48話『遊びの約束』
そんな週のスタートを切ってしばらく過ぎて水曜日。
季節は十二月に差していた。本当にあっという間に流れていく日々。改めて人間の残りの人生の短さを感じる。
「最近、どう?」
「最近、とは?」
「だから、体調面、ほら最近ぐっと寒くなったじゃない」
「インフルとか流行ってるらしいな。けど俺は今のところ不調は無い。あ、嘘。この前熱出したんだった」
「はぁ? 大丈夫だったの?」
「あぁ、大丈夫みつ――」
思わず口走ってしまいそうになった。
「いま、なんて?」
恋人の前で別の女の名前を口にしたときのような反応をされ、俺は瞬きの回数を増やす。
「みー、みー、そう、蜜、蜂蜜食べたらだいぶ良くなったんだ」
「蜂蜜? ……そう」
まだ腑に落ちない、そんな表情だがどうやら引いてくれた。
「ねぇ、土曜日って空いてる? ちょっとさ、話したいことがあるんだけど」
「土曜日か……」
「なに? バイト?」
「いや、バイトは日曜」
「じゃぁなに?」
「……なんだよ。そんな怖い顔して」
「してない」
「してるって」
「そんなの今どうでも良いでしょ」
「まぁ、それもそうか。土曜な、空いてる」
「そ、じゃ駅前集合ね」
「時間は?」
「十時」
莉緒にしては随分と早い約束だ。きっと真面目な話なのだろう……アレか。いや、違うな。
莉緒に限って……告白なんて。と思うほど俺の心に純粋な少年は宿っている。
それからバイトでは神田千蜜と叱られ、家に帰れば三月がいやしてくれて、学校に行けば莉緒と切磋琢磨。




