小噺④-過去編ver
実は100ページ目だったりします。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
それは何気ない一言から始まった。
「お前らに苦手なモノってあるのか?」
烹鮮での密輸事件が終わった翌日。四人で昼食をとっていてた時のことである。
味噌汁の茶碗から口を離した日向が、不意に聞いた。
ナギ、ルカ、風見は顔を見合わせる。そして口火を開いたのはルカだ。
「苦手なモノって、食い物か?それとも別の物?」
「取り敢えず、食べ物で」
うーん…と悩む三人。別に思い付かない訳ではないーーーたとえこのメンバーであろうと、自分の弱みを教えていい物なのか、悩んでいるのだ。
日向は「そこまで真剣に悩むなよ」と呆れ顔をする。風見は「強いて言うのなら…」と前置きし、
「私はパクチーが苦手かしら」
と答える。ルカは「あぁ、なるほど」と呟いた。無難な答えでいいのだ。
「それなら俺はレバーだな」
山の中で暮らしていた影響が大きいのか、あまり肉は得意ではない。その中でも特に、レバーは苦手だ。日向はニヤリと笑う。
「それなら今度、串焼き食べる時に頼んでやるよ」
「嫌がらせかっ!そう言うお前はどうなんだよ」
ルカの問いに、日向は「俺はねーよ」と笑う。自分だけ言わないつもりか?とルカと風見は睨んだ。しかし、
「……本当に?」
「「「!!」」」
今まで口を開かなかったナギが、日向の方に目もくれず、しかし問うた。味噌汁を飲み終え、全てきれいに完食する。
ホッと一息つくと、ナギはようやく三人の方を見た。そして
「ワカメ、残してるけど」
みんなの視線が、日向の茶碗に注がれたのだった。
「確か日向って、港町育ちだよね?」
「…昔、毎日のように食わされたから嫌いなんだよ」
三食、味噌汁又はワカメスープを数年繰り返してみろ、と日向は口を尖らせた。ナギは「ルカと逆の理由か」と笑う。
「そう言うお前は、どうなんだよ?」
と、日向は先ほど自分が言われた言葉をそのままナギに投げた。ナギは少し悩むと
「饅頭が怖いかな」
と答えた。
そして後日、狙い通り日向から大量の饅頭が届くーーー事はなかったのだった。
「流石に、日向も馬鹿じゃないからな…」
「けど、私は間違った事は言ってないんだけど」
ナギの言葉に「嘘つけ」とルカがケチをつけた。
「甘いものに目がない癖に」
「ルカ、私が和菓子を食べてるのを見た事があるか?」
少し拗ねた様に言うナギ。ルカは「うっ」と詰まった。そういえば、いつもリクエストされるのは洋菓子である。
「…本当に嫌いなのか?」
「いや?たまに紅葉饅頭が食べたくなるかな」
おいっ!と突っ込むルカに、ナギは笑ったのだった。
明日はお休みいただきますm(_ _)m
次は本編です。
幼女ナギーーーではなくルカ、風見も出てきます。
次回更新→9/11 19時投稿