過去編-それで私達が?
今回の任務地は、大地の国である。もっと言うと、大地の国と疾風の国を跨っている山脈だ。
航空写真を見ていたナギはボソッと呟く。
「先月この周辺で別任務がありましたが、一つひとつ独立した山が並んでいるのですね」
「そう、しかも各山によって特色が違うんだ」
竹林のような山、花が美しい山、毒草ばかりの山林ーーーそして今回の任務地である鉱山。
「ゴールドラッシュで一時話題になった所なんだが、今はもう出尽くした筈だ」
それでも今回、赴く理由。それは
「大地と疾風を繋ぐ鉄道を轢くが、それぞれの国で雇った建設会社同士で問題があったらしい。それの仲裁が今回の任務だ」
「それで私達が?何か別の意図がありそうですね…」
ナギの言葉に、私は頷いた。そう、たかが仲裁程度の任務に、アルカナ幹部二名を使うなんておかしい。
まさかあいつらが関わっているとか?確かに、今回の任務地に近い。
「ネージュ…」
私はそっと呟いた。ーーーその呟きを、ナギが聴いていたとは気付かずに。
目的地に到着すると、早々に騒がしかった。私に何か指示されるまでもなく、ナギは騒ぎの中心へと向かう。
「国から派遣された者です。何があったんですか」
そうナギが話しかけるが、男たちはチラリとナギを見るとすぐに顔を背けた。つまり無視したのである。
まぁ、若い女って事で軽く見られるのは予想していたけど。私は作り笑顔を浮かべると、ナギの前に出た。そして
ゴッッ!!ドカッ!ガッ!グェッ!バキバキッ!
「師匠…」
「ナギ、口語が届かない時は肉体言語を用いると早いんだ」
それだと、後々問題になると思うんですが…。と言うナギの呟きを無視して、私は築き上げた男たちの山頂で脚を組んだのだった。