その25「兄妹③」
◇兄妹、お墓にて
兄「ずっと、ここにいたのか」
妹「うん」
兄「遅くなってごめんな」
妹「なんで謝るのよ、むしろ怒るんじゃないの?」
兄「そうだったか」
妹「ふふ、ねえ、心配してくれた?」
兄「そりゃあもう、数年分くらいかね。あんなメモ残していきやがって」
妹「そう、だよね。うん、ごめん」
兄「隣、座っていいか」
妹「うん」
兄「ここは冷えるだろ。これ着てろ」
妹「兄さんだって寒いでしょ」
兄「俺はここまで走ってきたから」
妹「今は良くても冷えたら風邪ひくよ」
兄「まったく、どの口が言うのやら」
妹「ふふ、まったくだね」
◇
兄「おいおい、ついに雪が降ってきちゃったよ」
妹「あ、本当だ」
兄「あーあ、なんだか大粒だな」
妹「これはけっこう積もるかもね」
兄「明日は一緒に雪かきだな」
妹「病人を働かせる気ぃ?」
兄「明日にはもう治ってるさ」
妹「ふふ、だったら良かったんだけど。もうずっと治んないよ」
兄「なんだい、今回はやけに弱気だな」
妹「メモ、読んだでしょ。私、ママと同じ病気だもん」
兄「それを決めるのはお医者さんだろう」
妹「兄さんは私の言うことが信じられないの…?」
兄「いやいや、それは卑怯だろう」
妹「ふふ、ごめんごめん。でも……ねえ兄さん、私ね、もういいんだ」
兄「なにが」
妹「私ね、病気が治んなくてもいいの」
兄「……」
妹「私ね、じつは注射が嫌いなの」
妹「手術だってやりたくないし、苦いばっかりの薬も飲みたくない」
妹「できればずっと兄さんに看病してもらいたい」
妹「でも兄さんの負担にもなりたくない」
妹「いろいろ考えてグシャグシャになって」
妹「……ママのところに来たの」
妹「このまま、どこか遠くの世界へ連れて行ってくれないかな」
兄「……お前はわがままだな」
妹「ふふ、……だって私、妹だもん」
◇
妹「ねえ兄さん、私ね、夢を見たの」
妹「大きなロボットに乗ってね、宇宙でいろんな敵と戦うの」
兄「なんだ、お前そういうのが好きだったのか」
妹「別にそんなわけじゃないんだけど、でもとっても楽しかったな」
兄「…そうか」
妹「ねえ兄さん、今は曇っているけど、ここから見える空は本当に綺麗なんだよ」
兄「そうだな……」
妹「ほら、ねえ見て。まるで星が降ってきてるみたい。…雪の星、手を伸ばせば簡単に手に取れるね」
兄「ああ、本当だ…」
妹「こんなにいっぱいあるんだもん、ちょっとくらい貰って帰っても、いい、よね…?」
兄「ああ、ああ…」
妹「ねえ兄さん、私、今年のクリスマスにはこの星を、クリスマスツリーの…てっぺんに飾りたいな」
妹「そしたら…きっと素敵なパーティになる、よね…?」
兄「もちろんだよ。今年は皆で祝おうな、約束だぞ」
妹「ふふ、兄さん、手なんて握って、どうしたの…?」
兄「暖かいだろ、嫌か?」
妹「……ううん、あったかい」
妹「……ああ、なんだか眠たくなってきちゃった」
兄「……そっか。いいよ、俺がずっとそばにいるから、安心して寝な」
妹「ふふ、ねえ兄さん」
兄「どうした…?」
妹「……あ」
妹「ありがと、ね……」




