過去編-アレは睡蓮でしょ
「地下水に海水が混ざっているらしくて、ここまで育てるのに相当苦労したそうよ。ーーー少しはナギを見習いなさい」
「見習えって……あいつの『調べる』は目的が違うだろ」
思い出されるのは、ナギの部屋の机に置かれていた旅雑誌ルブブ。パラパラとめくっただけでも、何箇所かに付箋が貼られており、その全てが食べ物関係だった。ーーー蓮のハの字も出てこなかったのは確かである。
「確か、絵画にもなっていたはずよ」
それも結構な人気があった筈、と風見は補足した。
「クロード・モネじゃないよな?」
「アレは睡蓮でしょ」
ルカの言葉に風見が睨んだ。
「ナギじゃなくても、蓮と睡蓮の違いぐらい分かるわよ!」
と、意地になって叫ぶが、実は前もってナギに教えて貰っていたりする。ちなみにレンコンも蓮根と書くが、蓮の根ではないと言う雑学付きだ。
「取り敢えず、写真でも撮っておくか」
そう言って、ルカはパシャリと一枚撮影した。池の向こうにある建物も、良い感じに写り込んでいる。
「実は私、この施設の事がよく分かっていないのよね」
ルカが撮った画像を見ながら風見は呟いた。同意するようにルカも頷く。
「異世界の思想を取り込んで造られている、としか俺も知らない」
菴羅に行く前、ナギに聞こうと思っていたのだが、あの調子である。熱にうなされ苦しんでいるナギに教えて貰うのは気が引けた。
橋を渡り終え庭園を進んでいくと、先程とはどこか違和感を覚える池に着いた。どこか人工臭さを感じる。
その正体に、風見が気付いた。
「あの花、造花だわ」
近づけない様、柵がされている為そこそこの距離がある。注意深く見なければ、気づかなかったかもしれない。
「これは藻か?すごいな……」
水面が緑で覆われた様子に、ルカは先程とは別の意味で驚嘆する。
「蓮が育たないから、苦肉の策として造花でも飾ったのかもね」
側に立てられた看板には『この池は危ないので近付かないで下さい』と注意喚起されていた。どうやら、水質に問題があるらしい。
とその時、作業服姿の人物が現れた。水質検査でもするのか、池の水を採取する。
「ここも一応、撮っとくか」
と、ルカはカメラを構えた。
そして一日目の視察は終了し、ルカは撮影した画像を簡単なコメントと共にナギに報告したのだった。
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