魔道具屋にて2
次の日ウォルターは日が出るのとともに目覚め、日課の訓練や最近サボり気味だった午前の講義を受けていた。
今日の講義は特別でサボるわけにもいかずソフィア教というとある女神をまつっている宗教があるのだがその宗教の偉い人が来て講義をしていたのだった。
ここの宗教はソフィア神が大陸にすべての種族のためにさまざまな恵みを与えてくださっととか言うことを主張する宗教で、1神教なのだがドワーフやエルフなども同じ神を信仰していた。
ドワーフはともかく長命で割りと昔のことについて今でも知っているエルフまでも信仰してるとなると、昔ソフィアと名乗る誰かが、この大陸で何かをした可能性は高いと思われた。
が、ウォルターはあんまり興味がなかったので聞き流して、講義が終るとともにさっさと食堂に行って、その後宿屋に向かった。
宿には黒髪の女性が食事場で暇そうに座っていた。約束を守ってくれたようであった。
ウォルターは一刻でも時間が惜しかったので説明しながら、目的地に向かう旨を伝え、黒髪の女性はそれを了解した。
「それであなたの記憶喪失の直接の原因を判別するために、少し付き合って欲しいのです。」
ウォルターは昨日のことを説明しながらあの魔道具屋に向かっていったのであった。
黒髪の女性は自らをライラと名乗ってこう答えた。
「はい、そういうことなら構いません、ただ条件があります。私も森に連れてって欲しいのです。」
ウォルターはうんざりした。このライラという女性は全く話を聞いてるのか聞いてないのか。
「だから、森は危ないのでただの女性は連れて行くことはできないのですって!せめて冒険者それもDは超えてもらわないと!」
冒険者のDとはEというとりあえず町の中でなかで活動を行うようなランクではなく町のそとでも活動できるようなランクのことを言った。余談だがCランクになるとギルドの指定の危険区域にいけるようになり、Bランクは貴族などの指定依頼が受けれるようになる。別にそれ以下でも指定依頼自体はできるし受けられる。ただ貴族レベルのものを受けれるという指標でしかない。最後のAランクは多大な功績を挙げたものがなる。ドラゴンや魔人といった部類だ。
正直なところ魔人が出るかもしれない、異常事態が発生している森だ。DというかB位欲しいのだがまあ断るための方便だった。
すると聞き捨てならない台詞が聞こえてきた。
「大丈夫です!昨日冒険者ギルドに行って、Dランクにしてもらいました!」
しばらく思考が停止してしまったが。無事再起動することができた。
「そんなわけないだろう、だってEをすっ飛ばすことなんて貴族が絡んでもない限り...」
そこまでいってウォルターは確か町に入るとき無理やり通すために家のものに頼んでいろいろ便宜を図らせていたことを思い出した。
しかもその後大切で重要な(魔人とかと関係あるから)人だから家にきたら便宜を図るようにも言っておいた。
もしもギルドからウォルターの名前を告げる黒髪の女性がギルドにランクを登録したいといったら別にDランクくらい分けないと思われた。
だって、記憶がない人がこんなアグレッシブに動くとか思いもしなかったのだ。しょうがないと思った。
しかも魔力は上級もあるからきっと役に立つとかも言ってきた。使えなければ役には立たないだろと思った。
そしてどうにかして諦めさせようとしていい考えが出ないか思案していだが、先に目的地に着いた。
「まあそれは、おいおい話すとしてとりあえず目的地だ、ここでいろいろと話を聞いてから一緒についていくかは判断してみてくれ。」
魔人の恐ろしさを一般的に知らないからライラはついてくるといって聞かないと思われた。
ウォルターはそーっと扉を開けて店にはいってみるとエリースはいなかった。
あたりを見渡しながらウォルターは店の奥のほうに声をかけた。
「すいません、ウォルターです。昨日言った女性を連れてきました。エリースさんはいらっしゃりませんか?」
するとまたしても声が聞こえてきて、その方向をよく見てみるとカウンターに老婆がいた。
「おや、きたようだね、いやすまないね」そうしてカウンターのしたからとある魔法陣をだしてきてこう続けた。
「これを準備していたのさ、これで1週間以内ならある程度の魔術を判別することができるのさ」
ライラは店の物色をやめて、カウンターのほうに向かって魔法陣を覗き込むようにみながら老婆に尋ねた。
「へえ、これで私がなぜ記憶を失ったのか判るんですか?すごいですね」
老婆は自分の作品をほめられてうれしいのか饒舌になりながらライラに話しかけている。
「そうだよ、ささ、ここに手を置いてごらん、なんだったらそこの男に頼らずとも記憶を取り戻せるかもしれないよ!」
ウォルターはムカッとした。どうせ魔道具の代金は自分が払うことになるのだ。どちらにしてもライラはウォルターに頼るという運命から逃れられないのだ。
そうしていたら驚くことになった。老婆が見かけによらない大声を上げたからだ。
「なんてこったい!これは魔人なんてもんのしわざじゃないね!これは禁術、記憶を代償に何かを引きおこしたんだ!」
老婆の発言を聞いてウォルターは前提が崩れて呆然としていた。そして何も思考が働かないのでこうたずねた。
「つまり、どういうことだ」
老婆は大声でこう答えた。
「つまりこの娘は禁術レベルの何かを使ってまで魔人を討伐する必要があるとここに伝えてきたんだよ!きっと移動魔法かそこらを使ってきたんだ!」
ウォルターはとりあえず魔人がいるのか?よくわからねえ、そう思った。とりあえず近くにいてもらわないと困る。他の国にいたら手が出せないからだ。
「禁術の内容は判らないのか?そこあいまいだと困るんだが?」
老婆はこう答えた。
「移動系なきがする。私も見たことないんだこんなの。だけど、移動前の座標と後の座標がほとんど同じだ、間に何かのプロセスがあったとしても森に魔人がいるのはもう間違えないと思うよ」
そして最後にこう付け加えた
「だけど魔人がいて場所が判明しただけだね。むしろ何の魔術を使うかはてがかりがなくなっちまったね。」
ウォルターは一歩進んだものの一歩後退したので気が暗くなった。
「とりあえず一緒に来てくれる人をさがさないとな...」
ウォルターの誰に対しても言ってない言葉を聞き逃さなかったライラが元気いっぱいに答えた。
「わたし、行きたいです!」
ウォルターはもうどうにでもなれと思ってそれを了承した。
今までは、ライラの証言はあまり信憑性がありませんでした。ですが禁術を使ってまで来た人間が狂言を吐く必要が限りなく低いと思われたので魔人はいるのではないかと判断しているのです。
記憶以外にも腕とかそういうのを代償にも行える禁術ですが、強く思ったことなどは覚えていられることは多いとされています。
移動とか凄く威力のでかい魔術とか、死者の蘇生とかそういうことがあたります。
ただこれらはきちんとした魔力があれば運用することができます。足りないからかってに持ってかれてるだけです。