その4「映画」
◇妹、兄の部屋へやってくる
妹「兄さん兄さん」
兄「ん?」
妹「突然ですが、夏といえば!」
兄「夏? うーん、海かな」
妹「ハズレ!」
兄「ハズレ?!」
妹「正解はこれです」
兄「DVD?」
妹「帰り道に借りてきたの。一緒に観ようじゃないか」
兄「別にいいけど……怖いやつじゃないだろうな」
妹「夏に映画といえばホラーでしょ」
兄「じゃあパス」
妹「えー、兄さんホラー映画苦手だったっけ?」
兄「もう二度と観たくないってくらい嫌いだ」
妹「お子様だなー」
兄「いいから、俺のことは放っておいてくれ」
妹「兄さんのチキン! もう一人で観るからいいよーだ」
兄「ああ、だけどもう夜遅いんだし観るんなら明日の方がいいぞ」
妹「チキンの兄さんの言うことは聴きませんよー」
兄「寝れなくなっても知らないぞ」
◇妹、リビングのテレビの前へ
妹「まったく、せっかく二人で観ようと思って借りてきてあげたのに。兄さんの臆病ぶりにはガッカリだよ」
妹「とはいえ、たしかにこのタイトルをこの時間に一人で観るのはちょっと……」
妹「いや、私ももう大人なんだし、やっぱりホラー映画は夜に観てこそだよね、よし……!」
◇深夜、兄の部屋
兄「夜中にふと目を覚ましたら目の前には妹の髪の毛が」
妹「……」
兄「手をつないで寝てやろうか?」
妹「いらない」
兄「そっか」
妹「……」
兄「……」
妹「……」
兄「……」
妹「……やっぱり手貸して」
兄「ふふ、たまにはホラー映画も良いかもな」