解説-勝手にやるのが悪いんだよ
「去年の密輸事件で懲りていないのか。それとも別の思惑があるのか…」
私の言葉に、ルカがジト目をしてきた。「そうだとしても、」と一拍おく。
「“大地の国にばらされたくなければ、アルカナに施設を譲渡しろ”なんて、パンタシア側としたら横暴だと思うぞ」
「氷雪の国の時と同様、勝手にやるのが悪いんだよ」
ハッと鼻で笑う私に、ルカは「いずれ自分に返ってきそう…」と呟いた。
私はルカの言葉など気にせず、器に口を付け、溶けたシャーベットを流し込む。
「私たちみたいに、許可を取って造ればいいんだよ」
もともと、アルカナ内で菴羅に支部を作ろうと言う計画はあったし、大地の国にも打診していた。そして今回、風見、私と言うアルカナ内でもそこそこ地位が高い者が抜擢された理由が
「支部の建設予定地の下見も兼ねていたからな」
今回の視察場所の半分は、支部を建てる候補地である。故に7日間も任務期間が設けられていたのだ。
アルカナは大地の国に、パンタシアの事は報告しない。そして予定通り、支部の建設を行いーーー実際にはパンタシアの施設を乗っ取ってーーー「菴羅支部ではスピルリナの研究を行います」とでも公表すれば万事解決である。
私は空になった容器を置いた。
「初期費用だが、大幅に予算を抑えられそうだ」
その代わり、と言うか、寺の敷地内にあるせいで色々とやらなければならない事があるのだが、それは今は忘れよう。
「半日とは言え、頑張ってもぎ取った休暇なんだ。ーーーだからそんな素っ気ない態度するなよ」
折角、水着も新調したんだから、と言うとルカが漸くちゃんとこちらを見た。私は微笑み、少しばかり頭をルカの肩に傾ける。
「意地悪言ってごめんな」
それは数日前に、電話口で言ってしまった事について。ルカにちゃんと謝罪出来ていなかったのが、実はずっと気がかりだったのである。
ルカの顔を、と言うか反応を見るのが怖くて、私はゆっくりと目を閉じた。
俺は複雑な表情を浮かべた。
ナギは、その言葉を宣誓し、そんな態度をとると言う意味を、ちゃんと理解しているのか?ーーーと言う期待。
人目がある以上、公序良俗に反する事は起きないと分かっててやっているんだろ。ーーーと言う怒り。
それとも、何のつもりもなくやっているのだろうか?
「お前は…酷い奴だな」
ルカの呟きに、ナギは気付かないフリをした。
この時はまだ、ナギとルカに明確な関係はありません。
強いて言うなら上司と部下の関係であり、お互い意識している程度です。
伏線回収
「過去編-本当に遊ぶ気満々なんだな」で
風見が「定期視察と下見」と言っています。
次は『裏』です。