過去編-この事を知っていたなっ
私は現在、鉱山内部にいた。村崎から読み取った情報から、ゴールドラッシュ時代に使われた古い坑道が近くにあると知り、そこがナギ達が進んでいた坑道と合流しているらしいのだ。
「金鉱とは…言ってくれたな」
そして村崎から得た情報で、新たな事実が判明した。
この鉱山には、金など存在していなかった。本当にあったーーー大量に採掘されていたものは、
「リヒトシュタールの対と称される鉱物、ドゥンケルシュタールがあったなんて」
ゴールドラッシュ時代、疾風と大地がこの鉱山の所有権を主張し合った。廃坑になった現在、レアメタルの採掘を諦めた両国は開通に踏み切ったのだろう。
そして“魔物”と言う面倒事を、アルカナに押し付けてきた。
「鵠沼めっ!!この事を知っていたなっ」
そしてアルカナ総帥は、ドゥンケルシュタールが本当にもうないのか確認させる為に、私、ナギと言う幹部二名を派遣したのである。
「サトリの件を聞いても過剰投入だと思ったけど、こう言う事だったとはなっ!」
鵠沼はアルカナ派でも、ミネルバ派でもない。だが、今回の様に事前に知っている情報を寄越さなかったのは初めてである。何か別の意図があるのか?たとえばーーーー上位存在からの干渉とか。
「…まさかな」
上位存在は自分の眷属に関して、嬉々として干渉してくる。時には力を授け、時には試練を与えるのだ。
「これは…ナギへの試練?」
有り得る、有り得るぞ、あの女神ならっ!
ひょっこり現れては、嫌らしい問題をナギに投げ、それに巻き込まれてきたのだ。今回もその可能性はある。
「いや、けど…」
何かがおかしい。あの女神なら、反対な気がする。
ーーー現在閉じ込められるのはナギであり、行動しているのは私だ。
ーーーあの女神なら、ナギに何かやらせるさせるはず。
一抹の不安と疑問を抱きながら、私は奥へと進んでいった。