第一章 魔人族の国 二
アミーラは、深く考え込む。
魔人族のゴルドから自分の立場がどこなのかを聞いた。世間一般的に言えば、魔族はただの魔族。身分階級を持つのは基本的に魔人族というのが通例であった。
名前、アミーラ・ルンド
身分階級「総裁」
年齢、七歳
種族、ダークナイト
低い階級から二番目の地位にいる『総裁』という身分には正直驚かされたが、下にいる配下はゴルド除き他はいない状態なのだそうだ。
ゴルドは、路地に捨てられていたアミーラを拾ったのだと言う。何故、拾ったんだと聞くと赤ん坊のはずなのに凄く恨んだ顔をしていたから拾ったと言っていた。
「ところで、ゴルドは何故自分の配下なんだ?」
考えてみればおかしな話であった。
自分は、拾われた身なのに身分が総裁なのであり、この状況には疑問だらけだった。
「アミーラ様は、忘れられているかとお思いですが、五歳の時に行われた選別試験に合格なされたので私があなたをご主人とお迎えさせていただきました」
「んっ、五歳の時に行われた選別試験ってなんだ?」
「この国にあるコロシアムに行われた命を懸けた試験でありまして……まぁ、端的に言うと殺し合いでございます。」
「……えっ、まじで」
「まじでございます」
これは凄いことを聞いた。もしかして自分ってとっても強いんじゃ……。
「余談にはなりますが、コロシアムでのアミーラ様の戦いっぷりが他の五歳児より異質でございました。選別試験の内容として周りにいる一〇〇〇人の魔族や魔人族の内、七二人になるまで殺しあうというものでしたがアミーラ様は相手に近づいては相手の耳元で囁くと相手は自害するというものでした。」
(何それ、怖い……)
「相手は聞くとやばい魔術か何かかと勝手に考えておられまして、遠距離攻撃も仕掛けていました。」
「……その後は、どうなったんだ」
「攻撃がアミーラ様に直撃した瞬間に、アミーラ様の体が燃え上がり攻撃した者へ火の粉を襲いかかっておられました。」
「……」
怖!?何それ怖すぎ。
どんな化け物なんだ自分は……。
「それはそれはカッコいいアミーラ様を目の前で見て私は配下になることを決意しました」
「そ、そうなんだ……」
熱く熱弁されることに若干引き気味になりながら、取り合えず落ち着くことにした。
「悪いんだけど、ゴルド飲み物もらえる?」
「畏まりました、アミーラ様」
部屋から出ていくゴルドを見つつ、薄暗い部屋から出ると窓から覗く二つの太陽、薄っすらとしか明るくない部屋の中でも魔人族で賑わう国はより一層深淵に近いように暗がりが広がっていた。
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