★宣誓しただろ!
私は心の中で舌打ちをする。
ただ時間が稼げればよかった。それだけだったのに、風見は引っかかってくれなかった。
仕方ない、本当にやるしかない。
風見は勝利を確信し「じゃあね」と引き金を引こうとした。が、
「ーーなら、本当に投げてやるよ」
私は先程とは逆ポケットから、アルミの粉末が詰まった瓶を取り出した。人質を見つけた際に、一本取っていたのだ。
蓋を開けて思い切り投げると、瓶は弧を描きながら貯水槽へと向かって落下する。遠心力のおかげか、中身はなかなか溢れない。
流石の風見も今度は驚愕し、一目散に外へと通じる扉へと駆け出した。
「本当に持っていたの!?」
「宣誓しただろ!」
今、私は此処で製造されたアルミニウムを持っている。そして今から5を数えたら、手を放す。
そう、ちゃんと持っていたのだ。ただ、"手に"持っていたのは、アルミホイルだっただけで。
嘘は付いていない。
風見が部屋を出る。私は扉までもう少し距離があり、瓶はまだ空中だ。
「ちょっと待てーー!!」
部屋を出て振り返った風見は、ニヤリと笑う。そして案の定、扉を閉めやがった。ガチャンッと鈍い音がして、鍵をかけられる。
「じゃあね、ナギ」
風見は再び走り出す。ドンドンッと激しく叩く音が聞こえるが無視をした。
窓から外を見ると、火の国の騎士団と部下達が乱闘していた。
急いで逃げないと。たとえ4大元素を使える風見でも、多勢に無勢。さらに工場内にはアルミニウムの粉末が大量にある。
水は先程説明した通り、万が一アルミニウムと水に触れたら危険だ。また、火を使って粉塵爆発でも起こしたら一溜まりもない。
風でも、摩擦熱が発生したら同じ事だ。
そして緑を操ろうにも、何故か樹々に元気がなく操り難い。
ここは無難に撤退するのが吉だ。そして風見は一部の人間しか知らない隠し部屋に入ると、転移装置を起動した。
次、解説回になります。
まだまだお付き合い、願います>_<