二話 ファーストイベント
めちゃくちゃギリギリの投稿になりますが、
一応、日曜です!
はい。
ごめんなさい…
4月2日
俺は昨日、遊ぶことができなかった時島 和樹に再度連絡を取り、今日は空いているということだったので、2人で課題を終わらせるために図書館にいくことにした。
本音を言えば、もちろんのこと遊びたかったのだがお互い、課題を放置するわけにも行かずに熟考の末に図書館で課題を一掃することを決めた。
真面目にやればもちろん1日で終わる代物ではないが、俺には「答え」という神がいるのだ。
「あー、もうこんな時間か。そろそろ出ないとな」
時計を見れば、もう起きてから三時間が過ぎており十時になっていた。
約束の時間まではあと1時間もあり、図書館までは30分と掛からないが、何かあって遅れるのだけは好きではないし、小説の主人公としてはイベントを忘れるなど許されないだろう。
俺はベットに置いてあったリュックサックを手に取り、肩にかけて家を出た。
誰もいない家に「行ってきます」と独り言を零した後、手に持っていた鍵でしっかりと施錠をした。
自転車に乗って、気持ちのいい風を全身に感じながらゆっくりとしたテンポの鼻歌を鳴らしながら走っていく。
元々、サイクリングはかなり好きなので30分という時間すら、とても短く感じる。
しばらくして、白くて大きな市立図書館にたどり着き駐輪場に自転車を停めた。
そして10分ほど経った後に和樹が姿を見せ、少しだけ外で会話をした後、図書館の中にある学習室に足を運んだ。
「にしても慧月先生、課題出し過ぎたろ」
「ほんとだよな。限度ってモノを知らないのか」
「まあ俺は慧月先生、美人だから許すけどな」
通常は私語厳禁の自習部屋だが、他に人がいなかったため、昨年度の数学を担当していた慧月先生について話していた。
そんなたわいもないイベントをこなしていると、
突然、空いた扉から自習部屋に入って来た二人組の女性を見て驚いた。
2人とも1昨年と去年、同じクラスの女子で、片方は男子からも人気で人当たりのいい明るい性格の鳥海 静音だった。
静音が来たことにも驚きだったのだが、俺が驚いた原因となったのは、もう片方の女子だった。
もう片方の女子は、神奈月 澪といって、俺が高校に入ってからずっと恋をしている子だった。
やはりこれは主人公としての俺に課せられたイベントなのだろうか。
さすがにいきなり来られても心の準備が…。
「おー、和樹と進じゃーん。
久しぶりだねー」
相変わらず名前に似合わずテンションの高い静音は、右手をこちらに振ってきた。
「おー、久しぶりだね。澪ちゃんと静音。
お前らも課題処理か?」
「そうなの。澪って真面目に見えて意外に課題終わってなかったらしくてさー。
昨日、いきなり電話かかってきて手伝ってーって」
「もうシズ!それ言わないでよ」
「あー、ごめんごめん」
恥ずかしそうに頬を赤く染める澪に見惚れながらぼーっとしてしまった。
「進くん、どうしたの?ぼーっとして」
俺がボーッとしてたのが気になったのか、静音の後ろに隠れていた澪が、トコトコとこちらに近づいてきて、俺の顔に手を伸ばして手を振った。
「あ、ああ。なんでもないよ」
「うわ…。天然って恐ろし」
静音からそんな声が聞こえてきたが、どうやら澪には聞こえていないようだ。
静音も和樹も俺が、澪のことを好きだということを知っているが、当の本人は全く気付いておらず、澪の言動に静音はよく頭を抱えている。
そんなことを思い起こしてる間に、俺たちが座る向かいの席に澪達は腰を下ろした。
「なー和樹、ここを教えてくれないか?」
「あー、悪い。俺そこわからないんだ。
前にこれ、静音に聞こうとしたんだけど静音もわからないとか言ってたはずだけど」
「ああ、そこね。私もわからないわ。
でも確か、澪がわかるって言ったよー」
学校で前はまた今度、わかるから教えてやると言ってたはずの和樹が、なぜかわからないと言い出し、成績がそこそこ良い静音すらもわからないと言い出した。
こいつら………神なのか?
「え、私!?
いやわかるけど進くん、私なんかでいいの?」
何この子…天使だ…。
自分のことを馬鹿だなと思いつつ、上手いこと誘導してくれた和樹たちに心から感謝した。
「悪いけど、お願いできるかな?」
「うん、いいよ。えーっとねーここか。
それならここに書いてある数字をここに入れてー……こうやるのが微分だよ」
澪は上手いこと、俺のノートの空欄を使って逆さに字を書いていき、すごく分かりやすく説明をしてくれた。
字も綺麗で、もはや言うことなしというやつだ。
いつの間にここは天国と化したのだろう。
とは言っても、主人公が辿るのは地獄を突き進んでくパターンか、ハーレム天国を突き進んでいくパターンが恒例なのだが。
ハーレムでなくとも、これは確実に天国である。
こうして天国みたいな時間はあっという間に終わり、気づけば窓から暖かな夕日が差し込んでいた。
「そろそろ、私たちは帰るね」
「おー、それなら俺たちも帰るか」
「そ、そうだな」
静音が立ち上がり、荷物をまとめ始めたのを見て和樹が俺に一緒に帰ろうと提案してきた。
課題も終わりかけで、あとは1人でもできそうだったので、和樹の提案に乗ることにした。
澪と静音とは高校から出会ったこともあり、家が市立図書館から考えて真逆なため、すぐ別れてしまったが、家までは和樹と帰ることになった。
「それじゃあな、和樹」
「ああ。今日はよかったな!」
「うっせー」
俺を煽る和樹を笑いながら返答した後、俺は家に入った。
「ただいまー」
「おかー」
いつも通りの姉の声と、カレーのいい香りがしてきた。
「そっか、今日は金曜日か」
リビングに足を向けた俺は独り言を言いながらドアノブをひねった。
金曜日は毎週、妹と母親が祖母の家に出かける日になっている。
そのため夕飯を作るのは姉であり、金曜日だけは毎週、二人きりで過ごすことになる。
話すのは世間話や学校のことについてだが、この時間も結構好きなのだ。
そしてしばらくして気づけば時計の針は、12を指しており、俺は寝るための支度を済ませてベットに入り、疲れのせいで無駄に深い眠りについてしまった。