46話『クリスマスの予定』
「そういえばさ、クリスマス席の予約つけといたから」
「は? 予約? ファミレスで? なにそれ?」
「まぁ、店長も良いって言ってくれたし。いいんじゃない?」
「というか気、早くない? まだ一ヶ月あるんだけど」
「そんなん意外と過ぐだろ。でさ、話しは全く変わるけど……女子ってさ、クリスマスにどんなもの貰ったら喜ぶ?」
俺のもやもやはこの言葉だったのかもしれないと、言ってから思う。
まぁ、他ならぬ三月に何かプレゼントでもしようかと、俺は考えていた。そもそもそんな時期まで俺の家に居候しているか知らないけれど。
居場所を提供している身だけど、ご飯作ってくれたり、話し相手になってくれたり、目の保養をしてくれたりといろいろとお世話になっている。そのお礼の気持ち的なもので、クリスマスプレゼント。とはいってもその日俺は朝から夜九時ごろまで家を空けることになる。一層の事三月と莉緒を合わせて莉緒の友達にもでもなってもらおうか。
莉緒はしばらく眉根を寄せて見つめてきた。
「ねぇ、その女子って誰? もしかして、私?」
「もしかして欲しかった?」
「……違うの?」
なんだか悲し気な顔を向けられた。これはやはり、欲しかったのだろうか。あくまで友達としか見られていない、ということにショックを受けたのだろうか。俺は取り繕う言葉を探す。
「い、いや、違くない。莉緒も欲しいものがあればなんでも言ってくれ」
「……指輪」
「ん?」
「だから……指輪。女の子が喜ぶのは指輪だよ」
莉緒は鼻の通らない声でそういう。それほどショックだったのか。俺の心はなんだか抉られたような気持だった。
「指輪?」
「逆に、それ以外貰ってもこの世の女子は誰一人喜ばない」
「マジで?」
「なんで私が嘘言わなきゃいけないの。バカみたい」
「じゃ、指輪だな……でも、なんか照れるかも」
「バカ言ってんじゃないって。ほら、もう授業始まるから行くよ」
「そうだな」
指輪……高そうだなぁ、もう少しバイト頑張るか。
俺は休み時間に店長に電話をかけ、日曜日にバイトを追加した。




