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3. 辺境伯は淑女で夜会を楽しむ 【前編】

お久し振りです。

オーキッド様目線で始まります。


女装をして繰り出した彼に

これから何かが起こります。


前後編でお届けします。

 気のせいだろうか。

 最近何だか視線を感じる……ような気がする。






 今日は懇意にしているスタンフォード公爵家の夜会だ。普通の社交であれば当然男装だ。いや、男装と言うより、当たり前の男性の正装で来るはずだが。


「ねえ、オーキッド。やっぱりその格好は目立ちますよ。幾らシリウス殿が何も言わなくても、悪目立ちするのは必至です」


 馬車の中。正面にはルイが呆れた口調で腕組みをしている。

 近頃のルイは可愛くない。

 今まで、自分とカーン、屋敷の者としか関わらなかったのがリリちゃんとの和解の後、様々な人間と交流することで一般常識を思い出したようだった。


「そう? 今日はアレッド王太子もいらっしゃるし、久し振りに仕事の(しがらみ)のないお呼ばれだからね! これは楽しまないと勿体ないじゃない?」


 濃い薔薇色のドレスは、最近お気に入りのマーメイドラインで、大人っぽく高貴な感じがする。


「たまにはこういう格好もしないと、誰かみたいに改心したとか? まともになったとか? 言われるじゃないか。プライベートはきっちり楽しまないとね?」


 ルイはじとんとした瞳で、貴方は公私混同しがちでしょう? などと失敬な事を言ったけどね。

 とにかく、今夜の視線は私に集中する事間違いないね!







「いらっしゃいませ! オーキッド様。そしてルシェール様」


 スタンフォード公爵家に着くと、若奥様であるリリちゃんが迎えてくれた。


「こんばんわ。リリちゃんも久し振りだね? お招き頂き光栄だね」


 久し振りに見たリリちゃんは、只今絶賛公爵夫人教育実践中の身。結婚式までまだ半年以上あるものの婚家と実家を行ったり来たりしているようだ。


「リリ様。お招き頂きありがとうございます。今日もとてもお美しいですね」


 ルイがリリちゃんの手を取って挨拶をする。彼女の手の甲に軽くキスをする姿は、さすが隣国の王子を父に持つ王族だ。王族に現れる銀髪とアクアマリンの瞳がいつにも増して煌めいている。


「うーん。良いねぇ! やっぱり君達結婚しない!? 本当にお似合いだよ!? って、イタタっ!」


 後ろから思いきり耳を引っ張られた。ちょっと! ピアスを引っ張らないで‼ マジで痛いから‼


「パルマン伯。シリウスが怒るのも無理ないぞ? 会う度そんな事を言っていると、そのうち刺されるかもしれない」


 涼やかな声に振り返ると、私の耳を引っ張った張本人のシリウス殿と、リリちゃんの兄上のクラウス殿。彼等を従えているアレッド王太子だった。金髪の華やかな宮廷近衛騎士は、無表情を装っているが、じっと私を睨みつけている。


 子供だねぇ。最愛のリリちゃんを少し、すこーし揶揄(からか)われた位で。氷の騎士が聞いて呆れる位の感情激熱ヤキモチ焼きなのに。


「ところで、貴方はまたそんな恰好で……最近女装はしないから心を入れ替えたのかと思ってたのに……」


 王太子が一歩下がって、私の姿を上から下まで見直した。


「でも、とってもお似合いですわよ? やっぱりオーキッド様には濃い色が似あいますわ。この色を着こなせるなんて、憧れてしまいます♡」


 リリちゃんが私を見上げてホウッと溜息を漏らしながら言ってくれた。


「でしょう? このドレスはお気に入りのデザイナーがいるメゾンの新作なんだ。因みにタイトルはスカーレットローズ! そのままだけどね?」


 リリちゃんとはその後の女子トークで盛り上がろうとしたけど、彼女はホスト側だから余り独り占めは出来ない。しかし、折角のドレスをもっと自慢したい。


 話が出来るご婦人方がいるかしら? ホールの中を見渡せば……


「いた」



 社交界の情報通で、人柄にも定評のあるミラノ公爵夫人が令嬢とご一緒にいる。


 ン? 何だ? 今ご令嬢と目が合ったような気がしたけど。もしかしてこちらを見ていた? それならチャンスだね。その傍には、アレッド王太子の姉上のアルテイシア様も近づいているじゃないか。



「ルイ?」


 ルイがいない。学術都市の件でアレッド王太子に拉致されたようだ。少し離れたテーブルを囲み話を始めている。




「ちっ。しょうがない。他にエスコート役は……」


 アレッド王太子の脇にいる()と目が合った。一瞬逸らされたけどね。




「クラウス殿」


 扇で口元を隠して、彼に近づくとガシッと彼の肩を掴んだ。逃がさないよ!


「クラウス殿、君はこんな所にいたんじゃ、いつまで経っても女性と出会えないよ!! さあ、私と共にズイッと行こうじゃないか」


 そう言って、クラウス殿を引きずる様にエスコート役に仕立て、ミラノ公爵夫人達のグループに近づいた。




「お久し振りですね。皆様?」


 私は、満面の笑顔を浮かべて彼女達に挨拶をした。

ブックマーク、誤字脱字報告ありがとうございます。

感想も頂けると嬉しいです。


このお話は、別話の完結済みの「妖精姫である私の婚約者……」

※タイトル長いので略。の番外編を纏める感じでいます。

時系列も関係無しで投稿していきます。


楽しんで頂けたら嬉しいです。

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