41話『店長』
「じゃ」
「また来週」
ホームドアが閉じ、ドアが閉じ、ひととき見合って電車が動き出す。
「来月のシフト、クリスマス両方入れます」
「今年も? 悪いねぇ、そだ、終わったらいっしょにどう?」
「だから、せめて高校を卒業したらにして下さい、俺以外にやってたらそのうち訴えられますからね?」
「結婚する前に刑務所かーそれだけは勘弁だなぁ」
「というか彼女すらいないじゃないですか」
「……」
「……」
「…………」
「……何ですか!」
「目覚めさせて良い夢と、悪い夢があるんだよ」
「で、夢から覚めました?」
「休みの日なのに出勤させられた気分だよ」
そんな雑談を交わし、時間ぴったりで勤怠。
「いらっしゃいませー」
すでに長蛇の列が出来ていた。空いているのに。ソレはきっとこの新入りのこの手際の悪さ故。レジとオーダーを任されるなんて、俺だったら当日にやめているに違いない。
「えっと、神田さん? 休憩入って」
「あ、はい、お疲れ様です」
声が小さい、人見知りっぽいたどたどしい態度のくせしてその見た目は軽薄そうだった。明るい茶髪は肩口で揃えられ、発色のいい唇と、軽めのメイク。背はそう高くはない、すらっとスカートから伸びた形のいい足は思わず俺の目をひいた。どこかで見たことある顔だった。
神田さんがバックへ戻ったのを確認して引き継ぐ。
それから五時から入って九時。
「店長、俺しばらく八時以降シフト入れないので」
「あ、了解いぃ――えッ! 何で急に!」
「何でって、ちょっとほら、俺ももう高三じゃないですか、受験とかそう言う準備があって」
「んー、それなら止めることは出来ないなぁ、もし彼女絡みだったらどうしようかと思ったけど。まぁ了解。お疲れ――あーそうだ、新しく入った彼女、えっと神田さんだ、可愛いからって手、出しちゃだめだからね~」
「言っておきますけど、店長が手を出したらこの店、僕が引き継いでもいいですか?」
面倒くさそうに俺はそう返し、おつかれさまですと一言言う。
一応食材はあるので何処にも寄らず帰宅。
スマホを開いてメールアプリを立ち上げる。友達に登録されているのは莉緒だけ。両親のすらないとは……。三月はスマホとかっもっていないのか、持っていたら連絡先交換くらいはしたい。不意に俺の指は写真アプリに伸びた、特に意味は無いけれど。俺がこれを開くときは大体シフトを確認するときだけ。実際その写真以外何も入っていない。
「ただいまー……あれ?」
「修哉さん、おかえりなさい。お疲れ様です……あの、そろそろかと思って、ご飯作ったんですけど……迷惑でしたか?」
この香りは多分鶏ガラ、中華な香りは炒飯だった。冷蔵庫の中にあったご飯のあまりを有効活用。
この日は風呂の前に晩飯。
「うっま!」
「本当ですか? それは嬉しいです」
そうニコッと笑う三月はやはり可愛かった。恋人がこんな良い子だったら……それは無理か、俺の手に余ってしまう。
ほどよい塩加減は疲れた身体が求めるモノだった。




