第一章 魔人族の国 六
目の前で変化した天使は、ご丁寧にお辞儀をした。
黒くなった片翼の天使達をこちらを濁った眼で捉えている。
「半ば強制的に君達を私の配下にしたことを悪く思っている」
例えあの魔族達に襲われようとした瞬間に、助けたとしてもアミーラが救える自信が皆無だった。ゴルドから聞く話では、勝てるらしいのだが今の自分ではどう立ち回るにしても今の時点で敵を作ってしまうことに嫌悪感を感じたからである。
だが、見捨てることはしなかった。なぜなら、この天使達は使えると直感で感じえたが故であった。
「「私達を助けて頂き、ありがとうございました」」
黒く染まった翼をひらひらと揺らしながら二人の天使は頭を下げる。
「突然だが、君らに名前はあるのか?」
「私はルシィでございます」
「私はルィでございます」
赤目をした天使がルィで白花色の目をした天使がルシィである。
そっと天使二人対して、こちらを見る眼を見返した。
「ルシィとルィは復讐したいやつらってさっきの魔族達以外にはいるのか?」
「はい、います」
「なら、その者は天使達で間違いないな?」
天使二人は復讐したい相手を述べてはいなかったが、さすがご主人様と言った感じに顔を笑わせる。
しかし、予想と反する回答が帰ってきた。
「復讐するのはやめとけ」
「ちょっぴり強気になったルシィとルィ程度だったら勝てない」
そう言われた天使二人はガックリとした感じに項垂れるが、アミーラはニヤリと不気味に笑うと…。
「今はな。今は俺に手を貸せ。その代わり、君らにもその恩恵を与えてやる。だから今は付いて来い」
すると、天使達は薄気味悪い笑みをしながらアミーラの後ろを追いかけるのであった。
自宅に戻ると早速ではあるが、ゴルドに夕食の準備をしてもらい自分は最初にいた部屋へルシィとルィを連れて戻ってきた。
「悪いが、ルシィとルィの変化した部分について教えて欲しい」
この世界においてステータスといった目に見える力は鑑定屋しか見ることが出来なくその鑑定屋も少ないことで知る機会はほぼない。
だが、ステータスとは別にスキルと言う項目は知ることが出来る。なぜなら、その項目は自分の行動次第ではあるが攻撃する前、している最中、攻撃しを終わった後に頭に過ぎるからである。
また、生まれた瞬間に自分が何者であるかを頭で認識しているらしく本来は覚えているという。自分がイレギュラーすぎるだけなのである。
名前、ルシィ
身分階級、一介天使→総裁の配下
年齢、一三〇歳
種族、天使→堕天使
ルィも同じ感じだった。
どちらも身分と種族が変化していたが、予想通りの展開になったので欠伸をしつつ、スキルについて聞いてみる。
「今使えそうなスキルは何個くらいあるんだ?」
「大体ですが、五つほどかなと思います」
「私達、天使達は良く二人で行動することが多いので、スキルが発現した時も二人同時で使うことで発動するスキルなのです。」
「ほぅ、そのスキルって今使えるの?」
「今は、使えませんね。」
そうか、と言うと丁度ゴルドが夕食を完成させたようで呼びに来てくれた。
「夕食が出来ました、アミーラ様」
「おぅ、今行く。」
そしてルシィとルィを連れて夕食を食べに部屋から出るのであった。
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