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第14話「和真と真人」

「翼、お前には遊撃隊に加わってもらう」

 翌日、翔さんのテントにやって来た僕は、彼の説明を受けていた。

「遊撃隊ですか…」

「そうだ。春樹と和真、そして真人の三人とともに戦ってほしい」

「あの、春樹は知ってるんですけど、和真と真人ってどんな人なんですか?」

「二人はこの拠点内でも指折りの実力者なんだが仲が悪くてな。その二人を、春樹とお前の二人でサポートしてほしい」

 つまり、二人をお守りしろということか。

「わかりました。出来る限りやってみます」

「ああ、期待してるぞ」

 話が終わり、僕はテントから出ていく。

 それにしても、和真と真人、仲が悪いってどんな感じなんだろう?




「ようし!それじゃあ次はそのヘクセストーンを取ってくれ!」

「おい!次の見張り早くしろ!もう交代の時間だぞ!」

 話に聞く魔獣との戦闘が近づいてきているからか、拠点の空気が殺伐としている。

 僕は今、拠点の入り口で見張りをしている。

 障気に関しての知識が他の人よりある僕の方が、異変に気づきやすいだろうという理由からだ。

 だが一人でいつまでも見張りをしているわけではなく、ちゃんと他の人と交代で行っている。

 僕が外を見張っていると、春樹が背後から声をかけてくる。

「よう、外の様子はどうなってる?」

「今のところは異常はないよ。そっちも、準備は順調なの?」

「ああ、これなら魔獣が来る前になんとか間に合いそうだ」

 その言葉はフラグになりかねないから、そういう発言はやめてほしい。

「それにしても、こんなに殺伐とした空気になるなんてね。みんなそれだけ気合入れてるんだね」

「当たり前だろ。相手はそんじょそこらの魔獣とは比べものにならない強さだからな。お前も油断してると一撃だぞ」

 春樹の真面目な顔を見て、今の言葉は本気で言っていることがわかった。

「大丈夫だよ。死ぬことの意味は、ちゃんと理解してる。だから、簡単にやられてやるつもりなんてない」

「そうか。それならいいが…」

「ほら、春樹も早く準備に戻ったら?やること、まだあるでしょ?」

「そうだな。それじゃあ行ってくる」

 春樹は自分の持ち場へと戻っていくと、以前未来と行った、霧の深い場所を見る。

 あそこにいた、鬼型の魔獣。

 おそらく、あれよりも協力な魔獣と戦うのだろう。

 それでも僕は、仲間を守ると誓った。

 だから、絶対に負けられない。

 もう二度と、あの時の悲劇は繰り返させない…!

 

 

 

 数日後に戦闘準備は完了し、後は他の拠点から援軍を待つだけとなった。

 その間に、僕は同じ隊の人間を知るために、春樹に頼んで和真と真人のもとに案内してもらっている。

「ほら、ここが二人の住み処だ」

 春樹が指差した方を見ると、そこにはわらで作られたじゅうたんの上に寝転がる男二人の姿があった。

 一人は白髪をした目付きの悪く、もう一人は黒髪でどこかつまらなさそうな顔をしていた。

「あれが、和真と真人って人?」

「ああ、二人はなんだが仲が悪いんだ。どうやらこっちに来る前にも一緒にいたらしいんだけど…」

 てことは、二人は以前は友達だったのかな?

 まあその辺りのことは、本人達に聞けばわかるかな。

 僕は二人に歩み寄り、声をかける。

「あの、ちょっといいかな?二人は和真と真人でいいよね?」

「ああ?それはそうだが、誰だお前?」

 そう言ったのは、白髪の方だった。

「僕は今度の討伐で遊撃隊になった翼だよ。一応同じメンバーだから会っておこうと思って」

「ああ、最近こっちにやって来たくせに前線に置いてくれって頼んだあの身のほど知らずか…言っとくが、俺はてめえみたいな足手まといを仲間だとは認めてねえぞ」

 白髪は僕を睨みながらそう言った。

「おい和真。そんな言い方はないだろ」

 なるほど。白髪が和真、黒髪が真人なのか。

「うるせえてめえは黙ってろ」

「なんだと?」

 二人は立ち上がり、睨み合う。

「大体、てめえが使えねえからこっちにお守りの役目が回ってきたんじゃねえのかよ?」

「へえ。お前はいつも自分のことを棚にあげるよな。自分が一番弱いくせに」

「上等だかかってこいやこらぁ!」

 二人は互いの胸ぐらを掴み、殴り合いを始めようとする。

「おい二人とも!やめ…」

 春樹が言葉を言い終わる前に、僕は剣を抜いて、二人の首の間に差し込む。

 すると二人は動きを止め、こちらを見る。

「これ以上前に動けば、首を落とす…」

 僕の言葉に、二人は冷や汗をかきながら距離をとり、それを確認した僕は剣を納める。

「お前、本当に最近来たのか?殺気が半端なかったぞ…」

「この世界に来たのは最近だけど、別世界なら他に行ったことがあるんだよ」

「何を言ってるのかわからないけど…戦力としては使えるってことなんだね」

 今の真人の言葉に、春樹が答える。

「そうだ。こいつの戦闘力を確認したが、経験も知識も兼ね備えた即戦力だ。もしかしたら、お前らより強いかもしれないぞ?」

「そいつは聞き捨てならねえな…」

 和真は近くに置いてあった二本の木刀を持って僕に歩み寄る。

「春樹がそこまで言わせたお前の実力、見せてもらおうか」

 和真は僕に木刀を手渡す。

 そして僕から距離をとり、立ち止まると木刀を構える。

「さあ、かかってきな!」

「いや、僕やるとは一言も…」

「悪いが付き合ってやってくれ。こいつ、自分より強いやつとは戦わないと気がすまないやつなんだよ」

 真人が呆れ気味にそう言った。

 僕はため息をつくと、木刀を構える。

「仕方ないな…じゃあ、いくよ!」

 僕は和真に駆け寄り、木刀を振るう。

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