過去編-何か嫌な予感がする…
ナギが最近忙しそうである。
俺はブスッと膨れていた。
「何か大きな任務でもあったのか?」
「そんな話は聞いていないけど…」
「幹部会議でも、何も言ってなかったぞ」
風見や日向も知らないのか…。
自分だけ除け者にされなくて良かったと安堵しつつ、自分はまだ他の者と同程度の存在なのかと悲しくなる。以前の事で少しは特別になれたかと思ったのに。
そんな事を思っている俺とは別に、日向は目を細めた。
「何か嫌な予感がする…」
それは日向になのか、それともナギや風見なのかは分からないが。
そしてそれは、多くの者に当て嵌まった。
数日後、ナギが仕事中の風見に近付いて来た。
「風見、烹鮮で任務だ」
「烹鮮?また密漁とか密輸?」
2年前の任務を思い出し、風見は尋ねた。傍にいた俺は当時の事を思い出す。あの時、ナギが一時消息不明になって騒ぎになったんだよなぁ。
ナギと風見での任務か…と少し妬ましく思い、俺は無愛想に言い放つ。
「今度は勝手にいなくなるなよ」
「この任務は私とじゃないんだ」
「え?なら誰と?」
キョトンと間抜けな表情を俺と風見は浮かべた。面白かったのか、ナギはクスクスッと笑う。
「常盤さんとだよ。久しぶりに師弟での任務」
「常盤師匠が?一体何かしら」
不思議そうに首を傾げる風見。ナギも「うーん」と悩み声をあげた。
「菴羅でのメッセンジャーを頼んだ事もあって断れなかったんだけど、私も知らないんだよなぁ」
けど弟子の風見に不都合な事などしないだろう。そう思って依頼を受け取ったらしい。
「私は別任務が入っているから一緒に行けないけど、何かあったら連絡して」
とナギは風見に任務内容が入った封書を渡す。別任務?と風見は首を傾げた。
「疾風の国でね。ルカも一緒だから、何かあったらすぐ行くよ」
よろしくね!ルカ、と屈託ない笑みを俺に向ける。急に振られた俺は「あ、あぁ」と間抜けの声を出してしまった。しかし内心で拳を握りしめる。
「ナギも気をつけるのよ…」
その様子に、風見は俺を牽制する様に睨んできたのだった。