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小噺-過去編ver⑤

1週間遅れのネタです汗

 夜風に(すすき)が揺れる。俺は縁側に座り、体は外に向けつつもチラリと隣の人物を見やった。


「すっかり秋だなぁ」


と言いながら、団子ーーーではなく、月餅に手を伸ばすナギ。


「月見と言えば、団子じゃないのか?」


「今、風見が用意してくれてるよ」


そうではなく、と俺はジト目を向けた。ナギは「ルカもいる?」と、首を傾げながらまだ口を付けていない月餅を差し出す。

俺が月餅を受け取ると、ナギは「十五夜の月見って言うのは」と話し始めた。


「中国から伝わったもので、中秋節と称し、月餅などのお菓子を備えて開く、観月の宴の事なんだ」


それが伝わり、旧暦の8月15日に月を鑑賞しながら、その年の収穫などに感謝をするのが日本の伝統行事なのである。


「中秋の名月って聞いた事ない?」


と、ナギは二つ目の月餅を手に取った。月餅って、かなり高カロリーで腹に溜まると思うのだが…。

そんな事はお構いなく、ナギは月餅を半分に割った。


「中秋って秋の真ん中って意味で、旧暦で秋に当たる7月〜9月の真ん中である8月15日を指すんだ」


「ちょっと待て、日付が決まっているのなら、必ず満月って事にはならないだろ」


俺の言葉に、ナギは「ルカが知らないとは、珍しいな」と少し目を見開いた。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()為、原則として、新月の日をその月の一日ついたちとして日付を数えるんだ。だから3日は三日月、15日は十五夜=満月と日付と月の満ち欠けに対する呼び名が一致する」


現在使われている新暦では、太陽の動きを基準にしている。故に現在の十五夜の日にちは、毎年異なるのだ。


「ちなみに、新月って意味を持つ"(サク)"と言う漢字は、ツイタチとも読むんだ」


へぇ、と俺は言いながら食べかけの月餅を口に含んだ。

少し風が出てくる。芒を揺らす秋風に、ナギは身震いした。


「…少し寒いな」


そう言って、俺の側には寄ってくる。ピタッと体を寄せて、少しだけ体を傾けてきた。瞬間、俺は身が固まる。脈拍が速くなったのが、自分でも分かった。


「春になったら、今度は夜桜で花見がしたいな」


上目遣いでニコッと笑うナギに、俺は表現し難い感情を抱く。


これは誘ってる?

腕くらいは回してもいい?

……風見が来たら、ど突かれそうだ。


逡巡し意を決して、ぎこちなく腕を伸ばしたらーーーパッとナギが立ち上がった。


「風見!出来た!?」


と、そのまま部屋の奥へと行ってしまう。此方に近づいて来る足音に、気付いたのだろう。


「あぁ…」


後悔先に立たずとは、この事か。

俺は項垂れ、つい、嘆き声を出してしまったのだった。


明日の更新はお休みいただきます。

次回更新→10/10

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