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第2話「これまでの異世界」

 僕たちは、あのまま森の中にとどまるのは危険と判断し、人間が拠点にしている場所に来ていた。

 拠点は魔獣に襲われるのを防ぐためか、高い壁に守られている。高さはパッと見ても三十メートルは越えてそうだ。

 ひとまず僕は、森で助けてもらった少女に導かれ、テントの中にお邪魔させてもらうことになった。

 少女は僕にこの辺に座ってとジェスチャーし、それに従い指を指した辺りに座る。

「それじゃあまずは自己紹介からだね。私は未来。あなたは?」

「僕は翼。よろしく…」

「翼だね。こちらこそよろしく!」

 未来は笑顔で挨拶をしてきた。

 僕は小さい頃から人との付き合いを極力避けていた。

 今まで入学した時期に話しかけられたことはあるが、僕がそっけない態度をとり続けた結果、近づいてくる人がいなくなった。

「まずはこの世界について話すね。この世界が私たちが元いた世界とは違うって言うのはさっき話したよね。」

「うん。そういえばさっきも思ったけど、私『たち』ってことは未来もこの世界の住人じゃないの?」

「私だけじゃなくて、ここにいる人は私の知る限りじゃ全員こことは違う世界の住人だよ。まあ他の拠点の人たちはわからないけど。」

「ここにいる人たち全員!?」

 私『たち』と言った時点で異世界転移したのが自分だけじゃないのは察していたが、まさかここにいる人全員がそうだと言うのは驚いた。

「もしかして僕らの世界で行方不明者が出てる理由って…」

「この世界に転移しているのが原因だよ。最初は驚いたけど、行方不明になってた私の友達がこの世界にいたから間違いないと思う。」

 未来の言い方だと、この世界に来るまで友達が異世界にいたということを知らなかったのだろう。

 つまり、この世界から元いた世界に帰るどころか干渉することさえ出来ないだろう出来ないのだろう。それが出来ていれば行方不明などと騒がれはしない。

「そういえばこの世界に来てなにかわかったことってないの?例えば、異世界転移の原因とか。」

「それに関しては調査してるけど、未だに判明されてないの。みんな気づいたらこの世界にいたってことだから共通点がわからないの。翼はこっちに来たときになにか気づいたことはない?」

 とは言われても僕はその時コンビニから帰ろうとしていただけだ。そんな状況で気づいたことなんてない。

 未来が僕の表情を見て察したのか、少し気落ちした声で、

「やっぱり翼もわからないか…まあ調べていけばいつかわかるかもしれないし。諦めるのは早いよね!」

 未来は不安を振り払うように自分に言い聞かせ、袋から折り畳まれた紙を床に広げる。それは地図だった。

「次は拠点について説明するね。拠点はナチャーロ、シックザール、エスポワール、エードラム、アヴニールの五つがあるの。ちなみにここはナチャーロね。」

 僕がコクリと頷き、未来は話を続ける。

「拠点は主に休憩や魔獣と戦うための準備をするための場所ね。あと各拠点に一人ずつ代表者がいるんだけど、その代表者が年に一回、アヴニールで報告会を行うの。近辺で変わったことやこの世界についてわかったことはないかって。」

 なるほど、そうやって情報を共有して元の世界に戻る方法を考えてるわけか。

「それでその報告会で少しでも有益な情報は得られたの?」

 未来は首を小さく横に振る。

 僕が両親から聞いた話では、初めて行方不明者が出たのは十三年前だ。

 まともに暮らせるように出来ることから始めたらわからないのも無理はない。

 まあその事は今後僕も調べるとして、まずはこの世界のことを知らないと。

 僕は説明を続けてほしいとお願いすると、未来はコクリと頷き、説明に移る。

「次は魔獣について説明するね。魔獣は障気っていう黒い霧がヘクセストーンを媒体にして構成されてる生物だよ。」

「ヘクセストーンってさっき魔獣を倒したときに出てきた石のこと?」

「そうだよ。ヘクセストーンは生命力を魔力に変える石のことで、これがあればさっき私がやったように魔法が使えるようになるの。」

 魔法と聞いて少し興奮してきた。

 魔法なんてゲームや漫画の世界だけだと思っていたのに、この石を使えばそれを使えるというのだ。興奮しない訳がない。

「ただここに彫られてる古代語を読まないと、どんな魔法を使えるかわからないの。だからそれを読める人に読んでもらわないとその魔法を使うことを禁止されてるの。」

 つまり、どんな魔法かわからないと自分や味方を巻き込んだり、魔法が不発に終わったりして無駄に生命力を減らす危険があるから魔法を使ったら駄目ということだろう。

「そういえばさっき障気って言ってたけど、それがどんなものかはわかるの?」

「ううん。出所も原因も不明なの。これも私がこっちに来る前から調べてるみたいなんだけど…」

「そっか…」

 しばらく沈黙が続いたが、ミクが手をパンっと叩き沈黙を破る。

「ひとまずこれでこの世界の説明は終わりだね。なにかわからなかったことはない?」

 僕はコクリと頷き、それを見た未来が立ち上がる。

「それじゃあ翼を代表者に紹介するからついてきて。」

 僕は立ち上がり、テントから出ていくミクを追う。

 

 

 

 僕は未来に連れられ、この拠点の代表者の元へ来ていた。

「なるほど、翼と言うのか。俺は翔だ。よろしく頼む。」

 そう言うと、銀色の鎧と兜を身に纏ったガッチリした体格のおじさんが砕けた雰囲気で自己紹介してきた。

「えっと…こちらこそよろしく、翔さん…」

「ははは!固いよ翼。俺たちはもう仲間なんだから無礼講でいこう!」

 仲間。

 それは今まで自分にとって縁のないことだった。

 正直異世界で暮らすからといって、誰かと仲良くする気はない。

 さすがに魔獣と戦うときは誰かと一緒に行くつもりだが、必要最低限の会話で済ませたい。

 そういう考えが顔に出てたか、翔さんが僕に何かを話し出す。

「君がどう思おうと、おれはお前を仲間だと思ってる。なんてったってこれから生死をかけた戦いを一緒にやっていくんだからな。」

 そう言うと、翔さんは未来の方に視線を向ける。

「それじゃあ未来。俺は忙しいからしばらく翼の面倒を頼むぞ。」

 そう言い、翔さんはこの場を立ち去った。

 …………

「それじゃあ最後に魔獣と戦うための装備を整えようか。」

 未来は僕の手を掴み、走り出す。

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