19話『あまり似ていない姉妹』
ある日の休み時間のひと時。
「修哉って兄とか弟とかいんの?」
何で妹とか姉じゃないんだよ、と思いながら俺は言う。
「居ない。生粋の一人っ子、両親自慢の子だなー」
自慢の子だったら独りで、親元から離れて暮らすことを許してくれないだろう。
「莉緒は? 兄妹とかいるの?」
「私は姉が居るけど……けどあまり面識は無い、今年で確か二十五だったと思う。三月は妹が居たっけ?」
「うん、今中学三年生、来年高校でーね、今猛勉強中なんだって。もうそんなになるんだなぁ……」
三月は昔のアルバムを見る様に微笑んだ。
そんな様子を俺は微笑ましく思う。
「へー、そっかぁ、良いなぁ兄妹。『お兄ちゃん』とか呼ばれてみたかった――」
「私一度も『お姉ちゃん』って言ったことない」
「私は昔は『お姉ちゃん』って呼ばれてたけど……いまはどうかなぁ」
莉緒は首をぶんぶんと右左に振って全力否定。思わず悲しくなった。そんな様子を見て莉緒はからかうように言う。
「なんなら私が『お兄ちゃん』とか呼んでやろっかぁ?」
「やめてくれ、死ぬ。社会的に死ぬ」
「だからだろ? 『お兄ちゃん』」
殺される、社会的に殺される! けれど、この終わりも、悪くない……。
「――――あッ!」
「キモいんだっていちいち!」
演技と素の区別がつかないとは、俺の演技も上達したモノだ。
「で、三月の妹さんは可愛いの?」
未開封のペットボトルが俺の頭を強打した。ペットボトルがベコという音にまぎれて、かわいいよ、という三月の優しい言葉が届いた。きっと、三月に似ているのだろう……。




