First Contact
ピピピッピピピッ
っと目覚ましの音がする。
朝だ。カーテンが開けてあったので朝日が起きろと言わんばかりに降り注ぐ。
ベットからすべりおりて着替えて朝めしを食べに行く。両腕に少し違和感があったがそれは夢の所為だろう。
あれ? 俺はいつの間に寝たんだ?
…まぁ、いいか
「あ…倫兄ぃ、おは…いぃ!? そっその髪どうしたの!!?」
「あぁ!? 髪って…」
…あれ? なんか…白い…
倫護の顔が白くなっていく。
まさか、
急いで鏡を覗き込んで見るとそこにはくすんだシルバーの髪をした自分がいた。おまけに瞳は紫色だ。
「嘘ぉ!? なんで??」
昨日までは黒だったのに!
「ちょっと倫護! うるさいわよ…って、あんたどうしたの? 髪なんか染めて? 発情期?」
最初は、少しうるさい弟達にうんざり。みたいな感じできたのが今やニヤニヤ笑いだしてる。
ゴリラか! って普段なら突っ込んでいただろうけど今はそれどこれでない。
眉毛まで銀色だからだ。
「倫兄ぃかっこいい!」
「あんたは染めンじゃないわよ」
透麻の兄への憧れ目線を魅紅が察知してビシッと注意した。
マジでどうしよう…
悩んだ挙げ句“染めた”ってことにした。
「朝起きたら髪が銀色でした」
なんて誰が信じるかよ。
瞳は色はカラーコンタクトってことにした。
まあ、教員にはごちゃごちゃ文句言われるだろう。
教室に入ると案の定みんな驚いてヒソヒソ話し始めた。
そりゃそうだ。家でさえキッチンに入ったら母さんが作っていた味噌汁を床にぶちまけてしまったくらいだ。親父は何も言わなかったけど目が笑っていなかった。
とりあえず自分の席に向うと先に着ていた佳凛が口をポカンとあけて倫護を見ていた。
どうやら友人の変化に話し掛けていいのかどうか迷っているらしい。
佳凛が固まっている間に彼方がきた。
「うーす…うぇ!?」
もうこの反応には飽きたよ。うんざりだ。
「かーっくいいね〜。この不良!」
彼方はいつもどうりだ。少し救われた気がした。
「うるせー。色々んだよ」
そのあとは案の定担任に出席簿の角で殴られた。
幸いそれで後は何もなかった。細かいこと気にしない人でよかったと心から思った。
流石にシルバーは目立つ。廊下を歩くだけでガラの悪い先輩に睨まれたり散々だ。
「なぁ、今日はどこ行く?」
昼休み彼方が弁当をガツガツ食べながら聞いてきた。
佳凛はまだ髪の色の違う倫護になれないのか動きがぎこちない。
「俺はパス」
透麻との約束があるからな。こんど破ったらかなり面倒になる。
「えっ!? 春日くん行かないの?」
佳凛は倫護の紫色の瞳に見られて少しビクッとなった。
「このがり勉め! 帰って勉強する気だな!」
「仕方ないよ。用事があるみたいだし…」
ナイスフォローだ佳凛。
それにこんな髪になってしまった以上できるだけいい点をとっていたほうがいいに決まっている。
「ちぇっー。ツマンネーの!」
かなり残念そうだな彼方だっが彼は弁当を平らげてさっき校買で買ってきたパンの包みを笑顔で開けていた。
放課後、彼方はクラスの勉強できる奴に勉強を教えてもらうとかで少し学校に残るらしい。
佳凛は他の女子と帰るみたいだ。
で、俺はさっさと帰る。
学校を出てすぐに後ろからか細い声がした。
羽希だ。
「羽希も今帰りか?」
羽希は、うん、と頷いて遠慮がちに制服の袖を握った。
しばらく2人は無言のまま歩いた。
「お…お兄ちゃん。」
何か決心したようにいつもより大きな声を出して羽希が倫護を呼んだ。
「ん?」
「お兄ちゃんって不良になったの?」
また髪と眼のことだ。
と、倫護はすぐにわかった。
羽希の目は泣きそうになっていた。
「あぁ、不良だ」
とか冗談でも言ったら今すぐ泣いてしまうだろう。
「大丈夫。俺は俺だ。」
そう言って羽希の袖を掴んでいた手を握ってやった。
こうする事が妹の不安を取り除く一番の方法だと思ったからだ。
すると羽希はたちまち笑顔になり兄の手を握りかえした。
倫護がそれを見ていると羽希は、自分はなんてバカな事を考えていたのだろう、と恥じらいで下を向いた。
しかし笑顔は消えない。
倫護もそれを見て安心した。羽希がドーナツが食べたいと言ってきたので仕方なく遠回りして行くことになった。
流石に人通りが多くなると手をつないでいるのが恥ずかしくなってきたので手を離そうとしたが羽希がどうしても離してくれない。
気が付くとあまりは真っ暗になっていた。
いや……違う!
闇だ。
俺と羽希しかいない。それ以外見えない。
俺はこの感覚を一度味わっている気がする。
羽希もこの状況に気付いたらしく倫護の手を両手で強く握った。
「お兄ちゃん…ここどこ?」
羽希の問いに倫護は答えてあげられなかった。
倫護もわからなかったからだ。
夢?
と、思って一度目を強くつぶった。しかし景色は変わることなく闇のままだった。
その時──
「グオオォォォォ!!」
何かの声が聞こえた。
いや、声と言うより“咆哮”だ。
2人は思わず耳をふさいだ。
地鳴りのような何千匹もの獣が一度に鳴いたような咆哮。
何かがいる。
ここにいては行けない。
「羽希。大丈夫だ。心配すんな」
それは半分自分に言い聞かせていたようなものだった。
倫護は少しでも妹を安心させようと、震えている妹の頭を撫でてやった。
少しだけ安心したように見えた。
それを確認するや否や右手に強烈かな痛みが走って倫護は吹っ飛ばされた。
「ぐっ!」
痛みが頭に入ってくるかと思っが自分を吹っ飛ばした奴の姿から目が離せなかった。
そいつが特別綺麗だったわけではない。
そいつがこの世の物ではなかったからだ。
身体は人間のようだか5〜6メートルもの身長があり、爬虫類みたいな頭をもち、腕は丸太のように太い。
その手には巨木をも簡単に切断出来そうな鋭い爪がはえそろっている。
その手が次に狙いを定めているのは羽希だ。羽希はスッカリ腰が抜けていて地面にペタンと座り込んでいる。
無防備な妹にその怪物は容赦ためらいなく腕を振り上げていた。
「羽希! 逃げろ!!」
羽希にはまったく聞こえていないみたいだ。
ヤバイ!
逃げろ。逃げろ! 逃げてくれ!!
倫護は走った。腕が折れていたにもかかわらず今までにないくらい疾く。
「だぁああああああ!!」
がむしゃらになって体を怪物と妹の間に入れて腕を前に突き出した。
俺の腕ではあの丸太のように太い腕にはかなわないがその時はそうするのが正しいと思えた。
それに応えるように倫護の腕が眼の色と同じ紫の光る装飾の付いた“鎧”に変化した。
怪物は少し不思議なように見ていたが、すぐに第二撃を放ってきた。簡単だった。
第二撃を放った怪物の腕を簡単に弾きかえした。
腕を弾かれた怪物は勢い余って後方え吹っ飛び倒れた。
倫護の頭は自分でも驚くくらい落ち着いていた。
「羽希。俺がいいっていうまで目ぇ閉じてろ」
倫護は妹が首を縦に大きく振っておまけに耳まで閉じたのを確認すると倫護は再び二人に向けて咆哮している怪物へと意識を集中させた。
怪物は再び倫護に向けて拳を振り上げた。
それに合わせて倫護も拳を撃つ。
ガキンッ!!
と金属音が辺りに響く。
「はっ! 軽いぜ! デカぶつ!!」
怪物の拳は倫護の体と同じくらいあった
両腕の鎧の紫の装飾我一段と光りそれに共鳴して鎧の力が上がっていく。
倫護は怪物を軽々ぶっ飛ばした。