過去編-嘘だろ…
内部の探索はナギに任せ、私は外から様子を窺っていた。外と言うのは、入口付近を彷徨く事じゃないぞ?
そう、私は今、山林に入っていた。麓には彼岸花が咲いており、チラホラ毒草が生えている。
「ここら辺には流石に現れないか…?」
本当にサトリが生息しているのなら、周辺の山にも来ているだろう。そう思い此処まで脚を運んだのだが、どうやらくたびれ儲けのようである。美味そうなキノコ一つ生えていない。
折角此処まで来たのだし、もう少し脚を伸ばすかと奥に進む。と、岩壁が現れた。違和感を覚え、慎重に近付く。そして
「うわっ!」
宙吊りにされた。これは植物?正体を探ろうと能力を発動する。そして
「嘘だろ…」
思いもしなかった人物の魔法である事に驚愕する私。まさか、此処にいるなんて。
その一瞬がいけなかった。私は勢いよく遠くに吹っ飛ばされる。
「……」
私を罠にかけるなど、良い度胸ではないか。まぁ、勝手に嵌った私が悪いのだが。
転送された草地で、大の字に倒れる私は「ふっふっふ」と不気味な声を上げた。色々な感情や考えが浮かぶ。
口は笑みを浮かべ、目は涙を湛えた。
仰向けのせいで、流れた涙が耳に入り気持ち悪い。その状態が暫く続き、漸く落ち着くと私は立ち上がった。
目的地は先程の場所。
「サルトゥス、お前ならあの子をどうする…?」
抱くのは憎しみか、憐れみか、それとも後ろめたさか。
師弟ともに、同じ罠にハマってます笑