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純白悪魔  作者: YUKI☆
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第一話 天使=公務員

 「ちゃんちゃん」

 「ちょっと待って。なんでそんなに他人事なんですか!?」

 

 めでたしめでたしー?と小首を傾げつつ、目の前の美形の顔を拝む。いやー、目の保養目の保養。

 

 辺り一面、真っ白な世界の所々になにやら四角い物体が浮かんでいる。そんな不思議な空間に私は気がついたら佇んでいた。

 

 あっれー?私、死んだんじゃなかったっけー?と頭を悩ませつつ歩いていると、後ろから誰かに首根っこを掴まれて元いた場所に強制送還されました。

 

 そして、今の状況に至る、と。

 

 どうやらここは、天国らしいです。

 はい、そこ!厨二病乙とか言わないの!言うのなら、ここは天国への入り口ですとかいった目の前の美形に言いたまえ。

 

 まぁ、状況整理。

 

 私は、先ほど、ショタっ子君を助けて死にました。

 私は、気が付いたら変な世界にいました。補足すると重力があるのかないのかよくわからない場所。

 私は、探検しようとしたら、背中に羽の生えた美形に捕獲されました。

 私は、その美形に状況説明をし終えました。

 

 うん。ばっちり。

 

 「いや、だから……」

 「いえいえ。人間、こんなもんですよ」

 「どんなもんですか。こちとら何億・何兆人の死者を見ているんですよ?貴女のように落ち着いて話せる人は前代未聞です」

 「うん。なんでも一番は良い事だ」

 「違うそうじゃない」

 

 あ~~、どーしてこう……あぁぁぁぁ!と頭を抱えている美形の天使。もとい、レイラさんを見る。

 

 生前、というかつい先程まではコミュニケーション能力にかなりの欠落っていうかもう面と向かって誰と話すのは不可能ですって感じだったのに、彼とは普通に話せます。

 多分、コミュ障とかじゃなくて単純に話す人が居なかった悲しい人なだけなんだろうな。私。

 

 「えっとですね。取り敢えず、先に謝ります。ごめんなさい」

 

 自分の順応性の高さに感心していたら突然謝罪されました。解せない。

 

 「貴女が死んだのは、完全にこちらの不手際です」

 「なんですと?」

 

 とっても言いにくそうに何やら話すレイラさんの話しを要約すると、どうやら、私は彼の不手際で死ぬべきではない時に死んでしまったらしい。

 本来なら、私はここでは死なずに病院で意識を取り戻すはずだったらしい。それが、何やら天国への波長がとても合う魂があったから死に際の人間の物かと勘違いして連れてきてしまったと。

 

 ……天使も大変みたいですね。

 

 「はぁ。まぁ、どうでも良いんですけど。何、私地獄行きじゃないの?」

 「いえ、貴女の場合はもっと複雑……って、だからなんで先程からそんなにどうでも良さそうなですか」

 「どうでも良いからねぇ」

 「どうでも良いんですかっ!?」

 

 驚愕に目を見開くレイラさん。それでもイケメンとか何事だ。

 

 あぁ、話しを戻しましょう。正直、自分が死んだとか、もう少し長く生きられたとか、どうでも良い。心底どうでも良いのです。

 どうせ、生きててもひたすら自室に篭って資源の無駄遣いをする役立たずとして生きていくだけだし。むしろ、私が死んだほうが地球に優しいであろう。

 

 生前の世界に未練がないどころか、嫌な思い出しかない。人生なんてクソゲーすぎて吐き気しかしないのである。

 

 「で?複雑って?」

 「あぁ、えっとですね……」

 

 調子狂うなぁ、といった顔で立ち上がり、私に業務用の口調で説明を開始する。

 

 「本来なら死ぬはずではない魂がこちらに来てしまった場合、その誤差の年数分、願いを叶えるという事になっているのです。魂は、死に近づく。つまり、人生を達観するほど天国への波長が強くなっていくのです」

 「ほぉ。つまり、私は死に際の老婆と同じ程人生を達観していて、それで間違えたと苦情が言いたい訳ですな?」

 

 違います!と先程までの業務用の柔らかな微笑が掻き消えて、慌てた顔で弁解するレイラさん。そっちの方が自然で良いよ。

 

 「ゴホン!で、ですねぇ。貴女……歌那さんの場合、誤差がなんと八二年という事で、もうなんでも願いが叶います。あ、魂の消滅以外で」

 「チッ」

 「何故に舌打ち……」

 

 何でもって言ったじゃん。もう何でもじゃないじゃん。

 てか、八二年って、私の寿命九八歳?生き地獄じゃないですかむしろ感謝ですよ。

 

 「で、何で私は地獄じゃないんですか?」

 「特に悪い事はしてないので……。良いこともしてないですが」

 

 子供の時に死ぬと無条件で地獄じゃ……あぁ、それは親を悲しませたからか。そりゃ、私には当てはまらないですね。

 

 「何でも、ねぇ……。何でも良いや」

 「困りますよそれじゃぁ」

 

 そう言われても、と本気で困ってしまう。今まで何の夢も目標も持って生きてこなかった私にそんな願い事なんて言われても、出てきません。

 

 「そうですね……それでは、天使になりませんか?」

 「え、何、天使ってそんなに簡単になれるものなの?」

 

 天使舐めないで下さいよ!と一人憤慨するレイラさん。もう、面倒くさいからレイラでいいや。

 

 「先程言ったでしょう?何でも願いが叶うって。それに、正直、今働ける天使少ないんですよ」

 

 そんな夢も希望もへったくれもない事情を小さく囁かれてもドン引くだけですわ。天使は従業員不足なんですね。てか、天使って従業員なんですね。肉体労働なんですね。

 

 「大丈夫かねー。元引きこもりですよ?」

 「大丈夫ですよ。時代の流れで、最近はパソコンを使う仕事が多いんです。むしろ、貴女にはもってこいでしょう?」

 

 そう言われて、思わず考え込む。確かに、それはとても私向きだ。

 先程のレイラの話を考えると、要は、天使=公務員と考えてよろしいらしい。という事は、超安泰で楽しいお仕事なんじゃないだろうか。

 まぁ、生まれ変わりたくない私にとっては最善の道であろう。

 

 「うーん……。そうですね。それじゃ、よろしくさせて頂きますよ」

 

 そっと、ぎこちなく差し出された手を握ってにっこりしたら、レイラはこちらこそ、とそれはそれは嬉しそうに微笑んでくれた。

 

 どうやら、数十年ぶりの笑顔に違和感はなかったらしい。


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