冒険者ギルドにて
魔人が北の森にいることが可能性として高くなったことが判明したとき、ウォルターはとりあえずエリースに予算を教えて魔人に対抗するための魔道具を3人分ほど用意できる準備をしておいて欲しいと言った。
魔道具は魔石を粉にしたもので陣を書いたり、魔石そのものを動力として陣を動かしたり、特定の効果を持たせたりなどをすることができたので、それを調達しておいて欲しいと伝えたのだ。
そして魔人を探すための道具だがあまり高い額は出せなかったので混乱や毒などを防ぐ類のものは軍の支給品で補うことにして、対象とした魔力を持つ生き物がどんな魔法を使えるのかを判別してくれる魔道具と、魔力をサーチするコンパスを購入しておいた。
これが無ければすべてに対して万全の備えをしなければならずそれは払わなくてすむなら払いたくない額であった。
魔道具屋ですることを終えたら次に冒険者ギルドに向かうことにした。
魔人がいるとみて間違いない森である。早急に危険指定してもらいそして自分たち以外の人間を極力入れない状況にしておきたかったのだ。
魔力の検査の結果などを記した内容もついでにギルドにもってって欲しいとエリースに頼まれた。
本当のところは黙っておきたかったのだが熊などではないのだ。
黙っておいたほうがのちのちめんどくさくなるのは火を見るより明らかであったので報告することにしたのだ。
冒険者ギルドは特に国などはかかわっていない。ただの相互扶助組織だといっても過言ではない。
C以上の人間で無いと町を越えた活動などしないからであり、AはほとんどいないのでCとBランクしか冒険というほど冒険をしないからであり、またCの活動のほとんどは各地にある冒険者ギルドのマスターからの信任状があればそれだけで不都合が無くて、Bの貴族の指名依頼はゆうなればギルドがこの人は大丈夫だと信認した人間を貴族が勝手に依頼するだけだったので国規模でかかわる必要性が無かったからであった。
なので冒険者ギルドといえば聞こえはいいが、その建物は町の集会所みたいなものであったし中にたむろっていた人たちはただの町の人たちおっさんやおばちゃんだらけであった。
とはいってもここは要塞都市であったので柄は少し悪い人間は少なく、ガタイのいい人間は多かった。
「やあ、ライラちゃん、昨日ぶりだね!今日は何しに来たんだい?」
近づいてきた男は口調や顔は友好的を装ってはいたが、あまりいい感情をこちらに抱いてなく、むしろ今日の目的を探ろうとして話しかけてきたみたいだった。
そんなことはわからないのだろうかライラはうれしそうに男に対して話しかけていった。
「今日はウォルターさんの付き添いです。なんでもここにこなければならない用事があるそうで。」
男はライラの言葉でウルターに目を向けて、そして顔を青ざめた。
貴族の連れてきた女にちょっかいをかけたのである。無事に済むとは思えなかったのだろう。
しかしウォルターはこういってカウンターのほうに向かっていった
「昨日はうちのライラが迷惑をかけたな。だが急いでるんだ、もういっていいかな?」
男はかくかくと首を振ってライラとウルターを見送った。
きっと昨日ここで面倒なことをしでかしたんだろうなあっと目にはっきりと浮かんだ情景を振り払いながらウォルターは歩いていった。
現在進行形でライラによって心労がつのっていたウォルターは男に同情したので特に何もとがめるつもりは無かったのである。
そしてカウンターでギルドのマスターと別室で話をしたい旨を伝えて受付嬢に別室に案内された。
ギルドの別室はこれまた庶民的だったが気にしないでおいた。Bランクの指名依頼は向こうに招かれて契約するからこちらを訪れる機会などほとんど無いのだ。
5分ほど待って扉を丁寧にあけてこちらに来た中年男性はたったまま何用でここにきたのかを訪ねてきた。
ウォルターはどうせ直ぐに終るから特に何も促さずに言った。
「北の森に魔人がいるかもしれない、こちらにいるライラが禁術で逃げて情報を伝えてきてくれた。禁術はエリースでも内容がわからないらしいが、多分移動系らしいそうだ。そしてエリースからの術式解析の依頼とその内容だ。受け取れ。」
ギルドマスターは魔人と聞いて顔をしかめたがすぐに隠し、そしてエリースでもわからない術式があるのかと疑問を隠せない表情はかくせないまま、ウォルターから物を受け取りこういった。
「情報提供ありがとうございます。魔人がいる森にはDランクの冒険者がたくさん行ってます。多分死傷者が出る前に封鎖することができるでしょう。でもエリースさんにわからない術式となると我々でも判らないと思います。」
ウォルターはそれもそうだろうなと思った。伊達にこの都市1番ではないのだ、あの老婆は。そしてウォルターは当初の目的を告げた。
「それで、北の森にはわたしと付き添いのもの以外は基本的にたちいれさせないでもらいたい。こちらで解決する手はずだ。」
ギルドマスターは首をかしげながらそれを了承した。勝手に問題を解決してくれる分には特に困らないからである。