過去編-毛むくじゃら…ね
「ナギの口調は、ミラの影響」って設定なので、一人称が同じ「私」だと、出だしがナギなのかミラなのか分からない…と言う事にΣ(゜д゜lll)
今回はナギ目線です。
私は現在、古い坑道の一番奥にいた。使用されていたのは此処までのようで、行き止まりである。
「爆破されましたね…」
「まさか入口がっ!?」
「それもそうなんですが……」
急いで来た道を戻ろうとする、大地の国の現場監督。私は嫌な予感がしつつ、共に引き返した。そして
「まさか…」
「やっぱり」
途中の道が、瓦礫で埋まっていた。嫌な予感が当たってしまい、私は額を押さえる。聞こえてきた爆発音と衝撃から、二箇所爆破されたと予想していたのだ。
「無線は使えますか?」
「遠すぎるのか、残念ながら通じません」
ふむ…と私は考えた。外には人がいたし、師匠もいる。少なくとも、誰にも気付かれずにこのまま放置される事はない筈だ。
「サトリだ…またサトリが…」
「あの、どうしてサトリだと思ったんですか?他の魔物の可能性は…」
絶望した声で呟く男に、実はずっと聞きたかった事を聞く。男は首を横に振って私の問いに答えた。
「見たんだ。あと此処で話した」
「どんな事を?」
「こちらが思っている事を、的確に言ってきたんだ」
まぁ、サトリだと思うくらいだからそう言うんだろうけど。
「一回目は俺と同じくらいの背丈で、全身毛むくじゃらだった。そして二回目はこの坑道内でだ」
ん?ちょっと待って。
「二回も遭ったんですか?」
「あぁ」と男は頷いた。
「二回と言うより、二匹目って言った方が正しいな。二匹目はちゃんとは見てないが、声が高くてーーーあと武器!何か物を持っていたっ!」
思い出したのか、ブルっと男は身震いする。
「ちょうど灯りなくてーーーいや、サトリが壊したのか?俺が照らすライトの光しかなくてな。薄暗い通路の奥で、道具を持った化け物と遭ってみろ。恐怖しないはずがない」
遭遇した際、蛇に睨まれたかの如く動けず、サトリが一歩近付いてきた瞬間、猛ダッシュして事なきを得たらしい。
男の言葉に、私は少し想像してみる。うむ、確かに怖い。
「二匹目はちゃんとは見てないって言うのは?」
「さっきも言ったが、殆ど暗闇だったんだ。そこに何かがいるって事ぐらいしか分からなかった」
武器ーーーなのか、コツコツッと音が聞こえたらしく、何か持っているのは分かったらしい。
ふむ…と私は考え込む。そっと壁の岩肌に触れると、微かに魔力を感じ取った。
「毛むくじゃら…ね」
後ろから襲われたら、おそらく師匠と同じように反射的に一発かます気がする。だが、それすらも避けられるかも…。




