過去編-あれはきっとサトリだ
「で、何を騒いでいたんだ?」
あの後、急いでやってきた現場監督に「大地の国からの依頼で」と話すと、私達は場所を移動した。騒いでいた当事者二名と共に簡易事務所の中へと入る。
椅子に座り脚を組むと、私は早々に尋ねた。男たちは不服そうな表情を浮かべながらも、渋々話し始める。
「魔物が住みついている様なんだ」
「魔物が?」
私は身を乗り出す。そんな情報、一切入ってきてないぞ?
「推進工事をしている側に古い坑道やら洞窟があるんだが、そこに先月から現れたんだ!」
息を荒げて主張する大地の国の男を援護する様に、隣にいた疾風の男も頷く。
「あれはきっとサトリだ」
「サトリ〜?」
胡散臭そうな顔をする私とナギ。ナギは溜息を吐いて尋ねた。
「それで被害は?」
「小型の掘削機などの小型の道具を盗まれた。それに何箇所か爆破されている」
盗まれたのは疾風の国の物で、軽症だが爆破被害にあったのは大地の国の者だと言う。最初の頃は、お互い相手業者が嫌がらせしてきていると思っていたのだが、どうやら違うと気付き各自上司に相談。
ーーーそして厄介な案件だと思い、アルカナに丸投げしたようだった。
男の答えに、私はチラリと監督を見た。監督は頷く。ふむ、確かにそれは問題だ。
「爆破、と言うとダイナマイトの類も此処にあるのですか?」
ナギは追加で質問する。その質問に、男達より先に私が回答した。
「いや、ガス爆発だよ」
「ガス爆発ーーー地下からメタンが?」
流石、私が仕込んだだけある。満足気に私は頷いた。
メタンガスは可燃性ガスで、有機物の腐敗や発酵などにより発生する。地表に比べて地下深部は水圧の変化がほとんどない為、メタンガスを溶かし込んだ地下水が長い間閉じ込められていたりするのだ。