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プロローグ「鮮血の記憶」
僕の目の前には、童顔でウェーブのかかった金髪のショートヘアーで、上半身が鮮血で染められた少女セレネが倒れていた。
「ツバサ。あなたはあなたの道を進んで。自分の決めた…道…を…」
野球で使うドームくらい広大な花畑の中心にそびえ立つ城の大広場で、血まみれになって倒れた状態で、僕にそう言い残して絶命した。
情けなかった。
助けると誓ったのにも関わらず、大切な女の子一人助けられない自分の無力さが。
僕はセレネの鮮血で染められた手に触れる。
「冷たい…」
涙が止まらなかった。
その冷たさが、セレネが死んだことを実感させたから。
「泣かないって決めたのに…」
泣かないようにすればするほど目に涙が溢れてくる。
気付けば僕は、大きな声で泣き叫んでいた。
──こんなに大切な人を失うのが辛いなら…もう…
その瞬間、僕の周りを白い光が覆った。