第一章 魔人族の国 一
目が覚めると薄っすらと光が自分を照らす。
(ここは一体……)
周りの風景が次第に鮮明になっていく。薄暗い天井には小さな明かりが一つあり、石作りのごつごつとした壁と氷のように詰めたい床。身体が少し寒さで震えるほどに圧迫感と窮屈さをあった。
ごつごつとした壁に手をかけ、ゆっくりとここがどういった場所なのかを探す。数分ほど探すが出口は一箇所しかないようで、その出口には髑髏のような紋章が刻まれていた。その髑髏は、眼の光が薄い青色のような輝きを放っていた。
(危なさそうな出口だな)
とても怖い印象しか持たない髑髏を前にどうすればここから抜け出すことが出来るのかを考えていると突然その扉が開き始めた。
ゆっくりと開く扉を眺めていると、扉の奥から一人の魔人族が姿を現した。
「やっと起きましたか、アミーラ様」
ほっそりとした見た目であるものの中々に鍛えられている身体と顔には禍々しい爪跡により片目を閉じた執事姿の老人がいた。この老人が魔人族であると確信したのは額の部分からしっかりとした角が一本突き出ていたからであった。
「……」
返事をしないでいると魔人族の老人は、目を細めこちらを睨み小さい声で「なるほど」と頷くとこちらへ近づきこう言った。
「ふむ、君は誰かね?」
「えっ?」
驚いた瞬間、自分は胸倉を掴まれ床に叩き付けられた。
「ぐはっ」
肺にある空気を全て吐き出し、涙ぐむ。そんなことは気にした様子もなく、魔人族の老人は語り始める。
「君を知る私としては、その反応は私が知りうる中で知らないものだ。それに、君の目には生き生きとした視線を私に向けたのも初めての私としては経験だ」
そう言い放つ魔人族の老人は、じっとこちらを睨み続ける。
「もう一度聞こう、君は誰かね?」
「分からない……分からないんだ……」
「ほう、それで言い逃れ出来ると思っているのか」
自分でも理解が追いついていない状況で、記憶を思い出そうとすると靄がかかったかのような感覚になるため、苦し紛れにもこういうしかなかった。
じっと睨む魔人族は、凄まじい殺気をぶつけるが途中でそれをしまい込み、まぁいいかと立ち上がった。
「失礼しました。アミーラ様」
そう頭を下げる魔人族の老人は自分の所在や状況などを説明してくれた。
まず、この場所は魔人族の国『デビルノア』と言うらしい。この国は、魔族が住み着く領域としては、大きいほうの分類なのだそうだ。この国と周辺の町が取り入れている制度があるらしく、それは階級制度であった。
階級制度は位は五つの階級として一番低いものから暗黒騎士、総裁、伯爵、公爵、侯爵、君主であり、この中で一番高いのは、君主である。
この国を支えているのが三人の君主であり魔人達なのだ。
さらにその上には魔王、魔神といったものが存在するらしいがほとんどの魔族は会うことや見ることがないらしいので曖昧になっていた。
「どうですかな? アミーラ様」
一通り、魔人族から話を聞くと簡単に解釈し、とりあえずは分かった有無を伝える。
「あっそういえば、あなたの名前は……?」
魔人族の老人は、深く礼をするとこう言った。
「私は、ゴルドと申します。以後お見知りおきを…」
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