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誘雷。今度、会うときには。

作者: 啞雅

 たく、知ってるでしょう?


 私は雷が好きだった。


 だって、あの声を聞こえなくしてくれるから。

 ゴロゴロ鳴る暗い雲。

 時には夜景よりも派手な稲光も携えていたよね。

 私はそれもまた好きで……。

 だってキレイだったから。

 触ったら死んでしまうど、遠くから見ていれば光の雨でしょ?



「拓、今度会える時には、雷を誘ってね」





「ふざけるな!お前がそんなんだからいけないんだ!俺の仕事のことにまで口出しするな!」

「ふざけているのはそっちでしょう?!あなたが今の仕事が出来ているのは、私のお膳立てがあったからじゃないですか!!」



 今夜も、二人、顔を突き合せれば、大喧嘩。私は、十八年間、耳鳴りがするくらいこの騒音に悩まされていた。

 パパとママの、仕事のことや、家のこと、そして世間体のこと…。それに対する、絶えない喧嘩…。


『別れれば良いのに…』


 十八年間、私はそう思わずにいられなかった。

 まだ、小さな頃は、二人に何とか喧嘩をやめて欲しくて、小さいなりに喧嘩の仲裁をしていた。


「パパ、やめて!ママをいじめないで!」

玲奈れな!良いからあっちに行ってなさい!パパが悪いんじゃないんだ!」

「何よ!玲奈を味方につけるつもり?!なんて卑怯な人!」

「なんだと?!玲奈に妙なことを言って、味方につけているのはお前の方じゃないのか?!」

「うわ―――――!!」





 幼い私が、泣いても、泣いても、二人は喧嘩をやめてはくれなかった。

 九歳を過ぎた頃から、私は、学校が終わっても、家に帰らなくなった。家の前まで行っても、聴こえてくるのは、私を心配するどころか、私がいないのを良いことに、激しさを増す二人の喧嘩の声だった。

 学校から家までの途中にある公園の滑り台の下にあるトンネルで、来る日も、来る日も、夜が更けるまで膝を抱えて泣いていた。


 ある、一人の男の子と一緒に。




「玲奈、今日もいたんだ…」

たく…。うん。どうせ今日もパパとママ喧嘩してるし…」

「でも、今日雨予報だぞ?」

「良いの。私、雨好きだから。雷が鳴ってくれればもっと良い」


 野澤のざわ 拓は、私の隣の家に住んでいて、私の家の事情も大体知っていた。


 拓と私は同じ生年月日に生まれ、まるで双子のように仲良く育っていた。小さな頃は、それこそ男女なんて隔たりは何もなく。

 唯、違うのは、拓の家はご両親がとても仲が良く、拓は、愛情たっぷりに育てられてきた。私はそれが羨ましくて仕方なかった。


 けれど、嫉妬心は不思議となかった。何故なら、拓のご両親が、小さな私を拓と同じようにお風呂に入れてくれたり、家の喧嘩が少しでもなくなれば…と、なるべく家に色々な用事にかこつけて、顔を出してくれたりしていたからだ。

 それに、いつも拓が、雨が降り、雷が鳴っている夜、公園のトンネルに身を潜めている私の側に、ずっといてくれたから。

 私は、幼心に、拓のことが好きだった。初恋だった。


 それは、十八歳になった今日でも変わらなかった。


 その日、今までに聞いたことのない雷鳴に、私は少しワクワクした。

 家では、二人の喧嘩が、雷鳴に薄っすら混じって聞こえた。このうるさいくらいの雷鳴に、ここまで怒鳴り合える二人は、もうノーベル喧嘩賞ものだ。夜が更けるにつれて、強くなる雨と、怒号のように鳴り響く雷に、私の胸の鼓動が、いつになく高鳴っていた。


 一方、拓は、ゴロゴロと、ものすごい音と、今にも目の前に落ちてきそうな稲光が光っているのに気付き、玲奈のことが気になっていた。

 なんだか、気味の悪いくらい、玲奈が好きそうな雷に。


(きっと玲奈…あの公園にいるな…。大丈夫かな?)


 そんな、拓の予想通り、玲奈は、降り注ぐ雨をライトアップするような稲光の光景が、なんとも素敵で、思わずトンネルを抜け出し、公園中を走り回っていた。

 その姿を、公園の入り口で見つけた拓は、なんだか嫌な予感がした。その玲奈に駆け寄ろうとしたその瞬間…、


 駆け寄った拓と、玲奈に、大きな音と、空を真っ二つに切り裂くような稲光とともに、


 雷が落ちた。


 そして、そのまま、拓と玲奈はその場に倒れ込んだ。




 この落雷が、運命の始まりだったことに、二人はまだ気が付いていなかった。






「おい!おいって!」

 薄っすらと、目を開けると、何処か懐かしいような、でも、明らかに初めて会う男の子が、頬を軽く叩いていた。

「大丈夫か?」

 上半身を起こし、辺りを見渡したが、見たことのない風景が広がっていた。頭の中で辛うじて残る記憶にはない場所だ。

「ここ…何処?」

 ぼんやりしながら、記憶を辿っていると、頬を叩いて起こしてくれた男の子が、それはもう親切に、事細かく、答えてくれた。

「H県のN市のM公園だけど?」

「あなたは誰?」

水口みずぐち てるだけど。あんたは?」

「…わからない…。私、誰で、何処から来たの?」


 その言葉に驚く照。しかし、照はもっと驚く光景を目撃していた。

 そして、照は、戸惑いながら、怪訝そうに、今度はこっちが聞く番だぞ!的な、少し強い口調で尋ねた。

「本当に、記憶、ないのか?」

 その額には、暑い夏に流れる汗とは、何処か違う、冷や汗…らしきものが流れていた。

 それもそのはずだ。


 高校からの帰り道、突然降り出した大雨の中、傘を持っていなかった照は、仕方なく、公園の滑り台の下のトンネルで雨宿りをしていた。止むのを待って、二十分。雨は弱まるどころか、一層激しく降り注いだ。それどころか、遠くの空に雷の音まで聞こえた。こっちの空より黒い雲の下、ここから見ていると、稲光が空を切り裂くように降り注いでいた。



 そんな大雨の中、照が雨宿りをしていた、トンネルから見える砂場の真ん中に、稲光が刺すように光ると、ザー!と雨の降る音とともに、サー…と奇妙な音と一緒に、突然、女の子が、倒れたまま現れたのだ。


 びっくりし過ぎて、最初、照はその女の子に近づけなかった。しかし、女の子が現れたのをきっかけにするように、雨は弱まり、雷も、元居た遠くの空へ消えて行った。


 起きた出来事を呑み込めないまま、砂場の真ん中の存在に近づくと、それは、肩くらいまである髪の毛に、長い睫毛が雨に濡れ、鼻、口、輪郭の整った美少女だった。自分と同い年くらいの。


 しばらく、その美少女に見惚れてしまった照だったが、何が起こったにせよ、こんな雨に濡れた恰好では、風邪をひいてしまう。

 そう思い、恐る恐る、声をかけるに至ったのだ。


「誰だかわからない…」

 と言った、少女に照は、

「本当に、名前もわかんないの?」

 と、内心びくつきながら、もう一度尋ねた。


 普通、こんな事態に陥ったら、少女は泣き喚いたり、戸惑い、うろたえるだろう。しかし、彼女は違った。


「うん。名前もわからない。…だから、あなたが…照が今、私の名前を付けて」

「は?!」

 どっちがどっちだかわからないほど、戸惑い、うろたえたのは、照の方だった。

「ねぇ、名前、照が付けて」


 なんの躊躇もなく、照を、初めて出会った、見ず知らずの男の子に、あっさり、心を開いて、呼び捨てで、少女は名前を付けろと詰め寄る。


「や…それより、あんたの親とか、友達とか心配してるんじゃ…」

 と言いかけた照に、

「”あんた”じゃない!名前、付けて!」

 と、少し図々しいとも言える態度で少女は迫る。その強い態度と、口調に、追い詰められた照は、もうどうにでもなれ!と思い、


「じ…じゃあ、今、夏だから、なつ!あんたの名前は夏だ!」


 一生分の度胸を使って、照は少女に”夏”と言う名前を与えた。


 そんな、いきなり、起こった超常現象と、自分の子供でもないのに、こんな美少女に名前を与えると言う二重の珍事だったのに、少女は…、


「ふ~ん…。単純だね。ま、良いか。照は何処に住んでるの?」

 と、自分が住んでいた場所も、自分の置かれている状況も全くわからないのに、照が付けた名前を少し馬鹿にし、まずは、照の情報から把握しようとする”夏”。


「この先の普通の家だけど?」

 自分の付けた名前を、あんまり喜んだ様子を見せない夏に、少し不機嫌になりながら、照は答えた。

「ご両親は?」

 ググっと詰め寄る夏。

 何やら、良い予感はしなかったが、照は、正直に今自分の置かれている家の事情を説明した。

「今、父方のじいちゃんが病気なんだけど、それを世話するはずのばあちゃんも認知症気味で、色々大変だから、一年くらいはそっちにいるけど?」

「へー…。一年かぁ」


 美少女の顔の口元が少し緩み、ニンマリした顔になった。

 雨と汗でびしょ濡れになった照は、嫌な予感を身に纏って、

「な…なんで、そんなこと聞くの?」

 と、零したくない疑問を口に出した。

 その言葉に、美少女の仮面の下の小悪魔のような顔を覗かせるように、夏は、


「私の記憶が戻るまで照の家にいさせて♡」


 と、照に言った。





「え――――――――――――――――――――――――――――???!!!!」




 照の悲痛な叫びは、公園の木々に揺れて消えた。





 照の家に無理矢理押し掛けた夏は、照の家に着いた途端、

「照!シャワー借りるね!」

 と、言い、一回り家を探索した後、お風呂に向かい、脱衣所の扉を閉めてしまった。

「俺だって入りたいのに…」

 ボソッと呟くと、

「照!」

 と、夏の大きな声が、お風呂場からこだました。

「はい!ごめんなさい!」

 もはや”しもべ”のように、自分の名前を夏に呼ばれ、つい、謝ってしまった。

「覗いたら殺すからね!」

「はい!」

(俺…何やってんだ…)



「照-。お風呂あがったよー」

 夏は、雨で濡れた体をシャワーで洗い流し、照にもシャワーを浴びるよう、促した。

「はーい…」

 照は、不満げに、お風呂場に向かった。



 トントントン…。

 照がシャワーを浴びて、お風呂場から出てくると、台所から、軽快な包丁の音が聴こえてきた。


「え?夏、飯作ってくれてるの?」

 誰でもわかるような、”意外”と言った感じで照が驚くと、夏は、

「何?料理出来ないとでも思ったの?」

 と、照をギラッと睨んだ。

「や…想像通りです…」

 蛇に睨まれた蛙のように、照が縮こまった。


 腹の中では、不満いっぱいの照だったが、夏の料理を食べると、心境は一変した。


「わ!うまっ!」

 夏の作ったご飯は、想像以上に美味しかった。

「でしょ?」

 夏は、自分でももぐもぐと、自分の作ったご飯を食べながら、自慢げにそう言った。

「うん!めっちゃ美味い!母ちゃんのより美味いかも!」

 次々に箸をすすめる照を見ながら、夏は嬉しそうに笑った。

 そんなときに限って、夏のそんな顔に気付きもせずに、目の前のご飯だけに視覚も味覚も聴覚も、集中させてしまう照だった。


「あー!食ったー!」

「ふふ」

 照は、ご飯の味に、夏は、自分の手料理を喜んで食べてくれた照に、満足気に、夕ご飯の時間を終えた。

 カシャカシャ、とお皿や、お茶碗を片付け始める夏に、

「あ、良いよ!飯、めっちゃ美味かったから、お礼に片付けくらいするって!」

 照は、夏の手から、食器を分捕り、鼻歌混じりに食器を洗い始めた。


 そんな照を向いのテーブルに座って見つめながら、夏は言った。


「ありがとう。照。本当に置いてくれるとは思ってなかった」

「え?そうなの?」

「そうだよ。普通」

「やっぱりか…。俺も強引過ぎるとは思ってたんだけど…。まぁ、袖振り合うも他生の縁てやつ?」

「ふふ。うん。ありがとう。本当言うとね、不安でいっぱいだったんだ…」


 そんなしおらしい事を言う夏に、

(素直なとこあんじゃん…)

 と、夏の、次々とマトリョーシカのように綻んでくる顔に、戸惑い、困惑し、いじける照だったが、それと同じくらい、楽しいような、嬉しいような、ウキウキするような感情が湧いてきた。

 もう、夏に愛着が湧いてきてしまったのだろうか?

 自分でも驚くほど、照は急速に夏に惹かれていくのだった。



「ねぇ、た…照」

「ん?」

 洗い物をしながら、照は夏の問いかけに、声だけ夏に向けた。

「照は、好きな子いるの?」


 ガシャン!


「何?急に」

 危うくお茶碗を割りそうになりながら、照は答えた。

「何?って、普通いるでしょ?高校生なんだから」

「残念!俺は普通じゃないの!」

「じゃあ、童貞?」

「ブッッッッッ!!!」

「…汚い…」

 ”童貞”と言う言葉に、慌てた照は、口からつばを思いっきり吐き出した。それが、夏の顔面に直撃した。

「もう!何言うんだよ!夏!」

「だって、普通じゃないって言うから」

「俺は繊細なの!慎重なの!最近の奴らみたいに軽々しく好きとか口にしたくないの!」

「フーン…」

 ちょっと…何処か安心した様子の夏。

「夏」

 最後の食器を食器棚に乗せると、急に真剣な顔になって、照は夏の名前を呼んだ。

「ん?」

 ダイニングテーブルに頬杖を突き、その真面目な声に振り向いた夏。

「本当に何も覚えてないの?」

 その問いに何も返さない夏。

「俺、真面目に言うから、笑ってはぐらかしたりしないで欲しいんだ」

「…ん」

 夏は、小さく頷いた。


「俺、信じられない光景目にしたんだ。あの公園で、雨宿りしてたら、急に稲光が砂場の真ん中に落ちて、そこから、夏が現れたんだ。あれって…なんだったの?」

「…わからない…。本当だよ?なんでこんなところに来たのか、本当にわからないの。…私は…」

「私は?」

 夏にそう問いかけると、夏は、テーブルに突いていた頬杖を、右手に変えて、窓の外を眺め始めた。

「夏?はぐらかさないでって言ったよね?」

 少し強い口調で、照は尋ねた。

「た…照?」

「ん?」

「私は雷の妖精なの。恋をしに、空から降りて来たのよ」

「夏…はぐらかさないでって…」

「嘘なんかじゃないよ?だから、私には名前がなかった。稲光から現れた。私が雷の妖精だって証拠になると思うけど?」


「……」

 釈然としない…けれど、照は認めたくはなかったが、あんな現れ方をした夏を、雷の妖精だと言われれば、そうかも…と思ってしまう。

「じゃあ、恋をしに…って、それは何?」

「私の中には、一人の女の子の魂が込められてる。その子が恋をしたいって言ったの」

「じゃあ、夏は…夏じゃないってこと?」

「ううん。私は私。唯、体を借りてる。だから、二人で一人。って言えば良いのかな?」

 頬杖を突いてそっぽを向いたまま、照の目を見ないで、もっともらしいような、そうかと思えば、全部が嘘のような、そんな言葉を連ねる夏。


「夏。こっち向いて」

 そう言っても、頬杖を止めない夏に、片付けを終わらせ、タオルで手を拭くと、照はそっぽを向いた夏の」眼前に立ち、尋ねた。

「夏、君は誰?」



 ゴロゴロ………。



 二人の会話を阻むように、雷が鳴り始めた。


 その音が近づくと、照の頭の中に、見たことのない、街が脳裏に映し出された。

「う…っ」

「照!大丈夫?」

「あ…うん」

 突如襲った頭痛に、しゃがみ込む照。


 そんな照の脳裏に、次々見覚えのない風景が映りこんでくる。

 夏が現れた公園によく似た、ブランコ。くっつきそうなほど近くに建てられている、二軒の家。


 小さな女の子の泣き顔。

 耳が痛くなるくらいの怒鳴り声。

 照の家の近くの公園にもある小さな滑り台のトンネルで窮屈そうにうずくまる、夏によく似た高校生くらいの少女。


 空を染める稲光。



 怒涛のように流れ込んでくる映像に、照は頭がおかしくなりそうだった。


「た…照?大丈夫?」

「う…くっ」

「照!」

「…っ」


 激しい頭痛と張り裂けそうな胸の痛みに、照は自分に何が起きているのか、全くわからなかった。


 唯、”恋しい”。


 そんな想いが、体を貫くような感じを覚えた。それが誰に対しての想いなのか、照にはわからなかったけれど。

 そんな切羽詰まった瞬間でも、照は夏のことを想った。

 この映像が、もしも夏の放った”妖精”が見せるものだとしたら、夏の言う、”恋をしたい女の子”が、トンネルに窮屈にうずくまる少女なのだとしたら、夏の正体より、自分の正体の方がよっぽど不思議だ。


 照は、その夜、そのまま倒れ込むように、夏に寄りかかって、自分の部屋のベッドまで連れていかれ、眠ってしまった。





 夏は、それっきり、照の前には現れなかった。まるで、嘘のように、二人で過ごした一日は夢のように消えて行った…。







「夏!」



「何?」

「へ?」


 気が付くと、照は、夏との二日目の朝ご飯を迎えていた。

「あ…れ…?」

「どうしたの?照。そのカボチャの煮つけ、美味しくなかった?」

「え?いや…その…」

「ふ。変なの」

 美少女の下の小悪魔がまた顔を出したように、夏くすっと笑った。

「食べながら寝るなんて変なの」

「…夏?」

「ん?」

(夢?)


 自分の記憶がはっきりしない。照は、昨日あったはずの夏の妖精の話や、自分の頭の中に流れ込んできた、様々な映像の正体が全部夢のように思えた。


「早く食べなよ。学校遅れるよ?」

「あ…うん」

 照は、何故が、昨日、聞いたように、ずかずかと、夏に、夏の正体を詰め寄る気にはなれなかった。

 いつか、失ったものを、また失うような、そんな嫌な予感がしたからだ。

 イヤ、一人にはさせておけない人を一人にしてしまう、と言う方が正しいだろうか?」


「行ってらっしゃい」

「行ってきます」

 夏は、照を見送ると、M公園へ向かった。


 その公園のトンネルの中で、


「ねぇ、玲奈…、これで良いんだよね?」


 そっと呟くと、トンネルから出て、そっと空を見上げた。


 空は、晴れていた……。





「ただいまー」

「お帰り。照。お腹減ってるでしょ?今夜はカレーだよ。夏様特製の!」

「マジ?俺、カレー、大好きなんだよ!」

「美味しいよー!」


 そんな言葉を交わし、夜の食卓に着いた二人。

「うまー!これ、マジで夏が作ったの?!」

「そうだよ!すごいでしょ!」

「うん!すごい!今ままで食べたカレーの中で一番うまい!」


 そして、談笑しながら、食事を終えると、昨日と同じように、照が洗い物を始めた。


「なぁ、夏」

「なぁに?」

「あの…昨日…」

「ん?」


 歯切れの悪い照に、夏は照が何を聞きたがっているのかを察した。


「ねぇ、照。照はどんな子がタイプなの?」

「タイプ?んーちょっと寂しがり屋で、引っ込み思案で、いつもおどおどしてて、そんなだから守りたくなるような、大人し目なタイプ…かな?」

「フーン…。なんかえらく具体的で、マニアックだね」

 そう言われればそうだ。普通、”可愛い”とか”優しい”とか”明るい”とか、明暗で言うなら、”明”の方に人は惹かれるものだ。

 しかし、今、照が上げたタイプは、どちらかと言えば、”暗”の方に入るだろう。


 それは、本当に照のタイプなのだろうか?

 夏は、ふと、そんな疑問に苛まれた。自分はどのタイプにも当てはまらない。夏は、


『照じゃない照が、玲奈を呼んでる…』


 そう思った。


 この訳のわからない世界で、その正体と、運命を、夏だけが知っていた。


「そんな女の子、私、一人知ってる」

「え?」

「泣き虫な、とても悲しい女の子」

「夏?」

 何処か、遠くを見て、夏はそう言うと、『お休み』も言わず、寝室へ入って行ってしまった。


「玲奈、あなたはいつか、照を連れて行ってしまうんでしょう?私は何の為にこんな恋をしてるの?」



 星がキラキラ光る、雲一つなく、弓張月が輝く、空に、夏は涙を流して、俯いた。






「おい!二人!あそこに倒れてるぞ!」

「本当か?!」

「今、落ちた雷にやられたんじゃないか?!」


 公園の近所の大人たちが大騒ぎしている。


 その公園には、拓と玲奈が泥まみれになって倒れていた。


「うっ…」


 玲奈は、辛うじて声が出た。しかし、拓は意識不明の重体で、息も絶え絶えの状態だった。拓と玲奈は早急に救急病院に運ばれた。

 二人の両親がすぐ呼ばれ、ICUにいる二人を祈るように、見つめていた。



≪…玲奈…玲奈…≫

(……誰?)

≪私は異次元にいるあなた。名前は夏≫

(異次元…?)

 頭の中で聞こえる、聞きなれた声。それは間違いなく、玲奈、自分自身の声だった。

 しかし、目の前は真っ白。意識が戻った訳ではないらしい。しかし、いきなり異次元だの、夏だの言われても、意味がわからない。

 そんな玲奈を無視し、異次元の夏と名乗る自分の声は告げた。


≪玲奈、よく聞いて≫

(何?)

≪拓は死んでしまう。あなたが目覚める前に。もうあなたは二度と拓と会えないの≫

(そんな…!)

≪あなたに一つだけ提案がある。この世界に来ない?異次元の拓がいるこの世界に。だけど、それはあなたが異次元の拓に好きと伝えることが条件。こっちの世界で、一年以内に、好きと伝えないと、玲奈は拓の記憶も消える。好きだったことも、自分を助けようとしくれたことも、残るのは…、喧嘩ばかりの両親のことだけ。≫

 頭の回らない玲奈に、夏は更に続けた。

≪でも、どんな選択をしても、あなたにはもう、明るい未来はない≫

(どういうこと?)

≪異次元の拓に好きと伝えれば、あなたは三次元のここに戻って来る。拓のいないこの世界に。好きと伝えなくても、あなたは私、夏に乗っ取られて、玲奈としての記憶は消え、二度とこっちには戻ってこられない。そして、伝えなければ、異次元の拓も、また、同じ落雷で死ぬことになる。どっちにしろ、あなたは幸せにはなれない。唯、一つだけあるのは、一年でも、異次元の拓と一年は過ごせると言うこと≫

(そんな…!)

 意識のない、意識下で、玲奈は、あまりに残酷な二択を迫られた。

 それでも、選ぶとしたら、一つしかなかった。



(私…、異次元に…行く…。少しでもいいから、拓といたい)

≪そう…わかった≫






「たっくん…。うっく…。パパとママ…またケンカしてるの…」

「え…だって…今日、僕たちの誕生日だよ?今年も玲奈ちゃんのパパとママ忘れてるの?」

「たぶん…。パパもママも玲奈のことなんかどうでもいいんだよ…」

「…家へおいで。一緒にお誕生日会しよう」


 毎年、毎年、私のパパとママは、私の誕生日なんか、祝ってくれるどころか、頭の端っこにもなかった。そんな自分の新しい一年が始まるとき、必ずと言っていいほど、拓のご両親が、拓と生年月日の同じ私のことを、拓を祝うのと同じくらい盛大に迎え入れてくれた。


「玲奈ちゃん、食べたいものがあったら言ってね。おばさんがお皿に取ってあげるから」

「ありがとう…」

「玲奈ちゃん、ケーキはチョコのところ、玲奈ちゃんにあげるね!」

「うん。たっくん、ありがとう」


 拓のご両親が招いてくれる誕生日会が、私は、本当に嬉しかった。わざと、家の両親の喧嘩の声が、聴こえなように大きめに流してくれるオーディオの音。毎年必ず四人分ずつ用意されている、お皿とジュースのコップ。三人では多すぎる料理。拓一人では大きすぎる誕生日ケーキ。そして、出世払いの誕生日プレゼント。

 それでも、思わずにはいられなかった。私のパパとママがいてくれたら…。キャッキャッ言いながら、拓のママが作ってくれる料理を食べながら、ママの手料理が食べたいと思った。

 プレゼントをくれる拓のパパの大きな手が、自分のパパの手と重なる度、その温かさに涙が出そうになった。


 拓が羨ましかった。嫉妬とは違う。唯、悲しかっただけ。当たり前のことが起きてくれない、自分の家が。サンタクロースを信じる前に、クリスマスにはプレゼントをくれる風習があることさえ知らなかった。

 毎日のように繰り返される喧嘩の後の沈黙。それを次の朝にまで引きずる二人。私が『おはよう』を言っても、返してはくれない。娘の私にさえ、そんな態度だ。

「なんで喧嘩するの?」

「なんで仲直り出来ないの?」

「なんでそこまでして、離婚、しないの?」


 言いたいことは、年を重ねるごとに増えて行った。そして、言えないことが山ほど積み重なった。

 どうすれば、二人が『結婚しよう』と思った頃に戻ってくれるのか、最初はそう思っていたけれど、いつからか、『どうすれば、この二人から逃げられるのか』そんなことばかり考えるようになっていた。

 そう思って、別居を薦めた。そうしたら、『別居なんて恥ずかしくて出来ない』と言われた。あれだけ毎日、隣の家に聞こえるだけの大声で喧嘩しておいて、今更何が”恥ずかしい”のか…。

『離婚はしないの?』つい、我慢できずに言ったことがあった。そうしたら、『世間体はどうなる!もしもすることになったら、玲奈はどっちが引き取るんだ!』と、喧嘩に火をつけてしまった。私のことなんてどうでも良いくせに…。



「…な?玲奈?」

 十七歳の誕生日、いつもの公園で、いつものトンネルの中で、うずくまっていた私の耳に、拓の声が聴こえた。

 私は、高校生になっから、野澤家のお誕生日会に参加しなくなっていた。拓のご両親の暖かさを残したまま自分の家に帰ったら、虚しさだけが募るだけだ。あんなに嬉しかった、野澤家のお誕生日会。それすら、傷口に塩だった。


「拓…」


 公園のトンネルの中でついうとうとしていた私に、拓が声をかけて来た。

「今年も来ないの?俺ん家」

「…うん。おばさんたちに謝っておいて。拓ん家が嫌な訳じゃ決してないから」

「辛いか?」

「…」

 当たり前だ。そんな言葉、かけないで。

 両親のせいで、臆病で、引っ込み思案で、寂しがり屋になってしまった私に。泣きそうになるじゃない。

 私は拓の優しさが痛かった。もう何もかも消えてなくなってしまえば良いのに…、そう思った。


 消えて…しまいたかった。


 そう思った私の心を見透かしたように、拓は、小さなトンネルの中に、ぎゅうっと私の体を押して入って来た。

「玲奈、俺は、いつでもここにいるからな」

『やめてってば!』

 つい、大声を出しそうになった。代わりに、涙が頬を濡らした。泣き虫になんてなりたくなかった。弱虫になんてなりたくなかった。寂しがり屋になんてなりたくなかった。臆病になんて決してなりたくてなったんじゃないのに…。私は、自分の親にさえ、自分の本当の気持ちを言えず、十七歳になってしまった。


 パパもママも知らない。こんな風に、自分の誕生日に拓に肩を抱かれ、泣いている私を。祝われたことのない誕生日。プレゼントをくれないサンタクロース。そんな犠牲を生んでまで、止まない喧嘩。

 そんなに喧嘩が好きなら、私を生んでなんて欲しくなかった。こんなに寂しい、悲しい、虚しい、苦しい想いを娘がしてるのを、何故、十七年間も気付かずにいられるのだろう?

 私をサイボーグか何かと勘違いてるのだろうか?


 そんな日々の中、あの事件が起きたんだ。

 十八歳の誕生日。私の大好きな公園。私の大好きな雷雨。


 いつもの喧嘩にうんざりして、出かけた公園で、聞いたことのないほどの大きな雷鳴。両親なんかより、ずっと私の誕生日を祝ってくれているみたいだった。


 何も考えず、只、この雷雨が嬉しくて、楽しくて、大好きで…、大きく手を広げ、雨と雷に包まれていた。



 その雷が、拓を、



 殺してしまうなんて…。







 夏が照の前に現れて、一週間、夏は照に一つお願いをした。

「ねぇ、照、お買い物連れてってよ!」

 夏がこの世界に来て、照のお母さんの服ばかりで過ごしてきた。無理矢理押し掛けたのだ。不満は言えないが、やっぱり年頃の女の子。流行りの服だって着たいし、バッグやアクセサリーも欲しい。

「え…」

 照はあからさまに嫌そうな顔をした。

「何よ?」

「だってそれ、誰がお金払うの?」

「照に決まってるじゃん!」

「…ですよね…」

 半分呆れ顔で、慌てて自分の財布を開いて、ブツブツ言いだした。

 協議が終わったらしく、

「あんまり高いの買わないでね」

 と、ポツリと言った。

「うーん…なるべく検討してみる!」


 ショッピングモールに着くと、夏は出会って一番はしゃいでいた。

「この服どう?」

「可愛いけど…えーと…一万八千円?!」

「良いじゃん!こんな可愛い子が、これから毎日迎えてくれるんだよ?可愛い服着てれば、照もテンション上がるでしょ?」

「イヤ…そうだけど…」

「じゃあ、しょうがないな。こっち!」

「六千円か!良いよ!」

「おそろいのマグカップとかも欲しくない?これとか!」

 洋服、バッグ、ネックレス、サンダル…。一通り買い終えると、夏はふとあるものの前で足を止めた。

「夏?まだ何か買うの?」

 焦りにも似た声が照の口からこぼれた。

「ねぇ、指輪買わない?おそろいの。これで良いの」

 そう言って夏が指さしたのは、一つ八百円の指輪だった。

「こんな安物で良いの?」

「これが良いの」


 そう言った夏は、何処か寂しげだった。

「良いよ。買おう」

 いかにも安物と言った感じの指輪を、夏は嬉しそうに、右手の薬指にはめた。照にも、そうしろと言って、無理矢理、照の薬指に指輪をはめた。

「学校にははめていけないよ?」

 そう照が何処か申し訳なさそうに言うと、

「良いの。でも、無くさないでね?」


 そう言った夏は、やっぱり何処か寂しげだった。


 買い物を終え、家に着いてまじまじと財布の中身を確認した照は、

「今月、赤字だよ…。どうしよう…」

 と、冷や汗をかいた。その照に、

「私に任せて!私の為にお金使ってくれたんだから、ここは私の節約術で乗り切ってみせましょう!」

 洗濯はお風呂の残り水。シャンプーの容器にはゴムを巻き付けて出る量を調節。お米をといだお水は、お皿洗いや、植木の水やりに。食事は、料理上手な夏だ。何処のスーパーが安いかくらいもう把握している。


 そんな、やりくり上手な夏に、家庭的な一面を見て、照は、自分でも意識しないうちに、段々夏に惹かれ始めるのだった。




 その恋は、泡のようにいつか消えてしまうなんて、その時は知りもせず…。





「照!お帰り!」

「ただいま、夏!」

 ブンブンと手を振り合って、照の帰宅を迎える二人。

「こういうの、なんか良いな」

「ん?」

「ほら、夏来るまで、親いなかったじゃん?”お帰り”って良いなって思ってさ」

「うん。私もなんかお嫁さんになったみたい!」

「ブッッッ!」

 照は、”お嫁さん”と言う夏の言葉に、夏が出した麦茶を吹き出した。



 玲奈が、”夏”として異次元のこの世界に来て半年が経った。夏…玲奈は、異次元の拓、照に未だ、好きと言えずにいた。言えば、短いけれど、恋人同士でいられる、そうわかっているのに…。

 玲奈が夏になって変わったのは、性格だった。

 明るくいられる。我慢しないで笑える。ちょっと生意気でいられる。いつも寄りかかってばかりだった拓…照に頼ってもらえる。

 それだけで、玲奈は幸せだった。ここでは、両親の喧嘩も聞こえない。目を、耳を、口を塞いできた十八年間。それを、一切、忘れられる、この世界が愛おしくて仕方なかった。


 でも、玲奈は、あの時、夏が言った『三次元の世界に戻っても戻らなくても、自分は幸せになれない』と言う言葉がずっと頭から離れなかった。

 でも、一つだけ、救いがあるとしたら、こっちで照に気持ちを伝えれば、照は救うことが出来る、と言うことだけ。こっちの夏と照はこのまま幸せに暮らせる。それだけ。

 こっちにいるのは、間違いなく夏ではなく、玲奈の記憶。人格。でも、あと半年で、玲奈は元居た、喧嘩ばかりの両親と、拓のいない世界に戻らなくてはならない。



 絶望だ。



 あの時、夏は言っていた。好きと伝えなければ、照も雷で死ぬと。もしも…、もしも、自分が一緒にその雷に飛び込んだら…どうなるんだろう?


 照だけじゃなく、自分も死ねたら、二人は何処へ行くのだろう?もっとすごい異次元へ行けるのだろうか?


 ふつふつと湧き出す、自分の醜い想いに、玲奈は、自分でも自分が怖かった。

 あの世界には戻りたくない。拓がいないのなら、それこそ…。だけど、死ななくて良いはずの照まで、殺しても、記憶なくあの世界に戻るんだとしたら、照を殺すのは雷じゃない。夏の名を借りた玲奈だ。十八歳の誕生日、自分があの雷鳴に心踊らされ、ひょいひょい公園に飛び出さなければ、拓が落雷に巻き込まれることはなかった。


 ”あなたは二人も殺すの?”


 耳元で誰かが囁く。



「夏?」

 ふと横を見ると、照が怪訝そうな顔でこっちを見つめていた。

「ん?」

 慌てて我に返ると、

「夏、最近おかしくない?時々ぼーっとすること多くなったよ?」

「え?そう?物思いに耽る美少女、って良い感じじゃない?」

「また、そうやって!自信過剰なんじゃないの?」

 クスクス笑う照に、さっき一瞬でも考えた、照をも殺そうと考えた自分が恐ろしい殺人鬼にでもなったようだった。


 ”出来ない”


 この半年、繰り返し夢にまで出てくる究極の選択に、夏の出す答えは変化するばかりだった。

 こうしよう。イヤ、だめだ。でも…。

 グルグルと回る色違いで凸凹した答えに、夏は戸惑っていた。

 怖くて、苦しくて、どうすれば正解なのか、何処かに正解が転がっていないのか…。そんなものをひたすら探していた。

 もう自分だけじゃ、答えは出せない…。行き詰まりを感じていた。


 それくらい、夏は喧嘩ばかりの両親と、拓のいない世界の玲奈に戻りたくはなかったし、けれど、好きと伝えなければ、照を死なせてしまうなんて、自分勝手な選択肢も、選ぶ勇気はなかった。



「夏?」

「へ?」

「まただ。また、ぼーっとして…。せっかく夏が作った親子丼、冷めちゃうよ?どうした?」

「あ…ううん。なんでもないの。うん。冷めちゃうね。食べよう!」


 夏の戸惑いに、戸惑っているのは、照も同じだった。出会った時、いきなり自分を呼び捨てにして、自分の家に記憶が戻るまで置いてくれ、などと言って、マトリョーシカの二つ目の顔、悪戯な顔をして笑った夏と最近ずっと下ばかり向いて、ぼーっとしているばかりいる夏はまるで別人だ。

 口数も少ない。笑顔も作り笑顔に思える。料理は相変らず美味しいけれど、眉を下げ、遠い目をして箸が口元で止まったまま、自分で作った美味しい料理を食べようともしない。


『どうした?』と聞いても、答えることは一緒で、『何でもない』と言う。そして、その場は元気で明るき夏に戻る。『何でもない』と言われると、それ以上深くまで聞くような勇気も度胸も、照にはなかった。


 怖かったのかも知れない。夏に、その上の空の夏に、『何でもない』と笑う夏に、

「嘘つけよ!なんか隠してんだろ?」

 とでも強く言えば良いのか、それとも、

「なんか悩みあんなら、聞くよ?言ってみ?」

 とでも優しく聞けば、夏の心の隙間に入って行けるのか…。

 その結果、もしも夏の秘密に触れたら、自分は無傷でいられるのか…、それが、照は怖かった。

 器が小さいと言われればそれまでだ。肝が据わってない…そう言われても仕方がない。臆病者!と蔑まされても、否定出来ない。


 それくらい、夏の秘密は”良くないもの”のような気がして、どうしても聞けない…聞きたくない、そんな想いが、心を過った。



 そんな、ある日曜日。

「照!公園行かない?」

「え?公園?」

「うん!私たちが初めて会った、あの公園!」


 久しぶりの夏の”心から”の笑顔に、照は嬉しくなり、二つ返事で行こうと決めた。



「本当にふしぎだよなぁ…。こんな砂場に夏が突然現れるなんて。俺、マジビビったもん(笑)」

「うん。そうだね。私はどうしてここに来たんだろう?」

「え?雷の妖精だからじゃないの?」

「ふ。妖精か…。そんな綺麗なものじゃないかもよ?」

「…どういうこと?」

「ううん。こっちの話」

 そう言うと、夏は、トンネルの中に徐に入って行った。

 膝を抱えて、顔を腕にうずくめると、夏は静かに震え出した。

 そんな夏に気付かず、照は砂場で、伸びをして、良い天気だなぁ…などと、太陽を浴びていた。

 その内、夏がいないのに気付き、

「あれ?夏?な…」

 そっと覗き込んだトンネルで、夏はうずくまっていた。

「夏?どした?」

「…」

「入るよ?」

 そう言うと、狭いトンネルの中に、無理矢理入って行った。すると…、





「私は、殺人犯よ?」



『殺人犯よ』



 いきなり飛び出した夏の言葉に照は驚かずにいられなかった。




「ふ。嘘」

「へ?」

 照は、誰が聞いても”へにょっ”と腰を砕きそうな声を出した。

「な…なんだよ!びっくりするじゃん!夏、変な冗談言うのやめろよ!」

 汗だくになって慌てた自分をクールダウンした。


「でも、本当に殺人犯なら、照、どうしてた?私が殺人犯で、照の家に匿ってくれって頼んでたら、照は、どうしてた?」

 突然の予想もしていなかった質問に、照は、どんな答えを返そうか、本気で悩んだ。

 そして、出した答えは、

「…匿ったかな…?」

「え?どうして?」

 夏は、その答えを自分の頭の中に用意していなかった。

「だって、夏は雷の妖精でしょ?雷は時には人を殺すこともあるから」


 真っ直ぐに、暗いトンネルの中で、秘密を交わし合うように、二人は見つめ合った。



 何秒?

 何分?

 何時間?



 わからないけれど、二人は見つめ合い続けた。



 長い沈黙を破ったのは、夏だった。

 そっとトンネルから抜け出して、空を見上げた。

 その後ろから、夏につられるように、照がトンネルから、出て来た。

「夏?」

「もう、夕方になってたんだね。良い夕暮れ」

「え…あぁ…うん。綺麗だね。夕焼け」

 遠い夕焼けをそっと見つめ、何処か泣きそうな夏。

 照は後悔した。

 さっき、トンネルの中で見つめ合った時間の中で、夏の手を握れば良かった、と。

 イヤ、抱き締めれば良かったと。


 ”死んでも、良いから”


 ”殺されても…良いから”




 ズキンッ!



 またいつかのように、照の頭の中に、途切れ途切れの映像が流れ込んで来た。


 泣いてる小さな女の子。

 テーブルに置かれた四つのコップ。

 さっきとは違う、笑った可愛らしい女の子の声。

『たっくん』

 そう自分を呼ぶ女の子。



(たっくん?俺は照…あ…夏…最初の頃俺の名前呼ぶ時、《た…照》って…”た”って一体…《たっくん》て…誰だ

 ?)


「照?!」

 隣で、突然しゃがみ込んで、頭を抱えた照に、夏が駆け寄った。

「だ…大丈夫…」

「でも…!」

 そんな言葉、嘘だった。今にも意識を失くし、倒れそうだった。


『好き』


 伝えなければ…。


 夏はそう思った。



 何故なら、まだ、三次元にいた玲奈に、異次元の夏は、もう一つ、大切なことを告げていた。


≪玲奈…それから、これはあり得るかわからないけれど、もしも、照が、拓の記憶を、、拓が照を取り込むようなことがあったら、拓も、照も、玲奈も、夏も、三次元にも、異次元にもいられなくなる。そう言う兆候が現れたら、玲奈の気持ちを早急に伝えて。あなたが、異次元に行くと決めたら、あなたが四人の命を預かることを忘れないで≫


 今がその時だ…その時が来たんだ…。

 と、夏は悟った。


 けれど、頭ではわかっていながらも、夏はどうしても照に気持ちを伝えられなかった。だって、この世界での一年を終えれば、絶望の世界が待っている。


 泣きたかった。



『殺人犯』



 そう告げても、自分を匿うと言ってくれた照を、まさかその照を殺そうとしているなんて知らない照を、殺すことなんて出来ない。

 一年と言う期間限定ではあるが、この一年をくれた夏を、夏をも消してしまう訳にもいかなかった。


 この日々が続いてくれたら…。


 その願いは叶わない。


 どんなに願っても…。






「照、もう大丈夫?」

 公園でへたり込んだ照を抱え、照の家に何とか着くと、照をベッドに寝かせた。

「…ん。平気」

 青白い顔でそんなこと言われても、なんの説得力もない。

「なぁ、夏」

「ん?」

 布団を照にかけながら、、夏は返事をした。

「”たっくん”って誰だかわかる?」

「!」

「なんか知んないけど、さっき、頭に浮かんだんだ。なんか…頭の中で小さな女の子が泣いてた。その子が”たっくん”って俺のこと呼んだんだ。なんか、夏、心当たりない?」

「…ううん。夢だよ。良いから、少し休めば大丈夫だと思うから」

「…夏…嘘ついてるだろ」

「え?」

「夏、俺、もう十一ヶ月も一緒にいるんだよ?夏が嘘ついてるかどうかなんて、目を見ればすぐわかる」

「照…ごめん」

 そう言うと、夏は、明るくて、少し意地っ張りで、無邪気でいられる自分を捨てなければならない時が来た…そう思った。

「照、後、一ヶ月待って。そうしたら何もかも話すから。それまで、今まで通り、私の側にいて」

「後一ヶ月?」

「お願い」


 見たことのない薄っすら涙を瞳に溜め、じっと照を見つめる夏。照はもやもやしながら、その”お願い”を受け入れた。



 そのお願いの裏で、夏は、ある決心をした。





 それからの一ヶ月は、楽しくて仕方なかった。夏は毎日美味しい料理を作り、照は喜んでその料理を食べた。

 ショッピングもした。照がお財布とにらめっこして、それをクスクス笑いながら、一番欲しいものは我慢して、夏は少し安めの服を買った。



 けれど、一ヶ月と言う期間は短く、あっという間に過ぎてしまった。



 一ヶ月後の朝、今までと同じように、夏は朝ごはんを作った。

 照は少し恐怖心を覚えながら、食事を口に運んだ。

 そして、夏に切り出した。

「夏、今日で一ヶ月だよ?夏の秘密って…」

「照が学校から帰って来たら話すよ」

「本当?」

「うん。だから、何処にも寄り道しないで、帰って来てね」

「あ…うん。わかった」


「行ってらっしゃい」

「行ってきます」


 笑顔で照を送り出すと、夏の瞳からはポロポロと涙がこぼれて来た。

「ごめん、照。ごめんね…」




 照は、学校へ来て、友達と話していても、授業を受けていても、お昼に夏が作ったお弁当を食べていても、落ち着くことはなかった。早く時間が過ぎないか…そればかり考えていた。

 そうこうしていると、空が暗くなり、雨が降り始めた。

「えー!雨?!今日、一日中晴れ予想だったじゃん!傘持ってきてないよー!」

「え?雨…?」

「どうしたの?水口。なんか顔色悪いよ?」

「あ…いや…ちょっと…」

 言いかけて、照は、ハッとした。

「ちょうど一年だ…」

「え?何?」

 クラスメイトの声はもう照には聞こえななかった。

 照の胸がざわついた。なんだか、朝した約束が果たされないような、もう二度と夏に会えないような、そんな嫌な予感がしたからだ…。

 照は、その時、初めて気が付いた。今日が、夏が現れた日からちょうど一年だったことに。

 ”何かある…”

 照は、直感した。そして、下校のチャイムが鳴る前に、雨の中、走って家に帰った。

「夏!」

 玄関のドアを乱暴に開け、夏の名前を叫んだ。

「夏?!いないの?!」

 雨でびしょ濡れになった体のままで、家中探した。

 そして、ダイニングテーブルの上にある手紙を、やっと見つけた。








 [照へ

 照、私は照にずっと黙ってたことがあるの。私は夏じゃない。記憶がないって言うのも嘘。私の名前は安田やすだ 玲奈。信じてもらえないかも知れないけど、異次元の世界から来たの。異次元の世界の私は、とても泣き虫で、寂しがり屋で、弱虫で、引っ込み持案の、とっても悲しい存在。何故そんな性格になってしまったのかは、私の両親のせい。

 私の両親は、毎日喧嘩ばかりで、私の誕生日も、一度もお祝いしてくれなかった。信じられる?私、サンタクロースさえ知らなかったんだよ?

 でも、一番悲しかったのは、パパとママが、いつも仕事や、世間体のことばかりで喧嘩してたこと。一度で良い。私の為に喧嘩して欲しかった。私の苦しみをわかってほしかった。

 その私を救ってくれたのは、異次元のあなた。野澤 拓。

 拓は…あなたは、いつも公園のトンネルの中でうずくまってる私の隣にいてくれた。私は拓が好きだった。


 でも、拓は、私がすごい雷雨の中、公園なんかで遊んでたせいで、私と一緒に雷に打たれて死んでしまった。なのに、私は生き残ってしまった。

 そして、こっちの私、夏に、こっちに来て、こっちの拓、照、あなたと、一年間一緒にいられると教えられたの。だけど、それには条件があって、一年以内に照に好きだと伝えられないと、異次元の拓だけじゃなくて、照まで雷に打たれて死んでしまう、そう言われた。それなのに、私は、今日まで照に、好きだと、言えなかった。玲奈に戻っても、もう拓はいない。喧嘩ばかりの両親が待つ、最悪な世界が広がるだけ。そう思ったら、照と、このまま夏として一緒に死んでしまえれば…と思ってしまった。勝手なことばかりして、ごめんなさい。

 だけど、照を殺すなんて、やっぱり出来ないや…。


 私、照が好きだから。


 大好きよ。照。


 …やっと言えた…。


 こっちの夏と照の一年間の記憶は消えるけど、きっと、運命だから、また私たちはこの世界にいれば、出会って、恋をするでしょう。


 勝手なことばかり言ったり、したりしたけれど、これが最後の我儘。


 照、あなたは生きて。幸せになってね。


 一年間、ありがとう。


 今度、会う時も、雷の下で会えたら良いね。


 夏こと、安田 玲奈]




「玲奈…」

 そう呟いた時だった。照の中に、異次元の玲奈と拓のすべてが流れ込んできたのは。

 それは、拓の記憶だった。


 毎日、公園のトンネルの中で泣いている玲奈。

 中学まで野澤家で行われていた、誕生会で、嬉しそうにしながらも、一人、両親に誕生日を忘れられた、可哀そうな玲奈。

 自分の家の前で耳を塞ぎ、突っ立っている玲奈。

 雷が好きだと言った玲奈。

 十八歳の誕生日、今までにない雷雨の中、家から出て行く玲奈を追って、公園に行くと、目をキラキラさせ、雨に打たれる綺麗な玲奈。

 それに見惚れた拓。


「俺も…玲奈が好きだった…」


 そう言うと、照…イヤ、この時はもう拓だったかも知れない。

 拓は、二人が出会った公園に猛ダッシュした。


「はぁ!許さねぇぞ!玲奈!お前だけ…はぁ!死ぬなんて…絶対許さねぇからな!」


 二人を引き裂くように、雨と雷は激しさを増した。


 玲奈は、公園の砂場で、落雷を待っていた。ここで自分が雷に打たれれば、夏はこの世界で生き続け、照も助かる。不幸なのは、自分一人で良い。こんな素敵な一年間をくれた夏に…照に、玲奈は心から感謝していた。

 あっちの世界に戻っても、もう拓はいない…それは悲痛なくらい辛い現実だったけれど、照と過ごした一年を糧に、生きていける…そう思った。


 ドゴドゴ…ピシャーン!!


 雷雨が公園に近づいた時、


「玲奈!!」

「!て…拓…?」

 拓がびしょ濡れになって現れた。

「玲奈!ふざけんな!」

「拓!来ないで!この雷にもし拓が…こっちの拓が巻き込まれたら、照まで死んでしまう!」

「俺は、玲奈の為なら何度死んでも構わない!」

「そんなこと出来ない!だって私は…」

「私は?!何?!」

「私は…」

「言って。玲奈。ずっと聞きたかった言葉を…。あんな手紙なんかじゃなくてちゃんとした言葉で!」

 拓が望んだ言葉を放てば、照は助かるのだろうか?究極の選択だ。


「…き…好き!拓、大好き!!」



 そう玲奈が言った瞬間、雷がすごい勢いで二人に落ちた。









「ん…」

 薄っすらと目を開くと、玲奈の両親が、玲奈の顔を覗き込んでいた。

「玲奈!大丈夫か?」

「パパ…」

「玲奈…良かった…心配したのよ!」

「私…」

「落雷に遭ったのよ。もう少しで死ぬところだったのよ!」

「…あ…」

 玲奈の脳裏に雷が落ちる瞬間、拓が走り寄って来た光景が広がった。

「パ…」

 拓の安否を聞こうとしたその瞬間、

「こんなことになったのはお前のせいだぞ!一体玲奈の何を見てたんだ!」

「なんですって?!玲奈を放っておいたのはあなたじゃない!」


 玲奈は、両親のその会話に、我を忘れた。



「うるさい!!」


「!」


 その言葉に、二人は思わず喧嘩をやめた。


「いい加減にして!パパとママがそんな風に喧嘩を続けるんなら、死ねば良かった!助かったって嬉しくも何ともない!」

 そう言うと、玲奈は、体に纏わりついている点滴や、心電図のシールをはぎ取り、病室を飛び出した。


「玲奈!!」


 二人の声は玲奈の耳にはもう聞こえない。


 そのまま屋上へ向かうと、とっておきのシチュエーションが広がっていた。

 大粒の雨と、耳にズンズン鳴り響く雷だった。




「あ…今度こそ死ねる…拓、早く迎えに来て…。今度こそ二人の世界に行ける。降ってきて…雷…」



「玲奈!!」


 玲奈は信じられない声を聴いた。

「拓…?」


 しかし、もう遅かった。


 玲奈を追って来た玲奈の両親と、拓、玲奈、みんなを巻き込み、雷が落ちた。


 そうして、玲奈、夏、拓、照の存在が入り混じった。


 その瞬間、玲奈の両親に、玲奈の十八年間の想いが防波堤を飛び越し、流れ込んで来た。


 二人のけんかを必死で止めようとしていた玲奈の想い。誕生日もわすれていたこと。サンタクロースさえ信じさせてあげられなかったこと。公園のトンネルでうずくまっていた玲奈の寂しそうな姿。


 二人にうんざりして、あの日、十八歳になったあの日、まるで雷を呼ぶように、公園でびしょ濡れになって、死を覚悟したような玲奈の笑顔…。


 そんな玲奈の感情を初めて知った玲奈の両親の前で、病院の屋上に落ちた雷で、光に玲奈が包まれたと思ったら、異次元の世界へ戻り、夏にそのすべてを取り込まれてしまった。


 拓は死んでしまった…そう思っていた…が、拓は、意識不明の状態でも、生きていた。そして、玲奈が夏として過ごした一年間、ずっと眠っていた。そんなことは露も知らず、拓は死んだと思い込んでいた玲奈は、拓のいない世界を諦め、雷で、



 死んでしまった。



 肉体までなくなった玲奈の存在に、玲奈の両親は、初めて喧嘩ばかりしていた自分たちの愚かさに気付いた。



「玲奈ーーーーーーーーーー!!!」


 叫ぶ拓。



「なんで…なんで…こんなことになる前に玲奈の想いに気付いてやれなかったんですか?!」

「…」

 玲奈の両親は下を向き、何も言い返せない…と言った感じで、玲奈がいなくなった屋上で、へたり込んだ。



「玲奈が、最後に言ってた。一度で良い。仕事や世間体のことじゃなく、一度でも良いから、自分のことで喧嘩して欲しかった…って。…玲奈を…玲奈を殺したのはあなたたちだ!!」


 拓の言葉に、玲奈の母親が、初めて玲奈の為に涙を流した。


「…め…さい。ごめんなさい…」

 泣きながら呟いた。

「本当に…馬鹿だな…俺たちは…」

 玲奈の父親が、母親の肩を抱いた。

「玲奈がいなくなって…玲奈の想いを知ることになるなんて…それまで気付けなかったなんて…。拓君…玲奈は、一体何処へ行ったんだ?この屋上にさっきまでいた玲奈がいない。玲奈は…私たちのような親のいない世界で幸せに生きているんだろうか?」


「あなたたちが…幸せにするべきだったんじゃないですか?そんなこと考えている暇があったら、玲奈の痛みをちゃんと心に刻んでください!」




 拓は、誰にも言うつもりはなかった。

 異次元で夏と照が幸せに暮らしているだろうことを。


 そんなことを言ったら、玲奈の両親はまた喧嘩をするだろう。



 唯、拓は、涙を溜めながら思った。

 異次元で、照を殺さなかった夏の優しさは、本当の愛だったのだろう、と。それが、この世界で自分に向けられた玲奈の愛だったにちがいない、と。


 そう。異次元に玲奈をいざなったのは、拓だったのだ。

 喧嘩ばかりの玲奈の両親に悩まされている玲奈に、たったひと時でも、開放感を上げたかった。十八年間、玲奈の側にいたのに、自分の気持ちを伝えられないでいた自分への情けなさも…言い訳かも知れないけれど…、玲奈と、恋をしたかった。

 トンネルにぎゅうぎゅう詰めになって一緒に…ずっと一緒にいたのに、好きと伝えられずにいた自分にも玲奈を死なせた責任があるような気がしていた。



 それでも、最後には、玲奈は、拓も、照も、好きだと言ってくれた。自分が犠牲になってでも。

 拓の右薬指には、八百円のおもちゃの指輪がピリピリとした感覚を纏い、震えていた。



「玲奈…助けてやれなくて…ごめん…」






 雷も遠ざかり、雲の隙間から薄光が差し込んできていた。




 玲奈の…終わりだ。




 拓は、空を見る。耳を澄まして、玲奈の最後の声を聞こうとした。



「今度、会う時は、雷の下でね…」


 そんな声が聴こえた…。



 …気がした。

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