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プロローグ
「うわぁぁぁ! ばっ化け物!!」
中年くらいの男はしりもちをつき後退りして“化け物”から逃げようと躍起になっていた。
起き上がり走っては見るものの化け物との距離も開いているのか詰まって来てるのか解らない。
そのうえ辺りは手を伸ばせば闇をもつかめそうなくらい真っ暗だ。
「“化け物”…か、お前もワタシのことをそう呼ぶのだな…」
化け物はやや切なそうな顔をしたが男がそれに気付くことはない。化け物と呼ばれるのもわかる。顔つきは人間の凛とした女性のようだが胸がない。時折訳の解らない言語を口にしている。
人間との決定的な違いは背中には翼を持ち、脛から下は鳥類と獣が交ざりあったような足をしている。
そして威嚇するようにつりあがった目の瞳はたてに割れていることだ。化け物と呼ばれた者はスッと手を前に出し先ほどの切ない声とは別に涼やかにこう言った。
「汝、願い、我を呼んだ。故に我は連れていこう…」