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その12「訪問者」

◇妹、兄の部屋へやってくる



妹「ねぇ兄さん、ちょっと来て」


兄「どうした?」


妹「兄さんに会いたいって人が玄関に来ている」


兄「俺に会いたい?」


妹「若い女だよ」


兄「心当たりないな、誰だろう」


妹「……兄さんの浮気者」


兄「えぇ!?」





◇兄妹、玄関で待つ女を遠巻きに見る



兄「うーん、遠目から見ても誰だか分からないな」


妹「本当に?」


兄「本当だって」


妹「じゃあとっとと追い出そう」


兄「……お前、今日ちょっと機嫌が悪い?」


妹「別に。ほら、お客さんを待たせるのも悪いでしょ。はやく行こ」





◇兄妹、玄関にて


?「わぁ~、すっごい久しぶり! ずいぶん大きくなったんだね!」


兄「ええと、……君もね」


?「そうでしょ? もう会うの何年ぶりくらいになるかなー!」


兄「うん、その」


?「私ね、またこの近くに引っ越してきたんだよー!」


兄「あ、そうなんだね。それはその」


妹「もう、兄さん! はっきり言ってよ!」


兄「うむ……」


妹「もう焦れったい! 不甲斐ない兄さんの代わりに私が言ってあげます。兄さんはあなたのことなんてこれっぽっちも覚えてないそうです! わかったらさっさと帰ってください」


?「に、兄さん……? ねぇこれってどういうことなの?」


兄「いや言いにくいんだけど、ごめん、君のこと思い出せないんだ」


?「そんな……ひどいよお兄ちゃん!」


妹「ふふ、残念でしたね、ってちょっと今なんて言いました!?」


兄「お兄ちゃん?……あ、お前、もしかして!」


?「昔私がこの辺りに住んでいた頃はよく一緒に遊んだでしょ? 覚えているよね?」


兄「あぁそうか、お前だったのか!」


?「思い出してくれたんだね!」


妹「あの、盛り上がっているところ悪いんですけど、説明してもらえますか?」


兄「そうだな、お前は知らないよな。こいつは俺が小学生の頃の遊び仲間なんだ」


幼馴染「幼馴染ってやつね。この辺りは歳の近い子が少なかったからいっつも一緒に遊んでいたっけ」


兄「そうそう、お前が急に引っ越しちゃってからは遊び相手がいなくて寂しかったんだぞ」


幼馴染「あのときはお別れも言えなくてごめんね。でもまたここに帰ってこれたし、昔みたいに遊ぼうね、お兄ちゃん!」


妹「……あの」


幼馴染「え?」


妹「そのお兄ちゃんっていうのやめてくれませんか。妹は私なので」


幼馴染「えっと……ねぇお兄ちゃん、この子は誰?」


兄「ああ、ちょっと親が再婚してな、家族が増えたんだ。それからいろいろあって今では二人でこの家に暮らしているんだ」


幼馴染「ふ、二人で?! 」


妹「ふふん」


兄「まあとにかく、お前が戻ってきてくれて良かったよ。立ち話もなんだし、お茶でも出すから居間で待っていてくれ」


幼馴染「わ、わかった」





◇妹と幼馴染、居間にて



妹「……」


幼馴染「……」にっこり


妹「……」


幼馴染「ねぇ妹さん、あなた今歳はいくつなの?」


妹「……14歳ですけどなにか」


幼馴染「やっぱり年下だったんだ! 私は今年で17歳になるわ」


妹「だ、だからなんだって言うんですか!」


幼馴染「これからは私のこと、姉さんって呼んで!」


妹「……はぁ!?」


幼馴染「私は一人っ子でね、ずっと兄弟とか姉妹とか憧れてたの! お兄ちゃんの妹だったら私にとっても妹みたいなもんだもんね」


妹「え、えっと」


幼馴染「14歳ってことは中学二年生だよね! どう? 学校楽しい? もう好きな子とかいるのー?」


妹「ちょ、ちょっと……」





兄「おまたせー」


妹「に、兄さん助けてー!」


兄「うわっ、一体どうしたんだ?」


妹「この人がいじめる」


幼馴染「い、いじめてないよー! ただ妹ちゃんと仲良くなりたかっただけなのー」


兄「そういえばお前、人見知りするんだったな、忘れててごめん」


妹「……この人は私の苦手なタイプ、敵だ」


幼馴染「あれ、けっこう嫌われちゃった?」


兄「なに、最初はそんなもんさ。慣れたらすぐに仲良くできるよ」


妹「……」


幼馴染「あ、それでね、お兄ちゃん! 私考えたんだけど」


兄「ん?」


幼馴染「私もこの家で一緒に暮らそうと思うんだけど、どうかな?」


兄「!」 妹「!」


幼馴染「私、料理とか掃除とか得意だし、まとめて引き受けてあげるよー」


兄「いやいやいや、一緒に住むなんて困るだろ。お前だって自分の家に帰らないと」


幼馴染「大丈夫。私の家、ここの隣だから」


兄「そうなの!?」


幼馴染「だいたい義理の兄妹でも二人だけってのは心配だよ。妹ちゃんは思春期の女の子なんだよ、ちゃんと分かってあげられている?」


兄「それは―――」


妹「余計なお世話ですっ!!」


兄「!」 幼馴染「!」


妹「私たちは二人でもう一年も暮らしてきているんです、だから心配なんていりません! もう帰ってくださいッ!!」





◇しばらくして、兄、妹の部屋へ



兄「あいつはもう帰ったよ。『怒らせちゃってごめんなさい』だってさ」


妹「……」


兄「まったく、あいつもなかなか失礼だよな。俺だって料理や掃除くらいできるっていうのに」


妹「……兄さんはさ、あの人に来てもらった方が良かった?」


兄「え」


妹「兄さんは私のこと、自分のこと、家のこと全部考えているんだもんね。疲れるよね。やっぱり、私との二人暮らしって、つらいこと、だよね」


兄「……」


妹「ごめんね、なんだか勝手に今の生活に慣れちゃってたみたい。自分のことばっかりで、兄さんの大変さとか全然考えてなかった」


兄「……」


妹「やっぱり、あの人に謝ってくる」


兄「ちょっと待った。少し話をしようか」


兄「……俺はな、お前の作った料理が好きなんだ」


妹「え?」


兄「初めて会った日。初めて手料理を食べて、正直驚いた。自分よりも六つも年下の子がこんな美味しい料理を作れるんだって」


妹「兄さん?」


兄「また食べたいと思った。毎日食べたいと思った。だから俺は、お前と二人きりでも暮らしていけるって確信したんだ」


妹「……」


兄「面倒なこともそりゃあるさ。でも、それ以上に楽しいことがいっぱいある。全部お前がいたからだ」


兄「一つ提案がある。もうちょっとだけ二人暮らしでも良いと思わないか?」


妹「……うん」


兄「じゃあ決まり。あいつの提案はきっぱり断る。でも、おとなりさんだからそれなりに仲良くすること。いいかい?」


妹「……わかった、それでいいよ」


兄「よし、じゃあ夕飯を作るとしようか」


妹「その前に、私からも一つ言わせて」


兄「ん?」


妹「あの人とはできるだけ二人で合わないで」


兄「ど、どうして?」


妹「私は人のオーラを見る能力があるの」


兄「まじか、知らなかった」


妹「あの人は兄さんを不幸にしそうなオーラを纏っていた。だからあんまり近づいたらダメ」


兄「気をつけるよ」


妹「兄さんが幸せになるには近い系統のオーラを纏った人のそばにいないといけない。つまり私のそばにいないと幸せになれない」


兄「な、なんかキャラ変わってない……?」


妹「これは本当に信用した人にしか話せないことなの」


兄「そうだったのか」


妹「そして、これは私の二十個ある秘密の一つに過ぎない。兄さんは妹の好感度を上げることでその秘密を知ることが出来るの」


兄「なるほど、そういうシステムなのか。じゃあ俺もなにか一つ、秘密を開示しようかな」


妹「ごくり」


兄「俺の大好物はステーキである!」


妹「もう知ってるし!」


兄「ふふ、さすがは俺の妹だ」

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