然で子供の相手が務まる筈がないだろう。高いコミュニケーション力は勿論、子供に危険な事をさせない、遭わせないと言う危機管理、物を教える言う教育力などが求められる職業なんだぞ?」
「つまり…」
「「人工天然」」
「……」
どう突っ込めばいいだろう。人工では天然じゃないだろ、と一応言うべきか。




