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その17「合宿②」


◇兄、海辺のバス停にて



兄「次のバスは……あと一時間半後か」


兄「うーん」


兄「どうしよ」


ミニ妹「兄さん兄さん」


兄「どうしたんだ?」


ミニ妹「あそこ、海の家がある」


兄「おお、本当だ」


ミニ妹「焼きそばとフランクフルト、ビーフストロガノフって書いてあるよ」


兄「ビーフ…なんて言った?」


ミニ妹「いいなー行きたいなー」


兄「なんだ、お腹空いたのか?」


ミニ妹「うん」


兄「じゃあバスが来るまで腹ごしらえとしようか」


ミニ妹「私海の家のビーフストロガノフ食べたい!」


兄「いやー、もう十月だしきっと閉まっているよ」


ミニ妹「あんなにたくさんあるんだから一つくらい空いてるんじゃない?」


兄「……じゃあ一応見に行ってみるか?」


ミニ妹「うん!」





◇兄とミニ妹、海の家にて



兄「まさかまだ営業している海の家があるなんて」


ミニ妹「ほら、言ったとおりでしょ」


店員「ご注文はお決まりですか?」


兄「ああ、はい、じゃあビーフストロガノフ一つお願いします」


店員「はい、ビーフストロガノフ一つお願いしまーす!」


ミニ妹「あれ、兄さんは何も食べないの?」


兄「いや一つのビーフストロガノフを二人で分けるんだよ」


ミニ妹「なんでー!!」


兄「だってお前、全長5cmくらいしかないじゃん……」


ミニ妹「ぐぬぬ……」


兄「それにしてもあの店員さん、お前を見ても全然驚いていなかったな」


ミニ妹「それはたぶん、兄さんが女の子のお人形と一緒に旅行をしている悲しい人間なんだって思ったんじゃない?」


兄「俺そんなふうに周りに見られているの!?」


店員「お待たせしましたー! ビーフストロガノフ一つ」


兄「早っ!」


店員「―――と、おまけのミニミニビーフストロガノフをどうぞ!」


ミニ妹「やったー!」


店員「お嬢ちゃん、多かったら残してもいいからね」


ミニ妹「はーい! 海の家の人って優しいんだねー」


兄「そ、そうだな」


兄「……あの」


店員「はい、追加の注文ですか?」


兄「いや、そうじゃなくて。一つ聞いてもいいですか」


店員「いいですよ」


兄「こんな親指姫みたいな小さい女の子を見て、驚かないんですか?」


店員「ああ、そういうことですか」


ミニ妹「ビーフストロガノフおいし~!」


店員「海の家ですからね、そりゃあいろんなお客さんが来るんですよ」


兄「他にもこんな感じのお客が来るんですか?!」


店員「あはは! 夏場はたくさん来ますね! 今時珍しくないですよ、例えばこの前なんて―――」







兄「えー…、人魚とか流れ着くんですかココ」


店員「毎年一匹から二匹くらい見ますねー。やっぱ美人が多いですよー!」


兄「へぇー」


店員「ほら、そこに飾ってある写真。人魚と私が肩組んでますでしょ?」


兄「ほえー」


店員「ちなみに写真を撮ってくれたのは幽霊船の船長さんでした」


兄「ははー」


ミニ妹「兄さん兄さん、見てあれ、海賊旗!」


兄「はー…」


店員「あ、ところで」


店員「今日は海へ遊びに来られたんですか?」


ミニ妹「はい!」


兄「いやいや、違います」


店員「はは、ですよね。なんか別に目的があるって感じでしたし」


兄「はい、実はもう一人の妹を追いかけている途中でして」


ミニ妹「私は海で遊ぶのが目的だったんだけど」


店員「今から海へ入るのはおすすめしないですね。ほら、雨が降ってきました」


兄「あ、本当だ」


ミニ妹「えー…」


店員「雨が止むまでどうぞゆっくりしていってください。どうせ他に客はいませんから」


兄「ありがとうございます。でも、もうそろそろバスが来る時間なので」


店員「そうですか。じゃあこの傘を持っていってください」


兄「いいんですか?」


店員「ええ。これ他の客の忘れ物でして。もうだいぶ前から置きっぱなしになっている物なので、あなたに差し上げますよ」


兄「それじゃあありがたく頂きます! ……ちなみにどんな方の忘れ物なんですか?」


店員「はい、たしかカッパです」


兄「カッパって海に遊びに来るの!?」





◇夜、兄妹、居間にて



妹「はー…まったく」


兄「いや本当なんだって。だよな?」


ミニ妹「うんうん」


妹「兄さん、真面目に聞いてね? この世に人魚やカッパなんて架空の生き物はいないんだよ?」


兄「だってほら、ここにカッパの傘が」


妹「もう目を覚まして! 兄さんは変な人に騙されただけなのよ!」


兄「俺だってそう思ってたけどさ。現に妹が分裂するなんて不可思議が起きているわけだし…」


妹「それとこれとは話が別。これは生理現象なの」


ミニ妹「うんうん」


兄「まったく、これだから女ってのはわからないんだ」


妹「それと」


妹「勝手について来ようとしたことについてはまだ話の途中なんだけど」


兄「ごめんなさい」


ミニ妹「なさい」


妹「もう…。今回は許すけど、これっきりにしてよね」


兄&ミニ妹「はーい」


兄「あ、ところで」


兄「部活の合宿だったんだよな? お前、中学では何部に入っているんだ?」


妹「え? 言ってなかったっけ」


妹「料理研究部だよ。今回は先輩の親が営んでいるお店でビーフストロガノフの研究してたの」





◇妹、自室にて



妹先輩『えー! あの人アンタのお兄さんだったの!?』


妹「はい、そうみたいですね…」


妹先輩『なーんだ、知ってたら二階へ呼びに行ったのに』


妹「呼びに来なくていいですっ!」


妹先輩『なんだか不思議な人だね、なんかものすごく小さい女の子連れてたし』


妹「はは……」


妹「あ、それと、兄さんが持ってたカッパの傘の持ち主ってもしかして」


妹先輩「あ、分かる?」


妹「数学の山田先生!」


妹先輩「せいかーい!」


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