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解説:不安だったんだよなぁ


 『で、どうしてお前は無事だったんだ?』


ルカが電話の向こうで問うた。

あの日から3日後。現在、私は火の国に設置されている異世界電話で、事のあらましをルカに話していた。


私は受話器を持ち替え、謎解きを始める。


「二度目に投げたアルミ粉末に、ちょっとした加工をしてたんだよ」


最初は紫陽花の花を見たときだった。


「あそこの山から流れる川沿いに、青い紫陽花が咲いていた。つまり」


『アルミニウムが溶出していたのか』


紫陽花はアルミニウムイオンを吸収すると青色の花を咲かせるのだ。

ちなみにアルミニウムイオンは通常、植物の成長を阻害する。もし風見が植物系の魔法を使ったとしても、普段より威力は落ちていただろう。


そして第4観測井戸で、アルカナに襲われる直前の事。

黄色い液体が滲み出ながらも、微かに赤くなった地面。そして側には、蓋が取れた茶色い小瓶を見つけた。


「アルミニウムが溶出している=土壌が酸性の状態で、黄色の液体、赤い結晶、茶色の小瓶」


私は組んでいた脚を入れ換える。ここまで話せば、ルカなら分かるだろう。

ルカは少し考え、恐る恐る答えた。


『もしかしてクロムか…?』


「正解」


正確には六価クロムだ。

落ちていた小瓶の中身は、おそらくジフェニルカルバジド溶液。褐色瓶での保存に、酸性下で六価クロムと反応して赤色を呈色するのが特徴だ。


『だけど、それだけの情報で断定は出来ないだろ?』


「当然」


ジフェニルカルバジドは別に、六価クロムにしか反応する訳ではない。酸化物質なら反応し、呈色してしまう。


だが、わざわざこの試薬を持って調査員が来たと言う事は、事前に六価クロムの汚染を予想していたのではないかと思ったのだ。

例えば、周辺地域で肺癌の増加や、鼻中隔の炎症などの症状が報告されていたとか。


そして工場内の構図を見て、とある施設を発見し確信した。


「ちゃんとメッキ処理出来たか、不安だったんだよなぁ」


六価クロムはメッキ処理に使われる。つまり防錆性に優れているのだ。

知ってはいても、六価クロム溶液に電気分解をかけるなどやった事がない。失敗していたら、今頃爆発に巻き込まれていた。


なんだかんだ、命懸けだったのだ。



解説回になりますので、20時頃にまた続きます。

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