12話『真夏』
玄関に置かれた線香花火の山はこの先一生無くならないだろう、物騒な火薬庫のようで傍に置いておきたくない代物だった。思い出の産物と言えば聞こえはいいが……実態はただ生命を脅かす危険物に他ならない。思い出に殺されたらそれはいったい。
夏休みはすでに半分を過ぎた八月中旬。今日含めず十日ほどで夏休みは早くも終わりを迎える。
そろそろ一日いちにちという日がかけがえないほど大切な時間になる、それに三月に返事を告げなくてはいけない日はもう目の前だった。
今日という日をどう過ごそうかと俺の家では話し合いが行われていた。
「あと何日だっけ」
「今日含めて十一日。因みに花火大会は明後日」
「あー、じゃぁ花火大会は決定。他は?」
「三月は何かしたいこと、あるか?」
「うーん、パッと思いつくものは……これと言ってないかな」
紐につるされたネズミの人形がミカンの猛攻をすべて躱す。その動きは磨き上げられたまさしく歴戦を生き抜いたネズミだ。下剋上が今、目の前に繰り広げられていた。そう思ったすぐ後にミカンの手に抑えられ慈悲など無くまもなく捕食された。
「だよなぁ、そうだ、別荘とか?」
「私に言ってんの? まぁあるけど、いま両親ともそっちだから、残念ね」
「あるんだ……ぜひ一度拝見したいね」
俺は狭いちゃぶ台に突っ伏して、莉緒はアイスを食べて、三月はミカンの口からネズミを引っ張りだした。
何とも言えない光景だった。というかこいつら暇かよ。ほかに友達いないのかよ。
「ま、好きに過ごせばいいんじゃ? 俺はいつも暇だし、突然の思い付きにも付き合ってやるよ」
「そりゃ頼もしい事で、じゃぁアイスのお代わりを」
「……ソレ最後」
「じゃぁ、買ってきてよ? お金渡すから」
「マジかよ! 親のクレジット?」
「そのノリダルいから、現金に決まってるでしょ」
「まぁいいや、分かったよ買ってきてやるとしますか」
俺は頬を剥がしてよっこいしょと立ち上がる。
「三月もアイスいるか?」
「私は、大丈夫です」
「了解、莉緒はそれと同じので?」
「うん、よろしく」
莉緒の手から小銭を受け取り、俺は灼熱の環境に身を投じた。




