一話 セットアップ
2021年4月1日。
春休みの復習テスト対策で朝から、勉強机と向かい合って教科書と睨み合っていた。
「あーーもう!」
なぜ日本人に生まれながら、俺たちは英語を勉強しなければならないのか?
そんなの全人類が簡単に意思疎通で話すために決まっているではないか。
そんなことを思いながらも、じゃあ他の国が日本語統一にしてくれよと心の中で英語ができない言い訳を好き放題に吐き捨てる。
「進、うるさいわよ〜」
下から聞こえてきた母親の声で少し落ち着き、心の中で謝罪する。
「はぁ〜、もう勉強も飽きたな。
少し気分転換にでもいくか」
ケータイを手に取り、メッセンジャーアプリを開き、よく遊ぶ時島 和樹という名前が書かれた場所をタップしてトークルームに入る。
(テスト勉強に身が入らないから遊ばないか?)
(それわかるわ〜。
でも悪いな、今日は家族で出かける用事があるんだよ、だから付き合えね)
俺がメッセージを送るとすぐに既読がつき、一瞬にして返信が返ってくる。
見事なまでにつまらない返答に重いため息をつき、椅子から立ち上がりベットに身を投げる。
「あーくっそ。
暇ではないけど暇だ」
意味のわからない独り言を吐き捨てながら、枕に顔を埋め脱力すると、もうベットからでれなくなってしまった。
「あー進兄が死んでる。
お姉ちゃん、進兄が死んでるよ」
今年で、小学3年生になった妹が俺の部屋のドアを物凄いスピードで叩き開け、姉を大声で呼んだ。
「はいはい」
姉の適当な返事が隣から聞こえて来る。
そんな雑な対応に妹は怒り出し、今度は姉の部屋に突撃していった。
全く、ドアくらい閉めてほしいものだ。
こうしてテスト勉強は一切として進まず、結局7日の始業式を迎えることとなった。